【clum! '96 #02】調理部存続プロジェクト

「……ゼロ。嘘でしょう?」
放課後の調理室。
わたしは、新入生向けに用意した「手作りマドレーヌ試食会」の受付名簿を見つめ、力なく肩を落とした。
見学者、ゼロ。
わたし、岡本玲は、泣きそうな気持ちで受付名簿を見つめていた。

設立3年目。3年生であるわたしが引退すれば、この場所はただの「家庭科室」に戻ってしまう。
1年生の頃、学校でもお料理ができたら楽しいなって考えて作った調理部。部員は増えなかったけど、食べにきてくれる人たちが増えて……。
ここで終わってしまうのは、あまりにも寂しすぎる。
そこへ、部活終わりの佐野立夏ちゃんが、汗を拭いながら駆け込んできた。
「玲ちゃん! どうだった、新入生の食いつきは! ……って、その顔、全滅?」
「そうなの。みんなダンス部やテニス部の方に流れていっちゃって。一学年120人しかいないから、どの部も一年生の取り合いになってしまうの……」
立夏ちゃんは、お皿に残ったマドレーヌを一つ口に放り込むと、「こんなに美味しいのに、もったいない!」と言ってくれる。
「よし、こうなったら『碧翔学園・食のスカウト大作戦』よ! 玲ちゃん、誰か狙いをつけてる子はいないの?」

わたしは少し考えて、同じ図書委員会の後輩、早坂一頼くんの顔を思い出した。
「早坂くん……彼は読書が好きだし、静かな調理部は向いてるかもしれないけど、バスケ部で忙しいものね」
「あいつは運動神経はそこそこだけど、一生懸命だからバスケ部は辞めないし、兼部もしないだろうなぁ……。あ! そうだ、あいつならどう?」
立夏ちゃんが指差したのは、廊下を歩いていた、首にカメラを下げた野瀬隆文くんだった。
「野瀬! あんた美術部とバスケ部の兼部でしょ? もう一個、調理部も入りなさいよ!」
「えぇ〜、佐野先輩、無茶言わないでくださいよ。俺、食べるのは好きですけど、作るのは面倒くさい……」

気だるげに断ろうとする野瀬くん。
な、何とかしなくちゃ!
焦ったわたしは、
「野瀬くん、もし入ってくれたら……部活中、好きなだけ写真を撮ってもいいし、迅くんへの差し入れも優先的に作れるようにするわよ?」
と、少しだけ強気な交渉(?)を仕掛けた。

「……折館先輩の『不本意ながらエプロンをさせられている姿』、撮らせてもらえます?」
「それは、わたしの権限でなんとかするわ」
わたしのその言葉に、野瀬くんの目がキラリと光った。
「……交渉成立。幽霊部員でよければ、名前貸しますよ。あ、あと、稲城も巻き込みません? あいつの『ええ声』で勧誘放送させたら、一年生女子が釣れるかもしれないし」
「それだ!!」
と立夏ちゃんが拳を握る。
「玲ちゃん、大丈夫。この碧翔学園の『2年生3人組』を味方につければ、廃部なんてさせないから!」
立夏ちゃんの自信満々な様子に、わたしは少しだけ救われた気持ちになった。
「ありがとう。……落ち込んでいる場合じゃないよね。じゃあ、まずはバスケ部の皆さんに、このマドレーヌを持っていってもらおうかな」
果たして、調理部に待望の「実戦力」となる後輩は現れてくれるのでしょうか――?
【今回のおまけ】


野瀬「少し前に載せたものの、アップバージョンでお茶を濁します。もう桜は散っちゃってるけどね、こっちは」
稲城「光の当て方とか、主線の溶け込ませかたとかを勉強中なんだそうですよ」
野瀬「なんか今回は廊下を歩いてただけなのにこの2人に絡まれるわ、調理部まで入れられるわ、新年度から大変だよ」
稲城「羨ましい……っ!」
野瀬「頼りにされるのは嬉しいけど、断れないんだよ……」


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