【clum! '96 #9】シンデレラの靴作戦
玲の宣言を受け、立夏率いる「碧翔学園防衛隊」(?)による極秘の張り込み捜査が開始された。
放課後、バスケ部の練習を早退した立夏、そして一頼、野瀬、稲城の4人は、校舎の死角となる物置小屋の陰に集まった。
「いい? 相手は神出鬼没。でも、必ずどこかに『綻び』があるはず」
【1日目:静寂の佐賀平野】
夕暮れ時、田んぼからカエルの合唱が聞こえ始める中、4人はそれぞれの持ち場で息を潜めていた。

「……こちら野瀬。特に異常なし。というか、折館先輩が玲先輩を家まで送っていく姿が眩しすぎて、露出オーバーで何も見えません」
「野瀬くん、真面目にやって! 迅にはバレないようにって言ったでしょ!」
無線機代わりの「おもちゃのトランシーバー(当時はこれが精一杯)」から、立夏の怒鳴り声が漏れる。しかし、この日は何も起きなかった。
【4日目:空振りの放送室】
「……こちら稲城。3年生の女子数名が靴箱周辺で立ち話をしていましたが、特に不審な動きはありません。ただ、彼女たちが僕の放送のリクエスト曲について話していたので、つい聞き耳を立ててしまいました」

「稲城くん、それは私情でしょ!」
一頼が図書室の窓からツッコミを入れる。玲の靴箱は、今日も整然としたままだった。
【1週間後:見えない敵】
数日が経過したが、嫌がらせはピタリと止んでいた。
「……もしかして、俺たちが張り込んでるのバレてるのかな?」
一頼が不安そうに呟く。
「いや、それはないはずだ。俺たちは完璧に風景に溶け込んでる……はず」
野瀬が、植え込みの中で迷彩柄のバンダナを巻いた立夏を見ながら、微妙な表情を浮かべた。

実際、いたずらは「時々」しか起こらないからこそ厄介だった。毎日張り込むわけにもいかず、テスト期間や部活の遠征が重なると、どうしても監視の目が薄くなる。
「……今日も、何もなかったね」
最終下校時刻のチャイムが鳴り響く中、4人は昇降口で合流した。玲の靴は、何事もなかったかのように彼女の足に収まっている。
「相手は私たちが守ってることを知って、様子を伺ってるのか……。それとも、ただの気まぐれなの?」
立夏が悔しそうに唇を噛む。
「立夏さん、あんまり根を詰めないでください。玲先輩は『自分に向き合う』って言ったんだし、僕たちが焦りすぎても……」
一頼がなだめようとしたその時。
玲がふと、自分の靴箱の隅にある「小さな違和感」に気づいた。
靴は隠されていない。場所も変わっていない。
しかし、靴箱の奥に、流行りのキャラクターのシールが、剥がし損ねたような跡で一枚だけ、ひっそりと貼られていたのだ。
「……このシール、わたしのじゃ、ない」

玲の呟きに、4人が凍りついた。張り込みを潜り抜け、相手は「ここにいるよ」と言わんばかりの、小さな、しかし確実な足跡を残していったのだ。
【今回のおまけ】

野瀬「ねぇ、これホラーとかに足つっこんでない?」
稲城「早くいつものラブコメに戻してくれええぇ」
早坂「犯人が存在してるはずなんだから、せいぜいミステリーだよ。二人とも落ち着いて!」
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