「フランメとは最後までわかり合えなかった」|葬送のフリーレン
アニメ『葬送のフリーレン』に描かれる相互理解というテーマについては、すでに8本書いている(こちらのマガジンにまとめています)。
このテーマをさらに掘り下げるために、もう一人触れておきたい人物がいる。
大魔法使いゼーリエだ。
民主的なフリーレンと専制的なゼーリエは、思想面ではほぼ正反対の位置にいる。
そしてこの2人は、他者との相互理解においても対照的に描かれているように思う。
過去の記事で、フリーレンの「だらしのなさ」は彼女のキャラクターを親しみやすくするだけでなく、仲間たちと凸凹を埋め合い、支え合うという相互理解の機会を作っている、と書いた。
もしフリーレンが誰からの手助けも不要な隙のないエルフであったなら、誰からも理解されない孤高のキャラクターになっていただろう、とも。
(「すごく、だらしがない人なのでしょうか」)
そうした「孤高のキャラクター」を体現しているのが、ゼーリエだ。
ゼーリエは、人類最強の魔力を持つと人々から言われている。
さらに魔法使いを階級別に「認定」する唯一無二の権威、大陸魔法協会のトップに君臨している。
つまり、孤高の権力者である。
そしてゼーリエは、圧倒的に孤独だ。
彼女の、誰かと「わかりあいたい」という思いは、さまざまな場面で彼女の言葉の端々から感じとることができる。
たとえば、S1E25『致命的な隙』の回想シーンだ。
ゼーリエの弟子であり、フリーレンの師匠であるフランメの死後、フリーレンが彼女の遺言状をゼーリエに渡しにくる場面だ。
「まるで報告書」のような遺言状には、以下のような内容が記されていた。
フランメの働きにより、
国は人間が魔法を研究することを認可したこと。
その後フランメは、
新設された宮廷魔法使いの教育に携わっていたこと。
自分の死後は、
ゼーリエにこの役割を引き継いでほしい、とフランメは書いていた。
ゼーリエはこの遺言状を破り捨て、フリーレンに、以下のように言う。
帰れ、フリーレン。
こんな遺言は到底聞き入れられん。
実に不愉快だ。
ゼーリエは、魔法は特別なものであり、才ある者にしか教えたくない、と考えている(「魔法は特別であるべきだ」)。
フランメが目指した「誰もが魔法を使える時代」は、ゼーリエが望むところではない。
ゼーリエは視線とともに声のトーンを落とし、こう続ける。
こんなものをよこすとは。
フランメとは最後までわかり合えなかった。
しょせんは、気まぐれで育てた弟子だ。
ここだ。
ゼーリエの孤独な本心が覗き、私の胃がキュッと反応する。
別のシーンでも、ゼーリエはフランメや別の人間の弟子のことを「気まぐれで育てた弟子」と呼んでいる。
しかし「最後までわかり合えなかった」という言葉が意味するところは、「わかってほしかった」ということに他ならない。
「最後までわかり合えなかった」と言う時の、ゼーリエの声や表情から伝わる孤独の描写が、とても秀逸だ。
そしてこのあとフリーレンが返すセリフが、「帰れ」と言っていたゼーリエの心を変える。
長くなってしまうので、続きは次回に書こうと思う。
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