「早口になるの気持ち悪いよな」─魔物オタクのリーダーが導く冒険譚(2/2) | ダンジョン飯
アニメ『ダンジョン飯』を見て私が最初に惹かれた要素は、主人公ライオスのオタク性である。
彼が率いる冒険者パーティーは倒した魔物たちを食べて、文字通り自分たちの血肉に変えながらダンジョン攻略を進めていく。
ライオスは魔物の生態に異常に詳しく、初見の魔物に出会うと目を輝かせて喜び、倒した魔物を食べるときには明らかに高揚している。
そう。
パーティーを率いるリーダーである戦士ライオスは、魔物オタクなのだ。
これについては前回書いているので、以下をご一読いただきたい。
そして彼のオタク性は、魔物と戦う際の武器となる。
剣を使って正面から切りかかるだけではなく、身体的特徴や動きをつぶさに観察し、臨機応変に戦い方を変えるのだ。
S1E3『動く鎧』では、ライオスのオタク性が強力なスキルとして発揮されている。
ライオス一行はダンジョン内で、大勢の「動く鎧」たちと戦うことになる。
「動く鎧」とは、魔術師が鎧を操り、戦わせている魔物だ。
鎧自体はただの無機物で、目や耳がなく、本能や意思もない。
魔術師を倒すことで、「動く鎧」も倒すことができる。
……と、思われていた。
しかしライオスは、当初から違和感を持っていた。
「動く鎧」は頭を動かし、ライオスたちの動きを追おうとする。
剣で頭を落とされても、その頭を探し、正面を向けて付け直す。
彼らには、見えているのではないか。
彼らは生きていて、意思を持っているのではないか。
そう問いながら、ライオスは「動く鎧」をつぶさに観察する。
そして、ある点に注目する。
「動く鎧」が、本来は身を守るために使うはずの盾をかばうように動き、戦っていたのだ。
なんで今、盾をかばった?
戦いの中で、やがて彼は発見する。
その盾の裏に、卵が産み付けられていることを。
「動く鎧」は生きていて、防衛本能で戦っているのだ、と理解する。
結果的にライオスは、「動く鎧」が卵を守ろうとする隙をついて、この戦いに勝つ。
彼のオタク性が、魔物を理解したいという観察眼が、彼を勝利へと導いたのだ。
ライオスは倒れた鎧を分解し、産卵によって生まれる貝のような魔物が鎧の中にいるのを見つける。
一つ一つは小さく脆弱な魔物が繋がり、鎧の骨格を利用することで、人体のような動きをしていたのだ。
正直、かなり気持ちの悪い形状である。
ライオスの説明を聞いたエルフのマルシルは、「産卵」の言葉に拒否感を露わにする。
「産卵? 卵で生まれるの、こいつら?!」と、ライオスに問い返す。
するとライオスは、目を爛々と輝かせ、早口で以下のようにまくしたてる。
そう! 彼らは卵で生まれるんだよ。
今まで、誰も気づかなかったんだ。
みんな、魔術で動くただの鎧だと思い込んでいた。
このことを発表したら、業界は震撼するだろう。
興奮して熱弁をふるうライオスは、気がつかない。
そんな彼を見るパーティーメンバーのチルチャックとマルシルが、ドン引きしていることに。
「あいつ、魔物の話になると早口になるの気持ち悪いよな」
とチルチャックが言う。
「しっ。よしなよ」
と、マルシルがたしなめる。
「動く鎧」を倒し、食料にできたことはライオスの手柄だったが、誰もそれを褒めることはしなかった。
パーティーメンバーを率いて魔物を倒し、食料を調達しても、オタク特有の早口語りで仲間に引かれるリーダー。
『ダンジョン飯』の主人公ライオスは、そんな愛すべきキャラクターだ。
🪄
本コラムをおもしろいと思っていただけた方には、以下もオススメです。


