[小説] ジェームス・モルガンのゲーム | 二、アルガン湖 (2/14)
「アルガン湖? 日帰りで? 危なくないの?」
「ただ見に行くだけだよ。今出たら夜までに行って帰って来れる。危ないことはしないよ」
うーん…と顎に人差し指をあてがいながら、ミアはしばらく考えていた。
そしてあっさりとこう言った。
「いいよ、行ってみよう」
「え? いいの?」
ジェームスはミアの返答が意外だったのでびっくりして言った。
「うん。あんまり行きたくはないけど、ジェームス・モルガンが行きたいなら私も行く」
「どうして? ムリしなくていいんだけど」
「何に対しても無関心なジェームス・モルガンがよりにもよってなんでアルガン湖なんかに興味を持ったのか、私も知りたいんだ」
別に何に対しても無関心なわけではないんだけどな…とジェームス・モルガンは思ったが言わないでおいた。
数刻後、ジェームスとミアの二人はオート二輪車にまたがってアルガン湖を目指していた。
アルガン湖に代表される旧時代のことについて、人々は関心を持つことを避ける傾向にあり、それはずっとそこにあるのに無視され続けてきた。
アルガン湖には幽霊が出るとの噂も時々聞くが、誰も確認しに行こうという者はいなかった。
だいたいそんな噂を誰が流しているのか出所もわからなかったし、誰も知ろうともしなかった。
子供たちは「あそこは何もないつまらない場所」というイメージを刷り込まれて大きくなる。
それが、反対にジェームスの興味を引く結果となったのだ。
誰も走っていない郊外の高速道路をひたすら真っすぐに進むと、いよいよアルガン湖が見えてきた。
写真では見たことがあったが、ジェームスもミアも現物を目の当たりにするのはもちろん初めてだった。
それは草原が続く平地の先に突如として現れ、そして、思った以上に巨大だった。
ジェームズは「アルガン湖」と書かれた出口から高速道路を降りると、湖への一本道をひた走った。
その道は普段誰も通らないだろうに、普通の道路と同じように綺麗に舗装されて痛んでもいなかった。
そもそも、なぜ「アルガン湖」への道が整備されているのかも不思議に思ったが、ジェームスはこの点については深く考えるのをやめた。
考えてもわらないことは考えない。
そういう切り替えが早いのもジェームスの特徴であった。
ミアに関して言えば、そもそもそんな疑問すら思いついていないほどだった。
遠目見えるアルガン湖はただの湖に見えた。
水面に光が反射してキラキラ光り、何なら美しいと言ってもよい風景だった。
だが、あの湖は上空から見るとおよそ自然が作り出したとは思えぬほどに完璧な円形をしているのだった。
草原の中の一本道をしばらく進み、ジェームスとミアはついにアルガン湖へと到着した。
道路はそこで終わっていた。
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