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【clum! '96 #31】決起集会

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↑ 主題歌(ED) しゃるちゃん

1996年、7月。中体連地区大会を翌日に控えた、放課後の碧翔学園。

プレッシャーと熱気が最高潮に達する中、男女バスケットボール部のレギュラー陣は、家庭科科室に大集結していた。

「うおーっ! すげえ! スイカにハチミツレモンまで! 調理部、マジで最高だぜ!!」

男子部キャプテンのコガケンが、家庭科室のドアを開けるなり歓声を上げた。

その後ろから、じん一頼かずより野瀬のせ、そしてレギュラーメンバーの江頭えがしら達が続く。


家庭科室の中央の大きな調理台には、3年生の玲と、1年生のみやび達が朝から仕込んでいた特大タッパーのハチミツレモンと、見事にカットされたスイカが山のように並べられていた。

「こらコガケン! 男子ばっかりズルい、あたしたちにも食べさせなさいよ!」

女子部キャプテンの立夏が、同じくユニフォーム姿の女子部メンバーを引き連れて乱入してきます。

「キャプテン、早坂くんがめっちゃ見てますよ〜」「ヒューヒュー!」と、女子部員達が立夏を小突いてからかう。

「ちょっとあんたたち! 試合前なんだからそういうのやめなさい!」と顔を赤くする立夏。

「……あ、あの、玲先輩。バスケ部の人たち、エネルギーが凄すぎて、家庭科室が壊れそうです……」

1年生の雅は、この圧倒的な「体育会系のノリ」にタジタジになっていた。

「ふふ、ごめんね雅ちゃん。でも、明日が本番だから、みんな気合が入ってるのよ」

玲が優しく微笑みながら、迅に一番大きくて甘そうなスイカを手渡すと、迅は「……サンキュー」とだけ言い、周囲の喧騒をシャットアウトするように玲の隣に陣取った。

そこへ、白衣の裾を翻しながら、科学部のたちきが登場した。

「……君たち、この部屋の二酸化炭素濃度が異常値を示している。運動前の過度な興奮は、明日のパフォーマンスを論理的に低下させるぞ」

樹はそう言いながら、ドンッ!と分厚いバインダーと、怪しげな青い液体が入ったビーカーを調理台に置いた。

「なんだそれ、樹?」とコガケンがスイカの種を吹き出しながら尋ねる。

「僕が徹夜で分析した、対戦校の全プレイヤーのシュート軌道と癖のデータだ。それと、この液体は細胞の浸透圧を完璧に計算した特製アイソトニック飲料……」

「飲むなよ江頭、明日腹を下すぞ」迅がスイカを食べながらボソリと警告しする。

「……ああ、遠慮しておく」江頭が真顔で頷いた。

「失礼な! これは完璧な計算の結晶だ!」と憤慨する樹をよそに、一頼はバインダーをめくり、「すごい……! これなら相手のセンターの動き、読めますよ!」と目を輝かせていた。

「へへっ、樹先輩の頭脳と俺の視覚データがあれば、明日は無敗っすね!」と野瀬もカメラを構える。


その時、校内放送のスピーカーから「ピンポンパンポーン♪」とチャイムが鳴り響いた。

『——下校時刻を過ぎましたが、碧翔学園の生徒に告ぐ。いや、明日のコートに立つ、すべての戦士たちに告ぐ』

スピーカーから流れてきたのは、まるで深夜のFMラジオのDJのような、異常に渋くて甘いいい声。放送委員長である稲城いなぎの声だった。

『お前らが流してきた汗は、俺が放送室からずっと見ていた。……明日は、最高の舞台で、最高に暴れてこい。碧翔学園バスケットボール部、健闘を祈る』

静まり返る家庭科室。

直後、女子部員数名が「きゃあああ! 稲城くんの声、すてきすぎる!!」「録音したい!!」と黄色い悲鳴を上げた。

「くっそ、稲城のやつ、あんな美味しいとこ持ってきやがって!」コガケンが悔しそうに笑い、「よしお前ら、放送委員長様のエールももらったことだし、円陣組むぞ!」と叫ぶ。

家庭科室の真ん中で、男子も女子も入り乱れての大きな円陣。

その眩しすぎる光景を、雅は「青春だ……」と目をキラキラさせながら見つめていた。


決起集会が終わり、夕日が差し込む渡り廊下。

明日の勝利を誓い合った部員たちが散っていく中、二組の男女だけが静かに言葉を交わしてしていた。

「……立夏。明日、僕たち絶対に勝つから」

一頼が左胸に手を当て、真っ直ぐな瞳で告げる。

「当たり前よ。女子も絶対に優勝するんだから」

立夏が同じポーズをとって微笑むと、一頼は耳まで真っ赤にして「はいっ!」と強く頷いた。


そして、少し離れた手洗い場の影では。

「……迅くん、スイカ、美味しかった?」

「ああ。……だが、明日の試合が終わったら、もっと甘いものを貰う約束だったな」

迅が玲を壁際に追い詰めるようにして、その細い腕をそっと握った。

「優勝したら、俺のしたい『いろいろなこと』も、聞いてくれるんだろう?」

「……うん。だから、絶対に怪我しないでね、迅くん」

玲が上目遣いで頷くと、迅は抑えきれない熱を冷ますように、彼女の額と自分の額をくっつけた。

1996年、夏。
スイカの匂いと、いい声のエール、そしてそれぞれの胸に秘めた「約束」。
彼らの中学生最後の熱い夏が、いよいよ幕を開けようとしていた。



【今回のおまけ】

野瀬「はい! というわけでね、やっと中体連です。ちょっと7月長かったよね」

稲城「いろいろあったからねぇ」

野瀬「今回は絵作り結構大変だったらしいんだけど……」

野瀬「面白いのはこの辺りかな。名前のないバスケ部員の主張が激しすぎるやつ」

稲城「坊主の女性とすっごくちっさい子……確かにキャラが立ち過ぎてる……!」

野瀬「名前つけてサブキャラにするしかなくなるよね」


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