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「最弱に選ばれたので、パーティを解散しま〜す!」第一話

《あらすじ》
10年に一度開催される最強を決めるインヴィクター・トーナメント戦では、今期も4人の最強が決められた。その一方で、隠れた称号を得た者もいた。マグ・スルート、二コラ・ド・アヴェーツィア、テフィ・メ―シェル、カイス・ギルジャーレの4人は、それぞれの理由でトーナメント戦に参加し、フィールドに足を踏み入れた挑戦者。そんな彼らの持つ称号の名は、……“最弱”。最弱たちは経験を積むためにパーティを組まされ、与えられたクエストをクリアすれば解散できるというが、彼らは冒険に不向きだと判断し、集結1日目にして勝手に解散してしまう。命令により再び集められた4人は一刻も早く解散するため、力を合わせようと決意するも…。

《第一話:パーティを解散します!》
◯シーナス闘技場

賑やかな歓声が聞こえる大きな闘技場が見える。

M『ここは魔法界南西部にあるシーナス闘技場。10年に一度、魔法を駆使してトーナメント戦で最強・インヴィクターを決めるために各国から挑戦者が集う場所である。』

甲冑を着た男がフィールドに足を踏み出す。

M『己が野望のため、未来のため、最強の座を狙うべくシーナス闘技場の戦域に足を踏み入れた。』

1人ひとりがフィールドに足を踏み入れる。

アナウンス「さぁて、今期もやってまいりました!シーナス闘技場にて行われる恒例のトーナメント戦〜!!」

ラッパやドラムの愉快な音とともに開会式が執り行われる。

鳴り止まぬ歓声。

アナウンス「10年に一度のトーナメント戦は、今年で500年目になります!そんなラッキーな日に最強に選ばれるのは、一体誰なんでしょうか〜!」

アナウンスの声が闘技場に響き、観客は一層盛り上がる。



剣を交えるオーカスと対戦相手。

剣を勢いよく弾いたオーカスは、剣を巨大な斧に変形させ、斧を振りかざして相手の魔法シールドを割った。

その瞬間歓声が大きくなる。

オーカス、その声を受け止めるように清々しい笑顔で立つ。

M『Aブロック勝者、オーカス・デイス』

アリカ、手を前に伸ばして遠くから相手の足元に魔法陣を描き、走り出した相手を魔法陣から生み出した柵で囲う。

アリカ、相手の頭上に魔法陣を出し、そこから出現させた複数の槍を頭上から落として相手の魔法シールドを破壊した。

アリカ、鳴り止まない歓声に、髪をなびかせて去っていった。

M『Bブロック勝者、アリカ・フリダーテン』

静かで真っ黒な異空間。

相手の周りに、十数人のナナツツミが円になって囲む。

戸惑っている相手。

円の中の1人のナナツツミが円から静かに歩き出し、相手の背後に忍びより、笑顔で魔法シールドを破壊した。

ナナツツミ、指パッチンし、同時に異空間は解除されて闘技場に戻る。

困惑する観客席。

観客席に手を振ったり投げキッスしたりと元気に去っていった。

M『Cブロック勝者、ナナツツミ』

フィールドが氷床になっていて吹雪が頬をかすめている。

相手はウフェクトに向かって走りながら気合を溜めている。

胡座をかいて瞑想しているウフェクト、目をカッと開き、氷床に右手をつけると途端に走る相手の床が溶け始めた。

相手は向かって来ていたが、溶ける床から逃げるようにしてウフェクトに接近する。

ウフェクト、自分の目の前に氷柱を作り出し、氷の下から氷の槍を突き上げ、相手の魔法シールドを割った。

ウフェクト、歓声を大きな背中で聞きながらその場を足早に去った。

M『Dブロック勝者、ウフェクト・グレーチッヒ』

すべての試合が終わり、大きな旗4 旒がフィールドのど真ん中に空中で垂らされる。

アナウンス「今!まさに!!10年に一度の最強4人が決定いたしましたぁ!!」

オーカス、アリカ、ナナツツミ、ウフェクトの4人は旗1旒に1人の顔が映し出された。

観客A「オーカスの敗退に7000アズ賭けたやつどこにいる!?」
観客B「実は予選でウチのダーリン負けちゃったのよねぇ」
観客C「アリカ〜様!!!」

観客はそれぞれ観戦後盛り上がりを見せている。

M『彼らは最強にして至高の戦士となった。4人は最恐と呼ばれる魔王を倒すため、インヴィクターとしての冒険が始まるのであった。』

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◯平原・昼

一方でマグ・スルート、ニコラ・ド・アヴェーツィア、テフィ・メーシェル、カイス・ギルジャーレは馬車に揺られながら、狭い座席にぎゅうぎゅうになって座っていた。

M『……彼らもまた、それぞれの理由でトーナメントに参加し、フィールドに足を踏み入れた挑戦者。そして、彼らも選ばれてしまったのである。』

2頭の馬に引っ張られながら、何もないのどかな平原を馬車が進む。

M『……最弱に。』

マグ、前屈みになり苦い顔で座っている。

M『マグ・スルート。魔法界東南部に位置するインレース出身。Aブロックで最弱認定』

マグ「……なんでこんなことになってんの?」

マグ、左を向く。

テフィ、小窓から外をぼーっと眺めている。

マグ、右を向くとニコラは腕を組みながら寝ている。

ニコラの右隣のカイスは、顔が見えないようにしてフードをかぶり縮こまっていた。

マグ、テフィを見る。

マグ「なぁ…………。」

テフィ、笑顔でマグを振り返る。

テフィ「はい!何か御用ですか?」
マグ「俺たち3時間くらいこの状態だよな…?」

テフィ、再び小窓の外を見る。

テフィ「そうですね〜。あ、見てください。外に蝶々がたくさん飛んでますよ〜」

マグ、一緒に横の小窓を覗くと、たくさんの蝶々が一面緑に広がるの平原の上を飛んでいた。

マグ「3時間ずっと同じ景色を見てる気がする……」

マグ、小窓から顔を離す。

テフィ「一見ただの草原ですけれど、出発当初はクロガバリ草だったのが今はムムタ草なんですよ。私の住んでいた地域では滅多に見られないものですし、もしかしたら貴重な生き物が住んでいたりして…ゴニョゴニョ……… 」
マグ「はぁ…本当になんでこんなことに…」

知的な独り言をし続けるテフィを見て、マグは不満げな顔で肩を落とした。

『事の発端は2日前…。』

◯(回想)シーナス闘技場

アナウンス「10年に一度の最強4人が決定いたしましたぁ!!…………それと同時に、“最弱”も決定いたしましたっ!」

フィールド上に空中に浮いている4旒の旗に顔が映し出されたマグ、ニコラ、テフィ、カイス。

観客の中にはバカにする人やブーイング、野次を飛ばしたりとにかく大声をあげる人など観客の熱は冷めない。

◯(回想)シーナス闘技場・受付

受付嬢A、ニコッと微笑む。

受付嬢A「みなさんは最弱に選ばれました。2日後までに準備を終えてくださいね♪」

受付の前でマグ、ニコラ、テフィ、カイスの4人が並んでいる。

マグ「2日後…?なんの準備だ?」
受付嬢A「冒険に出ていただくので♪」

4人は固まってそこに突っ立っている。

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◯森

道が険しくなりガタガタと音を立てて、馬車内はグラグラと揺れている。

マグ「経験値稼ぎのためとはいえ……急な話すぎて今でも理解できてない…」

テフィ、目を輝かせながら小窓に張り付く。

テフィ「あ!あれはガマタ虫!ここら辺は比較的気温が高いのでさまざまな生き物が住んでるんですね〜」

マグ、肩を落とす。

マグ「はぁ……ブブタ草とかガニ股虫とか知らないけどさ……」
テフィ「ムムタ草にガマタ虫ですっ」
ニコラ「ふあ〜っ。」

ニコラ、欠伸をしながら伸びをする。

ニコラの森の眠り姫のような綺麗な顔に頬を赤らめながら息を呑むマグ。

ニコラ、マグと目が合いマグを睨む。

ニコラ「……は?なにみてんのよ?」

マグ心の声「(愛想良くすれば絶対可愛いのに……)」

ため息をつくマグ。

マグ「あ、そうだ。どうせなら冒険を共にする仲間なんだし、自己紹介でもしておかない?」

ニコラ、マグを睨む。

マグ、ニコラの目つきに怯んで慌てる。

マグ「さ、参加理由も聞きたいし!」
ニコラ「すぐに済むならいいわよ」
マグ「あ、ありがとうございますっ!」

マグ、勢いよく頭を下げ、馬車の壁に額が当たる。

マグ「いだっ」

衝撃で馬車が少しだけ揺れる。

ニコラ「ちょっ、狭いんだから大人しくしなさいよ。」

マグ、痛そうにして額を手で抑えながらテフィを見る。

マグ「お、お先にどうぞ……」
テフィ「私ですか?」

『テフィ・メーシェル。魔法界北西部に位置するネイザーラント出身。Bブロックで最弱認定』

テフィ「私はテフィ・メーシェルと申します。えっと…ミスゾグラ魔法学校に通っていた時、医療魔導師試験を受けるつもりが誤って闘技会に申し込んでしまっていたので、参加してみました…。」

テフィ、恥ずかしそうに顔を赤らめる。

ニコラ「ミスゾグラといえば頭がよくて有名な学校よね」

マグ、額から手を離して渋々ニコラを見る。

マグ「……そうなのかぁ?」

テフィ、照れ笑いで頬を掻いた。

テフィ「い、一般的にはそう言われていますけど…、頭がよくて有名なのは魔導師を目指す魔術学部で、私が所属していたのは植物や動物などの生命体を研究する理学部の生物学専攻ですぅ…。」
マグ「うーん、難しくってわかんねえ……」
ニコラ「んじゃ、旅するにあたって授業にも出れないし、退学ってとこ?」
テフィ「いえいえ、旅が終わるまでは停学中とさせていただいています。ミスゾグラのご厚情にお応えできますよう精進したいです……」

テフィ、頬を赤く染めながら慌てる。

テフィ「さっ、次行きましょう、次……!」

マグ、気合を入れて咳払いをする。

マグ「んんっ俺の名はマグ・ハー……」

M『ニコラ・ド・アヴェーツィア。魔法界北西部に位置するゲルマーニー出身。Cブロックで最弱認定』

ニコラ「ニコラよ。参加した証が欲しくて参加したの。」

マグ、目を丸くしてニコラを見る。

マグ「俺は…?」
テフィ「参加した証……?」
ニコラ「新しく始めたい仕事があってね。そこの応募資格に”インヴィクタートーナメント戦に出場経験がある方”ってあったのよ。それで。」

ニコラ、髪をいじりはじめる。

マグ「一体どんな仕事なんだよ……」
ニコラ「王様が住む城と城下町の間での交通量調査よ。なかなかに稼げるみたいだし、いい経験にもなると思ってね。」
マグ「いろんな仕事があるんだなぁ…」
テフィ「新しく始めたい……ということは、以前も何かお仕事されてたのでしょうか?」
ニコラ「そうよ。」

○回想・民家のキッチン

魔法陣の上に鍋が置かれており、スープをかき混ぜているおばさん。

おばさんはスープをお玉ですくうと小皿に移し、ニコラに手渡す。

ニコラの声「各家庭の夕食を味見する仕事とか、」

心配そうに見つめるおばさんに、微笑みながら頷くニコラ。

○回想・暗い路地

広間で50名ほどが列になっている。

1人が椅子に座り、首を縦に振る。

ニコラの声「学校とか教会とか、大勢が使用する椅子の座り心地を確かめる仕事とかね。」

次にニコラが座り、首を横に振る。

(回想終了)

◯森

マグ「お前……首を振ってるだけだな。」
ニコラ「味見する仕事に関しては、女性から男性への贈り物の場合もあったわ。異物が混入してる場合もあったけど……」
マグ「ま、まじかよ……」

ニコラ、一息ついて

ニコラ「それで?あなたはどうなの?」

ニコラ、右隣に座っているカイスの肩を叩く。

カイス、フードを被っていて顔は見えないが、ビクッとして怯える。

カイス「ひゃいっ」
テフィ「あら、寝ていらしたのかと…。」

テフィが覗き込もうとするとフードを握って顔を隠す。

M『カイス・ギルジャーレ。出身地不明。Dブロックで最弱認定』

カイス「カ……カイス・ギルジャーレ……です…」

カイス、フードをかぶっていて顔が見えないようにしている。

テフィ「参加理由をお聞きしてもよろしいですか?」
カイス「本当は……で、出たくなかったんだけど……言われて、勇気出して、出てみて……そしたらこんなことに……」

カイス、元から見えない顔をもっと隠そうとフードの端を握って内側に引っ張っている。

テフィ、親身にウンウンと頷いて聞いている。

テフィ「まぁ、えらいですね〜」
ニコラ「悠々自適な生活を過ごすのは誰もが望む普通の在り方よね。」

ニコラ、顎に手を当てて、悩んでいる。

細かい石が多く少しガタついていた馬車内は、小さな地震のようなものが一定のリズムで大きくなっていく。

マグ、テフィとニコラとカイスに視線を向ける。

マグ「……で、俺は…?」

テフィ、思い出したようにパンっと手を叩く。

テフィ「あっ。そ、そうでした!では…」

テフィに目をやったその時、テフィの後ろにある小窓に目線がいくマグ。

テフィ「ではマグさん。自己紹介お願いします」という声が遠くに聞こえる。

テフィ「…マグさん?」

地震はみるみる大きくなっていく。

マグ、小窓の外を一点に見つめている。

マグ「テフィって……生物に詳しいんだっけ?」
テフィ「え?えぇ…まぁ…」
マグ「あれって……?」

マグ、小窓の先を指さす。

ニコラ、テフィは小窓を覗く。

左側の小窓の外には25mほどの巨大なトロールが馬車を目で捉えながら木々を折りながら走っていた。

テフィ「あ〜あれは……トロール…ですね…?」
マグ「……それは俺も知ってる」

マグとテフィ、顔を見合わせて血の気が引く。

ニコラ、眉間にシワを寄せる。

マグ・テフィ「うわぁぁぁっ!!」
ニコラ「う、うそでしょーっ!」

同時に危険を察知した馬車を引く2頭の馬は、鼻を鳴らして加速していく。

カイス、フードを被ってガタガタ震えている。

ニコラ、前のめりになって迫真に叫ぶ。

ニコラ「なんで逆に冷静になっちゃってんの!!馬ぁ!もっと早く走りなさいよ!!!」
マグ「誰がそんな態度で聞く耳持つか!もっとこう……馬さん♡お願いします♡」

マグ、前を走る馬に愛嬌を振り撒いた。

マグとニコラ、歪みあっている。

ニコラ「耳腐るわよ!!」
マグ「ひ、ひどいぞ!!」

テフィ、持参した本のページを目まぐるしくめくっている。

テフィ「ト、ト、トロールの習性や生態はぁ…えぇっとぉ……どうしましょう〜〜っ」

マグとニコラ、低い天井ギリギリまで中腰になって立ち上がる。

マグ「あんま騒ぐなよっ!狭いんだから!」
ニコラ「私だけのせいじゃないでしょ!」

馬車内は慌ただしく騒がしくなっていき、2頭の馬の蹄は鈍く擦れている。

車輪が大きめの石を乗り越え、馬車内が大きく浮く。

マグ「あがっ」
テフィ「きゃっ」
ニコラ「ちょっ……」
カイス「ううっ」

マグ、ニコラ、テフィ、カイスは馬車内でごちゃごちゃになる。

マグ、頭と足が逆を向いた状態でため息をつく。

マグ「はぁ、もうなんでこんなことに……」

ニコラ、拳を握って怒りを抑えていたが、ついに爆発する。

ニコラ「もうーっ!どうすりゃいいのよ!!」

ニコラ、マグの腹の上に乗っかった状態で右側の扉をゲシゲシと蹴る。

マグ「お、おいっ!壊れるからぁ!」

カイス、フードで顔を隠しながら椅子を枕にしているような状態で、ニコラの蹴る足が顔の前を行き来する。

テフィ、メガネが割れている。

テフィ、椅子に寝転がる状態で本の1ページに目を光らせ、メガネをかけなおしながら体を起こす。

テフィ「あのトロールは森の中に生息するトロールで、通称 森の妖精だと言われてるみたいです!」
マグ「あれのどこが妖精なんだよ……」

ニコラ、ドアを蹴るのをやめてテフィを見上げる。

ニコラ「そんなこといいからっ!あいつについて他にわかることは?」
テフィ「縄張り意識が強いので、その範囲内に入ってこられると怒っちゃうみたいです。」
マグ「つまり俺たちは今、トロールの縄張りに不法侵入してるってことだな?」
テフィ「そのようです……」

ドンっと何かにぶつかり馬車は右に大きく揺れる。

マグ、ニコラ、テフィ、カイスは馬車の右側に少し寄る。

マグ「わぁっ」
ニコラ「今度は何よ!」
テフィ「うわぁ〜〜んっ」

ニコラが蹴っていた右側のドアが勢いよくガバッと開く。

カイス、ドアの淵を持って外に出てしまうのを必死で耐える。

ニコラ、咄嗟に足を開いてドアの淵に足の底をつける。

馬車のドアは地面に擦れて取れてしまった。

車輪が勢いよく地面に叩きつけられ、馬車は体勢を立て直す。

マグ「絶対ニコラのせいだぁ!」
ニコラ「け、蹴ったことは謝るわよ!」
テフィ「しかし、今の衝撃……木にでも当たったんですかね?」

余計にごちゃごちゃになった馬車内。

テフィ、小窓の外に心配顔で張り付く。

トロールが少し遠くに見える。

テフィ「あれ?トロールが遠のいてます!もしかして諦めたのでしょうか?」

マグ、テフィの持っていた本が顔の上に開いた状態で乗っていたため、本を手に取って読む。

マグ、苦い顔でテフィに本を開いた状態で渡す。

マグ「……森の妖精さんは怒るだけじゃなくて、獲物だと認識した場合、」

テフィ、マグから本を受け取って見る。

本にはトロールの絵と、説明文の一文に“トロールは標的を見つけると凶暴化するという…”と書かれている。

マグ「攻撃もしてくるらしいぞ」

テフィ、割れたメガネの縁をクイっとあげる。

テフィ「なるほど……。では、さっきの衝撃は木ではなくトロールが当たってきたってことですね!」

トロールが少しずつ馬車に近づいてくる。

テフィ「となると今遠のいているのは……」

テフィ、小窓を覗くと猛スピードで走ってくるトロールと目が合う。

テフィ「馬車に体当たりをするために助走をつけているんですね〜!」

テフィ、笑顔で固まっている。

馬車内にひとときの静寂が訪れ、ガタガタと馬車が揺れる音が響く。

マグ「……んじゃダメじゃん!!」

テフィ、気絶してフラフラと椅子に倒れる。

ニコラ「こうなったら……!」

ニコラ、トロールがいる左側のドアの鍵を開け、ドアを勢いよく開く。

マグ「何する気だ!?」

ニコラ、馬車内の壁に手をつきながら隙間を見つけて両足を安定させる。

マグ「えっ、ちょっ」

トロールは馬車にだんだんと迫ってきている。

ニコラ、鼻から息を吐きトロールを睨みつけている。

ニコラ「ほら、来なさいよ……!」

カイス、フードから片目を出して恐る恐る見ている。

マグ「あぶないぞっ!」

マグ、足でカイスの体を掴む。

ニコラ、マグの腰にぶら下げてある剣のグリップを掴む。

トロールが馬車に勢いよく激突する。

再びよろめき、右側に傾く馬車。

ニコラ、斜めになっている馬車から身を乗り出し、マグの腰から剣を抜く。

ニコラ、隙をついてトロールの目に剣を刺した。

トロールは攻撃を喰らい、よろめく。

馬車が体勢を立て直した衝撃でニコラ体勢を崩し、飛び出しそうになる。

馬車は、馬を繋いでいたハーネスが取れて、2頭の馬が箱を置いて森の奥に方向転換する。

マグ、ニコラ、テフィ、カイスを乗せた箱だけになり、車輪がカラカラと回っていたが、目の前に坂が現れる。

マグとニコラ、目を合わせて、放心状態のカイスと気絶中のテフィを引き寄せ4人は抱き合う。

マグ「死にたくないいいいい!!!」
ニコラ「いやぁぁぁぁあ!」

馬車は勢いよく坂を下っていく。

◯草原(夕)

マグ、ニコラ、テフィ、カイス、森を抜けてトボトボと歩いている。

馬車の箱は木と木の間に挟まっている。

ニコラ「いかに低予算で旅に駆り出されてるのがよくわかったわ。魔法界でもハーネスを使ってるとことかとくにね。」
マグ「俺の剣がぁ……」
ニコラ「あぁでもしないと、トロールの夕飯として食卓に並ぶとこだったわよ」

テフィ、本を大事そうに抱えて嘆く。

テフィ「一難去ってまた一難、そしてまた一難、一難のミルフィーユですぅ……」

マグ、立ち止まり、止まれと言うように横に手を広げる。

ニコラ、テフィ、カイスはマグを見て立ち止まる。

ニコラ「なによ?」
マグ「気づいたんだけど……、俺たちこの旅向いてなくない?」
テフィ「え?」
マグ「だって、トロール相手にこんな調子じゃ、本当にこれからの無理難題を乗り越えていけると思うか?どう考えても無謀だろ?」
ニコラ「まぁそれは否定しないけど……。これまでの最弱もこれを乗り越えたと思えばまだ……」

マグ、人差し指をチッチッと振る。

マグ「いーや。歴代の最弱と大きく違う点がある。」
テフィ「違うところがある…ですか?」
マグ「正確には、俺らにない点。」
ニコラ「あるのかないのかどっちなのよ」
マグ「答えは、咄嗟の判断で魔法を出さないところだッ!」 

マグ、夕空に向かって人差し指を突き出した。

マグ「俺ら、まったく魔法を使ってないじゃないのッ!」

マグ、再び夕空に向かって人差し指を突き出した。

ニコラ「私、魔法得意じゃないのよ。」
テフィ「生物学専攻では戦闘用の魔法を習わないので……」
カイス「できない……」
ニコラ「でも、向いてないからなんなのよ。」

マグ、上に掲げていた腕をニコラ達の前に持ってきて指を指す。

マグ「このパーティを解散するっ!」

ひとときの静寂が訪れる。

ニコラ・テフィ「えっ……えぇ〜〜!!!」
ニコラ「解散!?」
テフィ「そんな勝手に決めていいんでしょうか……?」
マグ「異論あるものは名乗り出よ。」

ふたたび訪れる静寂。

マグ、肩の力を抜いて腰に手を当てる。

マグ「決まりだな。」
テフィ「ほ……本当に解散を?」
マグ「……あぁ、またどこかで……、来世あたりでまた会おう。」
ニコラ「すでに今世の縁を切られたわ……」
マグ「なぁ、みんな。帰ったら何すんだ?」
テフィ「で、では。次こそ医療魔導師試験を受けるために、勉強し直したいと思います!」
マグ「いいじゃん!ニコラは?」
ニコラ「……今度こそ交通量調査で稼ぐわ。」

マグ、手の甲でニコラの肩を軽く叩く。

マグ「おいおい、その体力と行動力はインヴィクター級だな!」

ニコラ、冷たい目でマグの手をサラッとどける。

ニコラ「……カイスはどうすんの?」
カイス「い、家に帰って、たくさん寝たいです……」
テフィ「ふふ、いいですね〜!私も寮に帰ったら毎日パンにハムと目玉焼きを乗せて食べることにします〜」
マグ「それって、幸せってやつだな!」
ニコラ「あんたさっきからやたら上機嫌ね。きもいくらい。」
マグ「あっ、さすがに傷つくぞ!」

M『こうして彼らは、できれば今後このメンツとは会わないように……なんなら、今日のことを思い出すので二度と会いたくないとも心の中で願っていたとか、いなかったとか……。』

マグ、「んじゃ、帰るか〜!」

オレンジ色の夕日が、無限に広がる草原を照らしていた。

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◯シーナス闘技場(夜)

『その夜、シーナス闘技会にて。』

ジェンが封筒を持ってオリバーのいる部屋に入る。

ジェン「オリバー様。只今、最弱パーティの任務報告が届きました。」
オリバー「ふむ、読みたまえ。」

封を開けて中を確認するジェン。

ジェン「……最弱パーティが必ず行う初めの試練、強制任務でトロールと遭遇できたのは確かな情報ですが、魔法は一切使用していません。そして今朝、逃走したようです。」

オリバー、長い髭を触る。

オリバー「ふむ、やはりな……。最弱パーティが逃げ腰なのは毎度のこと。もはや伝統的なものだ。」

ジェン、気まずい顔をする。

ジェン「いえ、逃げ腰というか……。それぞれが家に帰った、と……。」

オリバー、ジェンを振り返る。

オリバー「ほえっ…?」

オリバー、驚いた顔で立ち上がる。

オリバー「なぁんで帰っちゃったの〜〜〜〜!!!??」

オリバーの叫びが館内に響き渡る。

◯草原(朝)

『翌日』

マグ、ニコラ、テフィ、カイスは再び馬車に揺られながら、狭い座席にぎゅうぎゅうになって座っていた。

マグ「なんでこんなことになってんの?」

第一話 END

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