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社員戦隊ホウセキ V 第2部/第121話;それぞれの場所で

前回


 八月十七日の火曜日。ニクシムによる地球への攻撃は続けていた。
 暑宜あつぎにある大国の軍事基地はホウセキブラック=ザイガの駆るオブシディアン・チャリオッツと多数のウラームに、日本の中枢である名潟ながたちょうはスケイリーと多数のウラームに、それぞれ襲撃された。

 社員戦隊は、都内上空を浮遊する核爆弾をホウセキング・ゴージャスの力で宇宙まで吹っ飛ばしたが、胸を撫で下ろしている暇など彼らには無かった。

『名潟町がニクシムに襲撃されています。スケイリーも来ています』

 ゴージャス態を解いたホウセキングのコクピットの中、五人のブレスにリヨモの声と映像が届けられた。リヨモは耳鳴りのような音を鳴らしている。映し出された映像は、ウラームが手当たり次第に人を襲う光景と、スケイリーが毒針を一人の男性に撃ち込む光景だった。

「スケイリーにやられた人…。元首相の息子さんの出鱈でたら名誉めいよさんですわね」

 マゼンタの言葉は出鱈の知名度を物語っていたが、そんなことはどうでもいい。

(二箇所も同時に攻撃されてる。しかも、片方はスケイリーで片方はザイガ。二人に分かれたら、どっちもやられそうだ…)

 暑宜も名潟町も見放したくないが、相手は五人掛かりでないと敵わない強敵。この事実が、ゴージャスチェンジャーを外したレッドを悩ませた。ジュエランド人なら、軋む歯車の音でも鳴らしていることろだろう。
 そんなレッドの心の声を読み取ったのだろうか? ブレスの向こうから、指示が伝えられた。聞き慣れない声だった。

『名潟町に行って欲しい。暑宜の方は軍隊だ。抵抗する力はある。しかし、名潟町は違う』

 ブルーが「鉄山てつやま先生」と言ったので、声の主は国防大学校の教官である鉄山てつやま蔵馬くらまだとすぐに判った。肩書のある人物の言葉には説得力があり、社員戦隊の方針は決まった。

「名潟町に行こう。被害を最小限に食い止めるぞ!」

 ブルーがそう言った。レッドたち四人は、即答で「了解」と声を張り上げた。


 寿得じゅえる神社の離れの一階は、いつもより人が多い。人質になった愛作あいさくの代わりに、国光くにみつと千秋《ちあき》が居て、更には漫画家の小曽化おそばけきよしのSNSで集った、薬師寺やくしじ最音子もねこたち五人がいるからだ。

 この場に、国防隊の関係者が三人も居ることは、非常に心強い。オールバックの髪型とちょび髭が特徴的な鉄山蔵馬が、社員戦隊に指示を送ったのは、その具体例だ。
 社員戦隊を名潟町に向かわせた後、鉄山はリヨモのティアラが投影する映像を凝視しながら言った。

「量産型の兵士の大部分は、名潟町と暑宜基地に送られた。人質を救出するなら、今しか無いな。レッドのインスピ通りに行けたら、彼らの勝機にも繋がる」

 その独白の後、鉄山は体を起こした。

柳生やぎゅう琴名ことな! これより、人質救出作戦を遂行する!」

 鉄山の声に、場の緊迫感は自ずと高まった。名を呼ばれた露花つゆかと琴名は立ち上がり、綺麗な起立姿勢を作る。二人は軍服らしき灰色の戦闘服に身を包んでいる。鉄山と同じだった。
 露花と琴名に声を掛けた後、鉄山は一人の人物と視線を合わせた。その人物は、灰色の頭髪と長い髭が特徴的で、道着のような和服を着た男性。伊禰いねの師匠・伊達だて武義たけよしだ。
 自分と同様に起立姿勢が整った伊達に、鉄山は深く頭を下げた。

「お力添えを頂けるとのこと、心より感謝致します。花英拳かえいけんの理念に背く行為をさせてしまうこと、心よりお詫び申し上げます」

 固い鉄山に対して、伊達は柔らかい態度で返した。

「謝られる必要はありません。私が自分の意志で来ましたので。弟子にばかり、辛い思いをさせる訳にはいきませんし。社長さんたちを、絶対に助け出しましょう!」

 伊達は力強く言うと、頭を下げる鉄山の肩に手を添えた。鉄山は顔を上げて、伊達と熱く視線を交わした。

「兄の為に、本当にありがとうございます」

 千秋ちあきも立ち上がり、鉄山と伊達に声を掛けた。千秋はその次に、露花と琴名にも同様の声を掛けた。

最音子もねこちゃん、この場は任せたよ。父さんとリヨモ姫、それから光里ひかりたちを宜しくね」

 最音子もねこ国光くにみつ、リヨモの三人にも、千秋は声を掛けた。この三人はちゃぶ台を囲んで座ったまま、千秋たちに熱い視線を送った。

「宜しくお願いします。ご無事で帰られること、心より祈念しております」

 耳鳴りのような音を鳴らしながら、リヨモが言った。それに続いて、最音子と国光もエールを送る。それらの声に後押しされるかのように、千秋たち五人は離れを発った。


 ホウセキングは虚空に体当たりをして、青空をガラスのように突き破り、七色の光が渦巻くトンネルに飛び込んだ。

「まずはウラームたちを一掃する。その次にスケイリーだ。倒せなくてもいい。レッドの考えた作戦を鉄山先生たちが成功させてくれるまで、粘ればいいだけだ」

 ブルーが一同にそう告げた。言葉は非常に簡素だが、レッドたち四人は意味をしっかり理解しているようだった。
 ブルーの指示を受けて、マゼンタは進言した。

「私はまず、出鱈議員の所に行って宜しいでしょうか? スケイリーの毒を解毒したいです。遅れたら、取り返しのつかない事態になりそうなので」

 この提案を、ブルーは即答で許可した。


 そんな会話をしている内に、ホウセキングは七色の光が渦巻くトンネルを潜り抜け、再び空を突き破って、別の場所に躍り出た。そこはビル街だが、耳を澄ますと夥しい悲鳴が聞こえて来る。屋外には、ウラームの姿が何体も見受けられる。名潟町の上空に、ホウセキングは到着した。

「行くぞ!」

 ブルーの掛け声と同時に、ホウセキングは五色の直方体の巨大な宝石・イマージュエルに分離した。それぞれのイマージュエルからは木漏れ日のような光が照射され、その光を伝ってレッドたちが姿を見せる。レッド、グリーン、イエロー、ブルーは一ヶ所に集まるように、マゼンタのみ違う場所へと、それぞれ降下していく。

「ホウセキャノン!」

 ブルーたちに手が届きそうな距離に近づいたところで、レッドは叫んだ。その声に呼ばれて、金の装飾を付けた無色透明の大砲・ホウセキャノンが姿を見せる。
 ホウセキャノンはゆっくりと高度を下げ、同じく降下中のレッドたちの手許まで降りて来た。前をブルー、左をイエロー、右をグリーン、後ろをレッドに、ホウセキャノンはそれぞれ支えられる。すぐに、ホウセキャノンの中には、赤、緑、黄、青の四色の光が駆け巡り始めた。

「先代、宜しくお願いします!」

 ブルーが叫ぶと、四人のブレスから国光の声が聞こえた。「あいよ」と言う。
 ホウセキャノンを支えた四人は、静かに着地した。両脇にビルが立ち並ぶ、幅の広い道路の真ん中に。その前後には、何体かウラームが居て、レッドたちの姿を見るや、すぐさま飛び掛かろうとしてきた。
 それと同時に、レッドも引金を引いた。

「ホウセキャノン・クラスター!」

 四色の光は赤い光球としてまとまり、レッドの声と共に大砲から発射された。砲身から飛び出した刹那、大きな赤い光球は分裂して、無数の小さな光弾になった。

新杜あらとのイマージュエルとリンクしろ!)

 レッドは心の中で念じると、無数の光弾は複雑な軌跡を描きながら、それぞれが異なる方向へと飛んでいく。レッドたちの後方へ飛んでいったものもあった。しかし、光弾の向かった先にはある共通点があった。必ずウラームが居るという。
 まずレッドたちの前方にいた数体のウラームたち、そして次に後方にいた数体のウラームたちが、赤い光弾に撃たれた。ウラームたちは「フグッ!」と悲鳴を上げるや、異臭を放つ泥と化して崩れていく。
 道路の交差点を曲がった光弾もあれば、ビルの中に入っていった光弾もあった。いずれもその先にはウラームがいて、光弾は着実にウラームを射た。光弾は広範囲に散らばり、ゆく先々で次々とウラームを倒していった。


 空に浮遊する五色のイマージュエルを見て、スケイリーは社員戦隊の到着を知った。
 出鱈名誉の次の標的を探して道路を歩いていたスケイリーは、堪らず胸を躍らせた。

「来たな、地球のシャイン戦隊! 今日こそ、ぶっ殺してやるぜ!」

 声を上ずらせながら、スケイリーは走っていった。社員戦隊が着地しただろう場所へ。

(シャイン戦隊は俺がる。ザイガ将軍は姪っ子さんがお目当てだから、憎みっ子無しだな。奴らを部下にしたかったとか言われても、知ったこっちゃねえ! 姪っ子さんをる為に、理由つけて別行動を取ったあんたがわりい!)

 戦場へと疾走するスケイリーの興奮は、最高潮に達しようとしていた。


 暑宜で大国の軍事基地を襲撃していたホウセキブラック=ザイガは、ブレスに投影された映像で社員戦隊が名潟町に着いたのを知った。
 オブシディアン・チャリオッツのコクピットの中、ブラックは横目で映像を確認した。

(シャイン戦隊の砲撃…。新杜あらとのイマージュエルの力を借りているな。憎心ぞうしんりょくを感知する能力を付加すれば、磁石に引き寄せられる鉄のように、自ずと弾がウラームの方へ飛んでいくということか。考えたな)

 横目で少し見ただけだが、ブラックはレッドたちの攻撃をしっかり確認し、分析までしていた。見事な手並みに思わず体から鈴のような音が漏れたが、それは一瞬。すぐに感情の音は消え、別のことが頭を過った。

(あちらにはスケイリーが向かっているか? 皆殺しにされるかもしれんが、どうでもいいか。マ・カ・リヨモさえ殺されば)

 ザイガの考えは、スケイリーの推測とは少し違った。本当にザイガは、リヨモを殺すことしか考えていなかった。
 チャリオッツは粗方、基地の大型兵器や施設を破壊した。周囲を見ると、まだウラームたちと兵士たちが交戦していた。

「少し遊ぶか」

 ブラックが呟くと、チャリオッツは車体前部から木漏れ日のような光を発した。その光を伝って、ブラックは宝世機の外に出る。

(【憎しみの刃】の試し斬りをするか? いや、それ程の相手ではないな。切り札を明かすこともない)

 そう思ったブラックの手許には、チャリオッツの主砲と同型の大筒が出現した。ブラックは大筒の銃口を、兵士たちに向ける。迫りくるウラームたちに、小銃を撃って応戦している兵士たちに。

 ブラックは引金を引いた。銃口からは黒紫の大きな光弾が飛んでいく。その速度は猛烈で、兵士たちはブラックの方を振り向く暇もなく砲撃を受けた。兵士たちは大量の煙と激しい炎に包み込まれた。

「次は何処だ?」

 ブラックは次の標的を探して辺りを見渡した。感情の音すら立てずに淡々と。


次回へ続く!


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