【clum! '96 #40】いろんなこと、ひとつ目
※今回はキスシーンのイラストが出てきます。苦手な方はご注意を。
1996年、夏の盛り。
県庁前の中央通りには、佐賀市内中から集まった人々の熱気と、屋台から漂うソースの香りが充満していた。
色とりどりの浴衣が夜の帳を彩る中、折館迅と岡本玲は、野瀬たちの喧騒から少し離れた広場の縁石に座っていた。
「……迅くん、花火、きれいだね」
玲が膝を抱え、夜空に咲く大輪の火花を見上げる。
浴衣の襟元から覗くうなじの白さと、火照った頬。

迅の脳内では、例の「いろんなことしようね」という玲の言葉が、花火の爆音に負けない音量でリフレインしていた。
迅は、隣に座る玲の肩をそっと抱き寄せた。
「……玲。さっき一頼たちにも言ったけど、俺の『いろんなこと』、まだ終わってないから」
迅の声は低く、どこか切羽詰まったような熱を帯びていた。
玲が不思議そうに顔を上げると、迅の碧い瞳が至近距離で自分を射抜いていることに気づきます。
「……迅くん?」
「……前回の『上書き』じゃ、まだ足りないんだ。……もっと、深いところまで。俺がお前の全部を独り占めしてるって、お前にも……俺自身にも、分からせたい」
迅は玲の言葉を待たず、吸い寄せられるように唇を重ねた。
最初は、いつものように優しく、触れるだけの確認。
しかし、迅の指が玲の細い顎を捉え、わずかに上向かせた瞬間、キスの質が劇的に変わった。

「……っ、ん……」
玲の小さな吐息が漏れる。
迅は躊躇を捨て、自らの舌先で彼女の唇の端を割り、その奥へと深く踏み込んだ。
1996年、15歳の夏。
未知の感覚が玲を貫き、脳裏が真っ白な火花で満たされる。迅の口内から伝わる熱さと、執拗なまでの渇望。
それは、これまでの「可愛らしいキス」とは一線を画す、一人の男としての、剥き出しの独占欲の証明だった。
迅は玲の浴衣の帯に手をかけたい衝動を必死に抑え込みながら、むせ返るような彼女の甘い匂いの中に溺れていった。
玲の手が、迅の胸元のシャツをギュッと強く掴む。
どれくらいの時間が経ったのか、花火の最後の一発が夜空を震わせ、あたりが急に静まり返った。
ゆっくりと唇を離すと、銀糸を引くような熱の余韻が二人の間に残った。
玲は瞳を潤ませ、肩で激しく息をつきながら、迅を見つめた。
「……迅くん、いまの……」
「……悪かったか?」
「ううん。……なんだか、迅くんの心が、私の体の中まで入ってきたみたいで……。……少しだけ、怖いくらい、嬉しい」
玲はそう言うと、自分から迅の胸に顔を埋めた。
迅は彼女を壊れ物のように、しかし誰の手にも渡さないという決意を込めて、強く抱きしめた。

「……うわっ、あれは流石に見ちゃいけないやつだった。……樹先輩、レフ板出します?」
遠くから望遠レンズを覗いていた野瀬が、慌ててカメラを下ろした。
隣で座ってラムネを飲んでいた、浴衣姿の樹は、花火の残光に照らされたグラスをじっと見つめ、ため息を一つ。

「……不要だ。非論理的なホルモンの暴走だが……。……あいつも、玲にだけは『孤高の壁』でいられなかったということだろう」
一方、一頼と立夏は、少し離れた場所でひとつのソフトクリームを分け合いながら、夜空を見上げていた。

「……一頼」
「なに、立夏」
「……あたしたち、迅たちみたいなのは、まだ早いからね。……まずは、映画館の続きからよ」
「……分かってるよ」
(……でも、いつか、僕も……)
県庁前のお堀の夜空に上がった花火は、彼らの不器用で、熱くて、一生消えることのない「最高の夏」を祝福するように、いつまでも水面に光を落としていた。
【今回のおまけ】
野瀬「内容には触れません! NG集に行きます! 今回のテーマは『Geminiさんは夜の表現がビミョーかも』です」

稲城「これはこれで。というか、十分美しい……!」
野瀬「で、アレなシーンは飛ばして……」

稲城「野瀬は甚兵衛姿で、樹先輩は浴衣なんだな。というか、望遠レンズて、お前」

野瀬「以上! Geminiさんバージョンでした。光と影の演出はChat GPTの方が美しさで勝るかな。繊細すぎる気もするけど、今回のお話的には……あー! 内容に触れないっつったのに!」
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