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[コラム] (4)我が子との再会 【21番目の軌跡―ダウン症の男の子と家族のゆかいな日々―】

← (3)地獄の産後入院

産後入院から退院した私は、その足で旦那さんと一緒に息子が入院している病院へ向かった。

一刻も早く息子に会いたい私。

息子が入院している病院は歴史ある大学病院で、出産した病院とは雰囲気がまるで違っていた。

古くてボロい建物。忙しそうに行き来するお医者さんや看護師さん。たくさんの患者さんと面会の人々。

息子が入院しているフロアに行くと、彼は24時間看護師さんが対応している経過観察室みたいなところ(NICU(新生児集中治療室)よりゆるい感じの部屋)にいた。他に2人の赤ちゃんもいる。

循環器小児科という部署だ。

小さな息子は赤ちゃん用のベッドで、タオルに包まれて眠っていた。ミノムシみたいだ。
心電図とサーチレータに繋がるコードがついている。

鼻の管は取れていて、酸素も吸っていなかった。

私はそっと息子を持ち上げて胸に抱いた。

とっても軽かった。

ああ、やっとだっこできたよ。産んでから1週間もたってしまった。

部屋には心電図とサーチレータが発するピッピッピッピッというクリクック音が常に鳴り響いていた。
隣の赤ちゃんも付けてるので、リズムの異なるクリック音がまざりあっておかしな変拍子を奏でている。

トロレン…トロレン、トン、トン、トロレン…

とリズムが重なったりずれたり、妙な音楽に聞こえてくる。

さらに、サーチレータは、酸素濃度が下がるとクリック音の音程が微妙に下がるため、チューニングがズレた感じの演奏となる。

演奏ではないけどw

むむむむ!息子は24時間この音を浴びてるのか。
変なリズム感と音感がついたらやだな(^^;とか考えていた。

息子のいる部屋は、面会時間ならずっといてもよい部屋なので、私たちは眠る息子をただただ見つめ続けた。

※夜は看護師さんたちに子を託して帰らなければならない。

寝てるだけでも見飽きないのが赤ちゃんなのね。


しばらくしたら、息子が起きたらしく、急に顔が真っ赤になって、ぎゅっと閉じられた瞼の下で眼球が盛り上がった。

歯のない口が開き、声は出てないけど、舌がピロピロ震えている。

それはまるで親鳥が来て餌を欲しがる雛鳥か、はたまた遮光器土偶か…といった風貌だった。

も、もしかして、かなたん、泣いてるの?

息子は声を出さずに泣いているのだった。
声出していいんだよ。
私は息子に話しかけた。

出産した病院で何度か声を出して泣いてるのを見たので、声を出せるのは知っていた。

声の出し方、忘れちゃったのかな…。
それとも耳が聞こえないのかな…。

ダウン症の子には聴覚に問題があるケースも少なくないという情報をぼんやり思い出した。
耳は聞こえててほしいな…。それは音楽をやっている私たちが自然と望んでしまうことだった。

うーん。でも聞こえなくても絵は描けるしな。

この時に、私は「こうならいいな」と思わないように努めようと誓った。
どんなことも受け入れるのだ。それはこの子の素晴らしい個性なのだから。

そんなサイレント泣きを息子が始めると、看護師さんが様子を見に来て、そろそろお腹すいたかな〜?と言った。

おお!息子はお腹すいたアピールができるのかっ!
生物学上あたりまえのことだが、とても誇らしく思えた。

ミルクの前に沐浴をさせるとのことで、やり方を見せてもらう。

※飲んですぐお湯に入れると吐いたりするそうな。

沐浴は本当は産後入院で習うんだけど、母子別々入院になっていたので、私はまだやったことがなかった。

お湯に入ると、息子は「?」という顔をして泣き止んだ。
気持ちいのかな?

あ、泣いた。

お風呂で息子が声を出して泣いたのでちょっとほっとする。

沐浴が終わると、看護師さんがあたためたミルクを持って来てくれた。
ちょっと黄色ぽく見えるミルク。お母さんの母乳ですよ、と教えてくれた。
病院で私がせっせと絞って凍らせておいた母乳である。

乳はちょっと熱いくらいだった。

「熱くないか??」

と思わず声にだしたら、看護師さんが、息子ちゃん、熱い方が好きみたい。と教えてくれた。
冷めたら飲まないそうで。

産まれたばっかでそういうのあるのか! といちいち感動する。

哺乳瓶から飲ませるのは産んだ翌日にも少しやってたので、やり方はわかっていた。

口に哺乳瓶の乳首にゅうしゅをくっつけると、自動的に飲み始めるのだ。
不思議だな~。

起きてないと飲んでくれないのだけど。

30mlくらいの母乳を息子はゆっくりゆっくり飲んだ。
途中で寝てしまうので起こしながら。

心疾患の治療で利尿剤を飲んでいる息子には、1日に飲まなければならないミルク量のノルマがあった。

毎日そのギリギリ飲めるか飲めないかで、足りない分は鼻から挿入されているチューブで直接胃に入れるのだけど、ここのところちゃんと飲めるようになったから鼻チューブは取ったとのことだった。

ミルクを飲ませたら、今度はブリブリブリとウンチをした。
看護師さんが、お尻の拭き方や、オムツの換えかたを教えてくれた。

ここで、循環器小児科に入院している赤ちゃんたちは、毎回、おしっこやうんこの重さを計っているのだと教わる。

まず、新品のオムツの重さとおしりふき1枚分の重さを計っておいて、しっこやうんこが出たらオムツごと重さを計って、差分を出た分として表に記入する。

おしりふき何枚使ったかとかすぐ忘れるんだけどねww

ミルクを飲んだ分も全て記入し、入った分と出た分をきっちり水分表という紙に記録していく。

水分量の管理。これが循環器に問題がある赤ちゃんにとって、とても大切なことみたいだった。

水分表をつける事は、この日から私の習慣になり、息子が1歳になるまで続くこととなるのだ。

そうこうしているうちに、面会の終了時間が来てしまった。

こうして産後入院からの退院、そして念願の息子との再会…という盛りだくさんの1日を終え、私は久しぶりの我が家へと帰ったのだった。

(つづく)
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