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短編小説『あんたが前世でやらかしたんで、私いま詰んでます』―不器用でまっすぐな“二人バディ”の、時空を超えた人生やり直しストーリー!

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第1章:ギャル、襲来。


「──アンタ、私の前世でしょ?」


その言葉は、俺の平凡すぎる朝を破壊した。

今日も変わらず昼前に起きて、コンビニで買った菓子パンを口に放り込みながら、スマホをいじっていた。
ニート、とまではいかなくても、定職も夢も目標もない二十一歳の俺──天野祐真(あまの・ゆうま)にとって、これは日常の光景だ。

なのに、玄関を開けたら、そこには突然、ギャルがいた。


茶髪のロングは毛先がふわっとカールしていて、化粧はしっかり濃いめ。
制服は着崩し気味、パーカーを羽織って、スカートは限界まで短い。
……だけどそのギャルは、俺をまっすぐ見て、言い放ったのだ。

「初めまして、あたし、成瀬アスカ。……占いで言われたんだ。あんたが私の“前世”だって」


俺は思わず、ドアを閉めた。

「──いや、怖ッ」


再び開けても、そこにはまだ彼女がいた。幻覚ではないらしい。


「ちょ、ちょっと!閉めないで!マジで意味あるから、あたし来たの!ちゃんと説明するから!ていうか聞いてよ!」

「帰ってください」

「お願いっ!ほんと、聞くだけでいいからっ!」


土下座でもする勢いで頭を下げるそのギャルは、よく見ると、意外と真剣で、どこか必死だった。


仕方なく彼女を部屋に通すと、アスカと名乗ったそのギャルは、緊張した面持ちで語り出した。


「……この前ね、駅前の路地裏にある『当たる』って有名な占い師のとこ行ったの。なんかずっと不幸が続いてて……人生、やばいって思って。で、相談したら……言われたの。“あなたは過去の因果に縛られてる。前世の業が、今のあなたを不幸にしてる”って」

「はぁ」

「で、“その前世が、この町のどこかに現れている。あなたが救えば、運命は変わる”って言われたの。で、写真見せられて──それが、あんた」


彼女が差し出したスマホには、数ヶ月前にバイト先のSNSに上げられた俺の後ろ姿の写真が写っていた。
たしかに、俺だ。


「……怖すぎるなその占い師。個人情報どっから」

「そっちじゃなくて、こっち信じて!お願い!」


彼女は両手を合わせて拝むようなポーズを取った。
見た目はどう見てもイケイケのギャルなのに、その姿勢はなんだか滑稽で、真面目で、正直ちょっと笑ってしまう。


「で……何?俺をどうにかしたいって?」

「うん。あんたの人生を立て直す。そしたら、私の運命も良くなるって、そういう段取り」

段取りって…
素っ頓狂な発想だけどここまで真剣に言われると、断りにくくなってくる。
俺は頭をかきながら、問い返した。


「……俺の人生が、そんな“直せる”ほど単純だったら苦労しないけどな」

「でも、やってみなきゃわかんないじゃん」

「それに、お前……他人のためにそこまで必死になって、得あるのか?」


その問いに、アスカは一瞬口ごもった。

けれど、すぐにこう言った。


「……前世とか、ほんとかわかんないよ。でもね、あたし、今までうまくいったことないの。努力しても空回りばっかで……自分がバカみたいに思えてさ。でも、この占いの話だけは……信じてみたかったの」


その目は、思っていたよりずっと真っ直ぐで、少し潤んでいた。

俺はなぜかその目から目を逸らせなくて──

気づけば、こう言っていた。


「……じゃあ、試しに、一週間だけな」

「マジ!? ほんと!? やば! 神! いや、仏! いや、前世!やったああああ!

部屋の中に、ギャルの甲高い声が響き渡った。
だが、彼女はまだ知らなかった。


──この奇妙な共同生活が、俺と彼女、そして未来の運命をも変えていくことを。


第2章:一方的な宿命(さだめ)


──人生を立て直す。

そう言い切ったギャルJK・成瀬アスカとの、不可解な共同生活が始まった。

「まずさ、アンタの生活、終わってんじゃん? 朝起きない、掃除しない、ご飯カップ麺、さすがあたしの前世って感じ」

「やめろ、心がえぐれる」


アスカは俺の部屋を見て、深く息をつきながら、おもむろにビニール手袋を装着した。

「祐真くん……いや、祐真“さん”?とにかく、まず部屋を浄化しないと。風水的にも、霊的にも、なんかヤバいって占い師さん言ってた!」

「マジでその占い師、何者だよ……」


そう文句を言いながらも、俺は久しぶりに部屋の窓を開け、掃除機のコンセントを差し込んだ。

──なぜか。

それは、アスカが本気で、俺のために動いていたからだ。


ギャルっぽい外見とは裏腹に、彼女は真面目だった。
掃除機をかけながら埃でくしゃみを連発し、雑巾で本棚を拭きながら「地味にキツい……」と呟くその姿は、妙に応援したくなるような、健気さがあった。


「掃除ってさ、何かを“始める”って感じあるよね」

「へえ、ギャルっぽくないこと言うんだな」

「うるさ。あたし、見た目だけで言われるの慣れてっから」


ピタリと動きが止まる。

少し間を置いて、彼女はふっと笑った。


「でも、あんたもだよね。何もしてないように見えて……本当は、どっかで何かを諦めてんじゃん」


図星だった。

俺は就職に失敗してから、やる気を失い、バイトも辞め、実家にも連絡せず、ただただ時間を潰していた。

「……なぁ、アスカ。ほんとにさ、俺の人生を変えたら、お前の運命も変わるって、信じてんの?」

「うん」

即答だった。


「……信じるしか、ないんだよ」


彼女の言葉は、虚勢じゃなかった。

まっすぐで、どこか不器用で、そして必死だった。



次の日から、アスカとの「再生プラン」が始まった。

午前9時起床、朝の散歩、コンビニ飯禁止、週3のアルバイト探し、資格の勉強。
──そして善行の記録。

「ゴミ拾いとか、お年寄りの手伝いとか、小さいことでいいんだって!」

「なんでそんなことまで……」

「占い師さんが、“前世の業は、今の行いで軽くなる”って」

「どこの陰陽師だよ……」


文句を言いながらも、やってみると、それはそれで面白かった。

バイトの面接では噛み倒して不採用だったが、履歴書を一緒に書いてくれたアスカは「こんなんで受かるかい!」と泣き笑いしていた。


「要領悪いの、自覚してんだ。あたし。だけどさ……不器用でも、一生懸命やれば、きっと伝わるって思いたいの」


俺はその言葉に返す言葉がなかった。

伝わることなんてあるのか、と思ってた。

けど──アスカは、もう伝えてた。

俺に。


それから数日後。コンビニ帰りの道すがら、アスカがポツリと呟いた。


「……ほんとはさ。なんで自分がこんなに生きづらいのか、ずっとわかんなかったんだよ」

「……」

「でも、あんたが前世だったら、なんか納得できるじゃん。前世でグダグダしてたから、今がうまくいかないんだ、って」

「……思い込みって、強ぇな」

「うん。でもね──」

彼女は振り返り、俺に笑いかけた。


「祐真くんと会って、ちょっと思った。あたし、自分のせいで生きづらいって、自分じゃ言えなかっただけなんだって」


それはきっと、俺も同じだった。

誰かのせいにしたかった。前世でも、世界でも、運でも。

でも。


「……そっから、始めればいいんじゃねーの?」


そう言った俺の言葉に、アスカは驚いたような顔をしてから、笑った。

心から、楽しそうに。


第3章:言葉にできない、想いの正体


──祐真とアスカの「共同リスタート計画」は、なんとか続いていた。

相変わらず不器用で空回り気味だけど、祐真は週3のカフェバイトに受かり、アスカは夜な夜な参考書を広げて真剣に勉強していた。
彼女いわく「ギャルだけど真面目は最強のギャップなの!」らしい。


だが──ある日、その小さな前進に、壁が立ちはだかる。


「なあアスカ。最近、なんか元気ない?」

「……え? そ、そんなことないけど?」


口元は笑っていたけれど、目が笑っていなかった。


その日から、彼女は少しずつ様子がおかしくなった。

勉強中、何度も手を止めては、スマホをぼんやり見つめる。
誰かとLINEしているようで、画面をチラ見しても名前は「ママ」。


──何かを隠している。

祐真の直感がそう告げていた。



数日後、答えはアスカの口からこぼれた。


「……ほんとは、引っ越す予定だったの。来月、親の転勤で。もう……前から決まってたの」

「……え?」

「でも、あたし、言えなかった。祐真くんに会ってから、なんか“変わりたい”って、初めて本気で思ったから」


祐真は黙っていた。

その静けさに、アスカは焦ったように続けた。


「でも!あたし、親に言ったの!“残りたい”って!」

「……え?」

「だって!こんな途中で終わらせたくないよ!人生、やっとスタート切れたのに!前世とかどうでもいいんだよ!今、ちゃんと自分で歩きたいの!」


彼女の目に涙が滲んでいた。悔しさ、寂しさ、そして確かな決意が混ざった涙。


──その想いが、祐真の心を揺さぶった。


「……バカだなお前。前世とか運命とか、信じて突っ走って……俺だったら怖くてできねえよ」

「うるさいな……バカはお互い様でしょ」

「でも……ありがとな」

「へ?」

「お前が来てくれて、ちょっとだけ俺も変わった気がすんだ」


アスカは驚いたように目を見開き、すぐに、照れ隠しのようにそっぽを向いた。

「……うん。あたしも、同じ」


その日の夜、ふたりは公園のベンチに並んで座り、カップのホットココアを手に、無言で空を見上げていた。


都会の星空はまばらだけど、それでも確かに、そこに在った。



──だが。

ふたりの会話の背後。

公園の街灯の下、静かにたたずむ“あの占い師”がいた。


白髪混じりのボサボサ髪、年季の入った占いカード、そして年齢不詳の微笑。


「……ようやく、ふたりとも“今”を生きることを選んだか」


静かに、満足げに呟いたその声は、かすかに風に消えていった。


そして──彼女の目は確かに、誰にも気づかれず涙を滲ませていた。

それは、過去も未来も越えてたどり着いた、ある“来世”の記憶だった。


第4章:踏み出す一歩は、いつも自分の中に


朝の光が差し込む部屋。

雑然としていたはずの室内は、今では本やノートが整然と並び、コーヒーの香りがかすかに漂っていた。


アスカはベランダに立ち、無造作に結んだ金髪のポニーテールを指で整える。

祐真はリビングの床に座り込み、履歴書を前に深呼吸していた。


「ねえ、なんでそんなに緊張してんの?」

「そりゃ、就活の面接なんて、人生で初めてだからな……」

「でも、もう“今の自分”なら、いけるって思ってるでしょ?」

「大丈夫だよ、あたしの前世なんだし」


祐真は答えなかった。ただ、少しだけ口元が緩んだ。


「なあ、アスカ」

「ん?」

「お前、自分が変わったって思う?」


アスカは少し考えてから、まっすぐ祐真を見て言った。


「思うよ。前より、ちょっとだけ“誰かのせい”にしなくなった気がする」


それは祐真も、同じだった。

前は、すべてを「運命」や「過去」のせいにしていた。
何もしないことが、責任逃れの言い訳になっていた。

でも、今。

自分の足で立ち、自分の意思で進もうとしている。


「──あたしさ、前に“人生うまくいかないのは前世のせい”って言ってたけど」

「うん、言ってたな。だいぶ強引に」

「……ほんとは、自分が努力してもうまくいかないのが、怖かっただけだった」


アスカは小さく笑った。

「誰かのせいにしてた方が、楽だったんだよね」


祐真は深く頷いた。

「でもさ。やっぱ、進むのって、自分なんだよな」


「うん。誰にも頼れない時、自分で“行け”って言えるかどうか、だよね」


しばらく、静けさが2人を包んだ。

春の光が窓越しに差し込み、時計の針が静かに進む。


「じゃ、そろそろ出るか」

「うん。がんばれ、祐真くん」

「おう。アスカも、今日学校だろ?」

「うん。テスト勉強、死ぬ気で頑張る……たぶん……きっと……」

「大丈夫、俺の来世なんだろ」

そう言って、ぎこちなく拳を合わせる。


──どちらも、不器用な人間だ。

でも、不器用だからこそ、立ち止まっても、また歩き出すことを知っている。


外に出ると、駅前の広場でいつもの“占い師”が、静かに佇んでいた。


アスカは少し迷って、歩み寄る。

「ねぇ、今日の運勢は?」

占い師は優しく微笑んだ。


「運勢はね、あなたの心が決めるのよ」


「……そっか。ありがと」

アスカはもう、それ以上何も聞かなかった。

彼女は自分の中に、「進め」と言える声を見つけていたから。


──風が吹いた。春の匂いが街に溶けていく。

アスカも、祐真も、それぞれの道へと歩き出す。


小さな変化が、やがて大きな未来へとつながっていくことを、ふたりはまだ知らない。

けれど、確かに今──自分自身の背中を、自分で押せるようになっていた。


第5章:君が「今」を生きるから、世界が少しだけ輝いて見えた


風のにおいが変わった。
春から夏へ──季節が、確かに移ろい始めている。


祐真は駅のホームに立っていた。
初めて受かった就職先のオリエンテーションが今日だった。


シャツの襟を直す手が、少し震えていた。

でもその手は、あの日みたいに諦めてはいなかった。
もう、逃げるための言い訳を探すのはやめた。


「……よし」

小さく息を吐いたその瞬間──背中に、ぴたりと何かが当たった。

「よしじゃねーよ、シャツしわくちゃじゃん」

振り向くと、そこにいたのはアスカだった。
制服のスカートは風に揺れ、ピンクベージュのリップが陽にきらめいていた。


「ど、どうしたアスカ!? 学校は?」

「遅刻の言い訳なら用意してある。てか今日はあんたの応援が優先だし」

「おま……バカかよ」

「うるさいな、バカって言う方がバカなんだし」

そう言いながらも、アスカはくすっと笑った。

その笑顔は、数ヶ月前のどこか虚勢を張っていたものじゃない。
不器用なまま、ちゃんと“強く”なった笑顔だった。


「祐真くんってさ、今の自分に、自信ある?」

「……ないな。まだ、まったく」

「でも、進むんでしょ?」

「おう。ビビってても、止まる理由にはなんねぇからな」


ふたりは並んで電車を待った。

誰かに「大丈夫」と言ってもらいたかった頃から、
いまは誰かに「信じてる」と伝えられるようになっていた。


電車が近づいてくる。

ドアが開き、祐真が乗り込もうとした、そのとき──

「ねぇ!」

アスカが呼び止める。


祐真が振り返ると、彼女は少し目を伏せながら、それでもしっかりと言った。


「もし前世が本当にあったとしてさ、
 その人が不器用に生きてきたことも、全部ムダじゃなかったんだって、
 あたしが証明するから──ちゃんと、見てて」


その言葉に、祐真の胸が熱くなった。

彼女の“思い込み”だったかもしれない前世。

けれどその思い込みは、たしかに彼女を動かし、そして──祐真を救ってくれた。


「……ああ。見てるよ、ちゃんと」


電車のドアが閉まる。
祐真の姿が、ゆっくりとホームから遠ざかっていく。

アスカはその背中を、静かに見送った。


──そのとき。

ホームの隅で、ひとりの占い師が風に揺れる帽子を押さえながら、そっと呟いた。


「ようやく……ふたりとも、自分の足で歩き出したわね」


彼女の目は、どこか遠い時代の記憶を映していた。
けれどそれは、語られることのない未来。
誰にも気づかれぬまま──風に溶けていった。



夕暮れ。

公園のベンチに座ったアスカは、スマホの画面を見つめていた。

そこには、祐真から届いたメッセージがあった。


「面接、なんとか乗り切った。たぶん、大丈夫。
 ありがとな。俺が前に進めたの、アスカのおかげだ」


彼女はそれを読みながら、空を見上げた。

淡いオレンジ色に染まる雲が、ゆっくりと流れていく。


「──ううん、違うよ。
 あたしが“前に進みたい”って言えたのも、祐真くんがいたからだよ」


言葉にはしなかったけれど、心の中で、確かにそう思っていた。


人生は、運命や過去じゃ決まらない。
今を生きる自分の、一歩一歩が描いていくものだから。


そして今、その一歩を踏み出せた自分を、
少しだけ、誇りに思えた。


エピローグ:君があの日、笑ってくれたから


季節は、もう初夏の匂いをまとっていた。

蝉が鳴くにはまだ早く、だけど湿った風がゆるやかに街をすべっていく。


アスカはいつもの制服姿で、放課後の帰り道を歩いていた。

手には参考書と、コンビニで買った紙パックのカフェラテ。

今日はなぜか、空がすごく高く見えた。


──未来って、思ってたより遠くないんだな。


それが、最近の実感だった。

うまくいかないことばかりだった。
誰かと比べて落ち込んで、何もかも嫌になった日もあった。

だけど、それでも。

「自分を信じたい」って、そう思ったあの日が、今の自分を作ってくれている。


ポケットの中のスマホが震える。

祐真からだった。

「初任給入った。飯、おごる」

そのたった一行が、なぜか胸にじんときた。


──前より、ちょっとだけ未来が楽しみになったのは、
  きっと、君が“自分を信じて進んでる”って知ってるからだ。


ベンチに座り、アスカはふと空を見上げる。

そして、小さくつぶやいた。


「……前世とか、来世とかさ。
 ほんとはどうでもいいのかもね」


大切なのは、「今の自分」をどう生きるか。
どう笑って、どう誰かと向き合うか。

それが未来になっていく。


そしてその先で、いつかまた──

自分の背中を、優しく押せる自分でいられたなら。

それだけで、十分なんだ。


風が吹いた。

制服の袖を揺らし、アスカの髪をそっと撫でていく。

その風はどこか、昔感じた誰かの温もりに似ていた。


けれど彼女は、もう振り返らない。

だって前を向けば、そこにはこれから出会う未来がある。


きっと祐真も、同じ空を見ている。

──それだけで、今日はもう十分だった。


そして、街の隅。

風にそっと揺れる、占い師の小さなテントがあった。

そこに、今日も誰かが訪れる。

「ねえ、来世って、あるんですか?」


その問いに、占い師は微笑む。


「さあね。でも──今を大事にできるなら、
 どんな未来だって、あなた次第で変えられるわよ」


その声は、まるで時間の向こうから、静かに届いたかのようだった。


──君が、あの日笑ってくれたから。
  私は今も、前に進もうと思える。

それは、ふたりだけが知っている奇跡。

そして、この世界のどこかでまだ続いている、小さな物語。


(了)


あとがき

──「ほんの小さなきっかけと気づきがあれば、だれでも自分の背中を自分で押すことが出来る。」

はじめまして、そして、最後まで読んでくださってありがとうございます。
この物語は、「もし、自分の来世が突然現れて、自分の人生の責任を問われたら?」という、ちょっと不思議な妄想から生まれました。

この物語は、
**「誰かに助けてもらわなくちゃ、人生は動かない」**と感じていたかつての自分自身に、
「そんなことはないんだよ」と伝えたくて書いた作品でもあります。


人生がうまくいかないとき。
失敗や不安ばかりで前を向けないとき。
人は、何か“特別な運命”や“見えない力”に理由を求めたくなります。

でも本当は、
ほんの小さな出来事──誰かの言葉だったり、ちょっとした思い込みだったり──が、自分を動かすエンジンになったりする。

それに気づけたとき、人は「自分の背中を、自分で押せる」ようになるんじゃないかと、私は信じています。


アスカと祐真、ふたりの主人公がまさにそうでした。

前世のせいにしていたことも、誰かの言葉を盲信していたことも、
やがて自分自身の「気づき」に変わっていきました。

そしてその“勘違い”の先に、
本当の意味で「今を生きる」ことの強さが芽生えていく。


占い師の正体については、あえて深く語らないままにしました。
なぜならこの物語にとって一番大事なのは、“未来の真相”ではなく、
**「いま、この瞬間にどう向き合えるか」**だからです。


この物語が、誰かにとっての“ちょっとした背中の支え”になれたなら、
それ以上の喜びはありません。

そして、もしあなたがこの物語を少しでも好きになってくれたのなら、
ぜひ自分のことも、少しだけ好きになってあげてください。


あなたの歩く道が、
たとえ遠回りでも、どうか優しい道でありますように。


──心からの感謝と願いを込めて。
著者より


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