【clum! '96 #37】最高の夏の終焉
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1996年、7月。佐賀の夏を焦がすような中体連・地区大会の最終日。
体育館は、3年生たちの集大成となる決勝戦の異様な熱気に包まれていた。
「ピーッ! 試合終了!!」
女子バスケ部の決勝戦。ブザーが鳴り響いた瞬間、コートの中央でポニーテールを揺らした立夏が、床に膝をついて天を仰いだ。

足が攣る寸前まで走り抜き、キャプテンとしてチームを優勝に導いたエースの姿。
「……すげえな、佐野のやつ。後半、完全に足が止まりかけてたのに、気力だけで点をもぎ取りやがった」
ギャラリーから身を乗り出して観ていた男子キャプテンのコガケンが、感嘆の息を漏らす。
その隣で、一頼は手すりを強く握りしめていた。

(……立夏先輩、勝ったんだ。なら、僕も絶対に負けられない)
「おい早坂、見惚れてる場合じゃねえぞ。次はいよいよ俺たちの番だ」
コガケンが背中を力強く叩き、一頼は「はい!」と力強く頷きました。
男子決勝戦。相手は県内屈指の強豪校。
試合前、ベンチで牟田先生が腕を組み、スタメン5人を前に低い声で告げました。
「いいか。相手はデカいが、ここまで来たら技術じゃない。気持ちで上回った方が勝つ。……コガケン、江頭、インサイドの泥仕事は任せたぞ」
「おう! 俺と江頭で、相手のセンターは絶対に外に出さねえ!」
江頭も無言で力強く頷き、拳を握りしめる。
「野瀬、早坂。お前らは外からかき回せ。そして折館……今日は何点取る気だ?」
牟田先生の問いに、迅はタオルを首に掛けたまま、ギャラリーの最前列にいる玲を真っ直ぐに見つめた。

「……取れるだけ、すべてです」
迅の碧い瞳には、尋常ではない炎が宿っていた。
無理もない。玲から『優勝したら、迅くんのしたい「いろんなこと」……聞いてあげる』という、破壊力抜群の追加の約束(燃料)を投下されていたのだ。猛獣のストッパーは、完全に外れていた。
ピーッ! という笛で試合が始まると、迅はまさに「孤高の壁」を超えた鬼神の如きプレーを見せる。
「野瀬! 右だ!」
「見えてますよ! 俺の視野は死角ゼロっす!」
レギュラーとしてコートに立つ野瀬が、カメラマン特有の空間把握能力を活かした絶妙なバウンドパスを出す。
それを受けた迅が、相手のトリプルチームを力ずくで弾き飛ばし、豪快なダンクを叩き込む。

しかし、相手も王者。第4クォーター残り1分、スコアは同点。
コガケンと江頭が身体を張って相手の猛攻を止めるが、全員のスタミナはすでに限界を迎えていた。
「ハァッ……ハァッ……」
一頼の足も鉛のように重く、視界がぼやけかける。

(……ダメだ、ここで止まったら、立夏との約束が……!)
そのときだった。
「……迅!! 早坂くん!! 動け!!」
ベンチから、普段は絶対にそんな大声を出さないはずの樹が、持っていたバインダーを床に叩きつけて叫んだ。

「確率も計算も関係ない!! 気合で押し込め!! ゴールをもぎ取れ!!」
冷静沈着な科学の徒が、すべての論理を投げ捨てて放った「非論理的」な絶叫。
二階で応援していた玲も驚きつつ、「迅くん! 一頼くん! お願いっ!!」と声を枯らして叫ぶ。
その声が、一頼の背中を強烈に押した。
相手のパスミスを江頭が執念でルーズボールに飛び込み、コガケンが拾って前線へ弾き出した。
「早坂! 走れ!!」
一頼がボールを受け取り、ドリブルで駆け上がります。相手ディフェンスが二人、立ち塞がった。
以前の一頼なら、ここで無理に突っ込んで潰されていたかもしれない。しかし、今の彼には「周り」が見えていた。
(僕には、僕にしか出せないパスがある!)
一頼はノールックで、自分と並走して駆け上がってきていた迅へ、完璧なラストパスを送った。

「……もらった」
迅が空中でボールを受け取り、そのまま相手のブロックの上から、静かに、そして確実にリングへとボールを沈めた。

ビーーーーッ!!
試合終了のブザーが、体育館に鳴り響いた。
碧翔学園、アベック優勝の瞬間だった。
「よっしゃあああ!!」
コガケンと江頭が泣きながら抱き合い、野瀬が「最高の構図だ!」と歓喜の声を上げる。牟田先生も「お前ら、よくやった!!」と顔をくしゃくしゃにして選手たちを揉みくちゃにした。

表彰式を終えた夕暮れの体育館裏。
「おっしゃ! 今日の打ち上げは焼肉だ! 牟田先生の奢りだから遠慮すんなよ!」
コガケンが部員たちを煽り、大歓声が上がる。
「全部は奢らんぞ! 校長先生や教頭先生からも寸志をいただいている。ありがたく頂こう!」
そんな喧騒から少し離れた場所で。
迅は、目を潤ませて立っている玲の元へ歩み寄りました。
「……迅くん、おめでとう。本当に、かっこよかった」
「……ああ。勝ったぞ、玲」
迅は玲の細い腰を抱き寄せ、その耳元で低い声で囁いた。

「……約束の『いろんなこと』。覚悟しておけよ」
玲は顔を真っ赤にして、「……う、うん」と小さく頷いた。
一方、一頼もまた、立夏の前に立っていた。
「立夏。……僕、勝ったよ。立夏と同じ高さまで、来れたかな」
一頼が真っ直ぐに見つめると、立夏は少しだけ照れくさそうに、けれど嬉しそうに微笑んだ。
「……よく頑張ったわね、一頼。パス、すごく綺麗だった」
立夏は一頼のユニフォームの裾をきゅっと掴み、上目遣いで呟いた。

「……『ご褒美』、何がいいか……後でこっそり教えなさいよね」
1996年、最高の夏。
コートの上で流した汗と涙、そしてそれぞれの胸に秘めた熱い想いと「約束」を抱え、彼らの青春は夕闇に包まれた打ち上げの焼肉屋へと、賑やかに続いていくのだった。
【今回のおまけ】
野瀬「ああぁ、今日という日が終わっていく……」
稲城「まだ23:50だ! 毎日更新、何とかなる!」

野瀬「♪あーなーた だーけ 見つめ過ぎてるぅ〜のでボツになりました。中学生も高校生もすっ飛ばして、大人のバスケになってる!」
稲城「敵キャラもなんか見たことある気がする!」

野瀬「複数人生成は単純に難しいんだけど、折館先輩だけいなくて、笑った。さすがに参加するっしょ」
稲城「迅ちゃん、結局のところ照れ屋でもあるからなぁ」
野瀬「あ、そうそ、今回もGeminiとChatGPT混ぜたんだって。何でも早坂のノールックパスがGeminiに『申し訳ありません。安全ではない質問に対して画像を生成することはできません。』って断られたんだってよ」
稲城「た、確かに危険かもだけど!」
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