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【clum! '96 #27】純粋な爆弾

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ようやく「本当のファーストキス」を交わし、胸の内にあった暗い衝動が温かな幸福感へと浄化された迅。

玲の腕の中で、彼は「守らなければ」という強迫観念から解放され、久しぶりに深い安らぎを感じていた。


しかし、その静寂は、玲が離れ際に放った無邪気で「破壊的」な一言によって、あっけなく打ち破られる。

「ね、迅くん……。中体連が終わったら、

もっと、たくさん、いろんなことしようね!」

玲は少し上気した顔で、屈託のない、向日葵のような笑顔を向けた。

彼女の中では「一緒にアイスを食べに行く」「遠くまで自転車で出かける」「映画を見に行く」といった、夏休みのささやかなデートプランを指していたのだろう。

しかし、先ほどまで独占欲の泥沼にいた迅の脳内フィルターを通ると、その言葉は全く別の色彩を帯びて響いた。

「……っ!?」

迅の思考が、一瞬でフリーズした。

「もっと」「たくさん」「いろんなこと」

「もっと」「たくさん」「いろんなこと」!?

その言葉の響きが、彼の脳内で1996年当時の深夜番組や、クラスの男子が隠し持っていた際どい雑誌の断片的な知識と結びつき、猛烈な勢いでシミュレーションを開始してしまう。

「……い、いろんなこと、とは……具体的に、どういう……」

迅の声は、先ほどとは違う意味で震えていた。

玲の手首を握る力加減、あの「甘い匂い」、そして先ほどの柔らかな唇の感触。それらが「いろんなこと」というフレーズを燃料にして、迅の深層心理で火柱を上げる。

(……いや、玲がそんな不純な意味で言っているはずがない。落ち着け。……だが、玲が望むなら俺は拒めない。……いや、そもそも弘道館への受験勉強はどうなる? いや、それどころか、俺の理性がもつのか……?)

迅の碧い瞳が、かつてないほど激しく泳ぎ始めた。バスケで培った冷静な判断力は、今や完全にシャットダウンされている。


その様子を、少し離れた物置の陰から「写ルンです」を構えて見ていた野瀬が、冷めた声で呟いた。

「……あーあ。迅先輩、さっきまで聖者みたいな顔してたのに、一瞬で『煩悩の塊』みたいな顔になったね。現像したら、ここだけ色が毒々しくなってそう」

「野瀬くん、声が大きいよ……ていうか、覗き見やめようよ」

一頼が隣でハラハラしながら見守っている。

「でも一頼、あの顔見てみろよ。迅先輩、今たぶん頭の中で『夏休み・成人向けロードムービー』の全3巻セットくらい上映してるぜ」


「……迅くん? どうしたの、顔が真っ赤だよ?」

玲が心配そうに覗き込むが、迅は「……何でもない。……ああ、そうだな。……色々、しよう。色々」と、壊れた機械のように繰り返すのが精一杯だった。

玲の無防備な優しさと、自分の中に再燃した、今度はより健全で、より強烈な独占欲と期待。

迅にとって、今度の中体連は「負けられない戦い」であると同時に、「その後に待ち構えている(かもしれない)未知の領域」への、恐ろしくも甘いカウントダウンとなった。

セミの声が一段と高く響く中、迅は心の中で、自分自身の「健全な男子中学生としての本能」と、激しい第5クォーターを戦い始めることになったのだ。



【今回のおまけ】

野瀬「今回はおまけやっても大丈夫な雰囲気、かな?」

稲城「かな?」

野瀬「これ、個人的にツボ。怒られてしょんぼりしてるように見える」

野瀬「今回はNG集だね。折館先輩がどうしても外国人の成人と解釈されちゃうらしくて」

稲城「絵が濃い!」

野瀬「最初は別にいいかと進めてたけど、もう少し中学生の初々しさが欲しくて作り直したそうな」


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