社員戦隊ホウセキ V 第2部/第118話;海ではなく空?
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八月十四日の土曜日の正午過ぎ。
巨人の姿となったニクシム神の率いるニクシムの軍勢が、沸佐にある大国の軍事基地を短時間で壊滅させた。
これを受けて大国の軍隊は、ニクシムの本陣を核ミサイルで攻撃すると決めた。人質に取られた愛作たちが巻き込まれることも厭わずに。
社員戦隊は人質の命を最優先にする考えだった。
そんな彼らの元には、自ずと同志が集まった。漫画家の小曽化浄がSNSに発信した呼び掛けに応じた者たちだ。
薬師寺最音子、柳生露花、琴名佳令、伊達武義、鉄山蔵馬。
社員戦隊とも繋がりのある五人だった。
愛作たちを救出する為に、多くの者たちが動いていた。
八月十六日の月曜日の深夜、十縷、和都、時雨の三人は、キャンピングカーで小田射場に向かった。大国の軍隊は潜水艦から核ミサイルを発射すると予想したからだ。
海岸沿いの道にキャンピングカーを駐め、十縷たちは交代制で海の警戒を続けた。
小田射場から離れた寿得神社でも、リヨモが照度を補正した画像をブレスに送り、十縷たちの補佐していた。リヨモは、ニクシムが本陣としている沸佐の軍事基地だった場所の映像も出し、注意を払っていた。
間もなく日付が変わった。そのうち、日も昇り始めた。その間、海岸の見張りは十縷、和都、時雨と代わっていった。リヨモは寿得神社で、ずっと一人で映像を睨み続けていた。ソファーに座り、机に置いたティアラが投影する映像を。耳鳴りのような音を鳴らしっ放しで。
日光が地上を照らし、一帯が明るくなり始めてから暫くすると、何人かが離れを訪れた。扉が開き、人が階段を上がって来るのをリヨモは音で認識したが、映像から目を離さなかった。
訪れた者たちにリヨモは声を掛けられた。
「おはよう。リヨモちゃん。リヨモちゃんも、ずっと見張ってたの?」
「休まなくて大丈夫?」
光里と最音子だと、リヨモは声で認識した。リヨモは一瞬だけ彼らの方を向き、伊禰も一緒であることを確認した。
「ジュールさんたちと一緒に、ずっと映像を見ています。今のところ、海にも基地にも目立った動きはありません」
リヨモは再び映像に目を戻し、現状を説明した。リヨモの言う通り、机に置かれたティアラは、平穏な海原と静かな荒地の映像を投影している。荒地には、禍々しい光を放つ巨岩や、鉈を持った異形が映っているが。
光里たちはリヨモの座るソファーの方に寄って来た。その時、リヨモは言った。
「ワタクシのことなら、ご心配なく。ジュエランドは昼や夜が存在しない星でしたから、ジュエランドの生物は殆どが睡眠という概念を持ちませんので。夜通しと言っても、そこまでの加重労働ではありません」
リヨモは、光里たちに心配させたくないのだろう。実際にジュエランド人は眠らない。それでも、緊張状態を何時間も続けているのは、相当の負担ではないのか? 光里たちには、そう思えて仕方がなかった。
「姫様、代わりましょう。姫様は想造力で映像を出すだけにしてください。映像は私たちが見ます。五時間も六時間も休み無しで働いているのですから、確実に疲労しています」
三人の考えを代表して、伊禰が言った、医師という肩書が、言葉に説得力を持たせる。しかしリヨモは動こうとせず、歯車の軋むような音を鳴らし始めた。
「伊禰先生の仰ることは理解できます。しかし、愛作さんが捕らわれたのは、ワタクシのせいですし…。そもそもニクシムが地球に来ることになったのも、ワタクシのせいです。ジュールさんたちは、危険な現場まで赴いています。ワタクシが休むなど…」
悲惨な現状を作った原因は自分にある。この気持ちがリヨモを駆り立てていた。今までにリヨモは、何度も同様の発言をしている。何度もそれらの言葉を聞いた光里と伊禰は、本当に辛かった。
光里と伊禰は言葉選びに悩んでいるのか、下唇を噛み締めて沈黙した。かと言って、リヨモに声を掛けない者が居ない訳ではなかった。
「そういうの止めよう。リヨモちゃんが軍事基地を破壊したり、人質を取ったりした訳じゃないでしょう?」
そう言ったのは最音子だった。最音子はリヨモの隣にしゃがみ、強めの口調でそう言った。
リヨモの体が、雨のような音と鈴のような音を混ぜて鳴らし始める。その隣で、最音子は続けた。
「休まず仕事したって、いい結果は出ないよ。むしろ疲れて能率が落ちる。だから代わって。本当に社長さんたちを助けたいなら、そうして」
最音子の口調はハキハキしている。内容も合理的で、リヨモの気持ちも考慮している。だから、リヨモは抵抗感を覚えなかった。
リヨモは「わかりました」と言って、静かにソファーを立って映像の近くから離れた。リヨモが座っていた位置には、最音子が配置した。
「一時間交代ね。私の次は光里で、その次はお姐さん」
最音子はティアラの投影する映像を見ながら、後ろにいる光里と伊禰にも指示を出した。部外者に仕切られているのだが、光里と伊禰の表情には笑みが浮かんだ。
次の最音子は光里に頼み、光里のブレスを介して現地の時雨たちにも伝えた。
「現場の人たちも休んで。変な動きがあったら、私がすぐに伝えるから」
愛作たちを救う為、社員戦隊以外の者たちも動いている。今の最音子はその具体例だ。
そんな最音子の姿に、光里たちは勇気付けらたのだった。
最音子の指示で、小田射場の十縷たちは朝食を摂ることとなった。
キャンピングカーの居室で、三人はコンビニ弁当とペットボトルお茶を食べた。
「やってるコンビニ、探すの大変でしたよ。まだ復旧しきってないですね」
買出しに行った十縷が、苦虫を嚙み潰したような顔で言った。
「爆発ギルバスにやられた直後に、磁界ギルバスにもやられたからな。この地域は。営業してる店があるんだから、復旧は進んでいる方だと思うぞ」
コンビニ弁当を食べながら、時雨が十縷の言葉に返した。十縷は「そうですね」と頷いた後、雰囲気が暗くなるのを防ぐ為か話題を変えた。
「最音子さんが頑張ってくれて、凄く良いですね。小曽化先生の呼び掛けに大感謝ですよ」
この十縷の言葉に、和都は深く頷いた。
「最音子さんは、思い切りが良いし、気も強いからな。こういう時は頼りになるよ」
波間離宮でのスケイリー戦を、和都は思い出しているのだろうか? しみじみと語った。和都からの返答があると、十縷の頭は更に活性化する。
「琴名さんや柳生露花さんたち、国防隊メンバーも心強いですよね。そう言えば、あの鉄山先生っていう国防大の教官の方。社長とは剣道仲間って言ってましたけど、隊長に新杜宝飾を紹介した人は、あの人なんですか?」
記憶を掘り出して、十縷は初対面の鉄山も話題を上げた。と言っても相手が時雨なので、「そうだ」の一言で会話は終わってしまったが。
だが国防隊仲間の話題は、時雨にインスピを与えたのかもしれない。ふと、時雨は呟いた。
「軍事や兵器に詳しくない人からしたら、ミサイルも爆弾も同じだよな?」
時雨の発言は唐突過ぎたので、十縷と和都は少し困惑した。
「まあ、ミサイルは空を飛ぶけど、爆弾は飛ばない…くらいのことしか知りませんね。でも、飛んでく爆弾もあったりするんですか?」
十縷の回答を聞いて、時雨は小刻みに何度も頷いた。そして呟いた。
「核ミサイルの発射ではなく、核爆弾の投下という可能性も考える必要があるな」
この呟きの後、急に時雨は血相を変えた。そして、ブレスを使って通信を始めた。
「伊禰、神明。鉄山先生か琴名に声を掛けられないか? 二人に話したいことがある」
時雨が何を気にしているのか、十縷と和都には理解できなかったが、切迫した雰囲気だけは伝わっていた。
一機の飛行機が、雲より高い場所を飛んでいた。空気を切り裂くような速度で。
飛行機の機体は暗い灰色。前方は鈍角の二等辺三角形、後方は切妻屋根を思わせる形状をしている。そして主翼の隅には、小さく大国の国旗が描かれている。
この飛行機は大国の軍隊のステルス爆撃機だ。
この爆撃機は気配を隠すのが得意だ。地上の者たちに覚られることなく、上空を一直線に突き進む。ある地点を目指して…。
次回へ続く!
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