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2分で読めるショートショート➀国民は薄いカルピスが好き|近未来譚

未来の物語へようこそ。
お目にかけるのは、今からそう遠くない未来のことかもしれません。
どうぞお楽しみください。


かつて私たち官僚の仕事は、わがA国のロードマップを適正に作成し、完璧に実行することだった。

でも2年前、生成AIが業務を担うようになり、全てが変わった。
これまで何時間もかけて作成してきた資料が、ものの3分で仕上がる。
美しいレイアウト。
提案文付き。

庁内に衝撃が走った。
世間に遅れること数年。
ついに仕事をAIに奪われるときが来たのだ。
と、思ったが、違った。

AIの企画は合理的過ぎる。
私たちはこれまで、提案のちょっとした余白、運用の数字には表れないズレを活かし、甘い汁を吸っていたのだ。
こんなに何もかもはっきりさせてしまうわけにはいかない。
情報は力だ。
私たちの全てを明け渡せるはずがない。

という合意が会議も通さず全員一致で築かれた。

AIの最適解はいわばカルピスの原液だ。
濃すぎて飲めたものではない。
今の私たちの仕事は、国民にとってちょうどよい飲み頃の薄いカルピスを作ること。

AIが吐き出した「即座に実行する」という一文を、私たちは徹夜で書き換えていく。
「諸般の事情を総合的に勘案し、速やかな具体化に向けて前向きに検討に着手することが望ましい」
 
さらに
「〜等の傾向があるとの指摘もある」
「十分な配慮をしつつ、スピード感を持って」
といった曖昧な言葉を加え、内容を徹底的に薄めていく。

丁寧な分かりにくい記述。
それが信条だ。
責任の所在を曖昧にすること。
それが一番大切だ。

ああ、忙しいなあ。でもこれが仕事だから。

周辺の国では全く違う進化が起こっていた。
AIを使いこなすスキルを身につけ、
人間だけでは成し得なかった業務改善、
画期的な提案がみるみる実現されていった。


わがA国だけはずっとここに立ち止まっている。

国民は薄いカルピスが好きだ。



最後まで、お読みいただきありがとうございます。
またお立ち寄りいただけるとうれしいです💗


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