【ラットのラト丸③】安楽死をした話
安楽死をしたラト丸
前回のお話はこちら
安楽死とは
回復の見込めない病気から解放されるため人為的に死をもたらす行為
アメリカなどでは日本とは異なり、まだ元気でもガンなどこれからしんどい思いをするであろう不治の病であれば安楽死を早めに実施したりもするそうです。
日本とは違い比較的早い段階で提示される選択肢に感じます。
また海外での獣医療費が高く、改善する病気でも安楽死を選択する人がいるようです。
日本の考え方
そもそも欧米や西欧ではキリスト教をはじめとした人が主軸の考え方の宗教観が多く、動物は人より下等なものとされている宗教が多いです。
それに比べて日本に根付いているのは神道であり、これは万物に神が宿るという考え方です。
この時点で欧米や西欧などとは大きく違ってきます。
動物にも感情があり、場合によっては対等、むしろ自然を神とする宗教観の日本には安楽死というものがそぐわないと思います。
それゆえ、自然に送ってあげたいと考える方は非常に多く、安楽死は最後の最後の選択肢としてしか上がってこないのが現状です。
私の考え方
私は飼い主としてまた獣医師としての観点から
治る見込みがない
食欲がない
苦痛が続いている
この辺りを1つの基準として考えています。
美味しく食事が出来るってすごく大事なことだと思っていて、それすらできないなら安楽死も選択肢に入ると思います。
ではどのくらい食欲がないかというのは動物によって変わってきます。
ラットやハムスターなどの齧歯類は常に食べてエネルギーを消費する動物なので丸一日食べないということは非常に重大でひとつのラインになると思います。
対して犬や猫など肉食動物は狩りができない間は絶食する生き物なのでかなり長く食べなくても生きられるのでタイミングは難しいです。
人の看護によって少しでも機嫌よく生きられる期間があるなら、私は飼い主さんに頑張って欲しいなと思います。
命の終わりが近い期間の介護や看護も飼育するという責任のひとつだと思うからです。
がんばっても、辛くて痛くてしんどくて苦しくて、そんな状態が見ていられないという時は獣医さんに相談するのもありだと思います。
今までずっと治療してきて、飼い主さんと相談して、もうそろそろ見送ろうかという話になることが大半です。
たまにですが、急に初診で来院され、治療もせず、もう見られないから安楽死して、などと簡単に依頼してくる人がいますが私はこれに関してはまずは説得したり、別の方法で何か力になれないかを相談します。
*もちろん飼い主さん依頼通りに実施される病院さんもありますがそれはその病院のスタイル、信念だと私は思います。
安楽死方法
ラットなどの小型動物に対する安楽死方法は複数あります。
化学的方法
麻酔薬の過剰投与による安楽死
バルビツール系麻酔薬と呼ばれる、人では睡眠薬につかわれる薬剤の投与をします。
静脈もしくは腹腔内に投与します。
現実的に手に入りやすいこの系統の試薬は最近生産終了し、使用が厳しいのでこれはナシ。
二酸化炭素による安楽死
二酸化炭素は実験施設にはあるんですがなかなか病院には置いてません。しかも経験上結構安楽じゃない気がして好きではありません。窒息死だし…
吸入麻酔による安楽死
なかなか死にません。かなり時間がかかります。
塩化カリウムによる安楽死
急激に高カリウム血症にさせると電位の関係で心筋が収縮しなくなります。この方法は苦痛を感じるため単独での使用は推奨されていません。
物理的安楽死
頚椎脱臼
首を骨折させます。熟練の技が必要になります。私は学生時代実施していたためできますが、やりたくないのでナシ。
またマウスに比べてラットは骨が硬くかなり力が要ります…。
断頭
見た目惨たらしいのでナシ…。
上記の方法から、動物病院で実施しやすい吸入麻酔後の塩化カリウム投与による安楽死を実施しました。
ラト丸の安楽死

麻酔で眠らせたあと、心臓に直接塩化カリウムを注射器で投与します。
初めての経験でしたがラト丸はすぐに麻酔で眠り、注射のあとは一瞬にして心臓が止まりました。
これぞ安楽死といった感じで本当に何のリアクションもなく、スッと逝ったことをよく覚えています。
悲しさとともにもう辛くないねとホッとした気持ちもありました。
一般の飼い主であればこのあと葬儀屋や役所などで火葬してもらうのが一般的ですが
私は獣医師です。
亡くなってすぐラト丸を解剖し私の診断、治療が合っていたのかの答え合わせにかかりました。
解剖しながら涙を流したのは後にも先にもこの子だけでした。
このあと、私は飼った動物が亡くなったら必ず解剖しています。
助けられた病気なのか、私の治療は合っていたのか、毎回毎回問い続けています。
解剖結果は次回!
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