【clum! '96 #10】虹色の手がかり
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シールの手がかりは、4人をさらなる迷宮へと誘い込んだ。
玲の靴箱に残されていたのは、当時女子中高生の間で大流行していたホログラムシールだった。
「これ、最近発売された限定版だよ。玉屋か、駅近くのファンシーショップに行かないと手に入らないはず」
野瀬が、美術部らしい観察眼で指摘する。
立夏たちは放課後、そのシールを扱っている数少ないショップを回り、聞き込みを行った。しかし……。
「……ダメだわ。こんなの、持ってる子は何十人もいる」
立夏が地元のファンシーショップの前で肩を落とした。
1996年、防犯カメラなどどこにもなく、レジの記録も手書きの伝票。誰が買ったかを特定するのは不可能だった。
「あのシール、あの子の筆箱にも貼ってあったよね」
「でも、あの子は玲先輩と接点ないし……」
4人の間に、嫌な空気が流れ始める。すれ違う女子生徒の持ち物、笑い声、視線。そのすべてが犯人のものに見えてくる。

一頼は、同じ2年生の女子たちが楽しそうにシール交換をしているのを見て、吐き気を覚えた。
「……信じたくない。犯人が、あの中にいるなんて」
張り込みを強化しても、犯人は二度と同じ手は使わなかった。
ある日は靴箱に砂が少しだけ撒かれ、ある日は玲の教科書のページに、シールを剥がした粘着剤の跡だけが残されている。
「時々」という不定期さが、4人の精神をじわじわと削っていった。
5月に入り、あんなに執拗だった嫌がらせが、唐突に、パタリと止んだ。
「……一週間、何もないわ」

玲が不思議そうに、そして少し寂しげに呟いた。
立夏たちは必死に「最後の手がかり」を探したが、何も見つからない。犯人が誰だったのか、なぜ止めたのか。クラス替えに馴染んだのか、飽きたのか、それとももっと別の理由か。
放課後の昇降口。立夏は、自分の靴に履き替える玲の背中を、言葉もなく見つめていた。
「……ねえ、立夏ちゃん。犯人は捕まらなかったけど、もういいの」
玲が振り返り、静かに微笑みました。
「きっと、その子は私に何かを言いたかっただけだと思うから。……今はもう、その必要がなくなったんだわ」
玲のその優しさが、立夏にはひどく残酷に思えた。

結局、誰も罰せられず、真実は闇の中に沈んだ。
野瀬は、現像したばかりの「張り込み中の写真」を一枚、ゴミ箱に捨てた。
そこには、遠くから玲をじっと見つめていた「誰か」の影が映り込んでいたが、ピントが合っておらず、ただの黒いシミにしか見えない。
「……これで解決、なんですかね」
一頼が、雨に煙るグラウンドを見つめて呟きます。
「……解決じゃないわよ。ただ、終わっただけ」
立夏の答えは冷たく響いた。
迅と樹には「もう終わったことだから」と玲が口止めをし、二人は納得がいかない表情ながらも、玲の意思を尊重して追求をやめた。
碧翔学園に再び「平和」が戻ったかのように見えたが、4人の心には、「犯人は今も、この教室のどこかで笑っているかもしれない」という、拭いきれない澱のような感覚だけが残った。
1996年、初夏の雨。
正義が必ずしも勝つわけではない。そんな苦い教訓を、彼らは知ることになったのだ。

【今回のおまけ】
野瀬「…………」
稲城「…………」

野瀬「あー……何故か早坂が写ってないやつです。そんだけ」
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