「私のために、必死に考えてくれたんですね」|葬送のフリーレン
アニメ『葬送のフリーレン』における人間同士の相互理解の描き方が、私は好きだ。
エルフであるフリーレンは、「人間の気持ちがわからない」という設定になっているけれど、彼女に人を思いやる感情が「ない」わけではない。
フリーレンはとても、優しい。
彼女の心は常に開き、吸収し、簡単に「わかった」と結論づけて相互理解の扉を閉じることはない。
私たち人間が学べることが、とても多いのではないか、と思っている。
そのような世界観で繰り返し出てくるのが、人との関係において、相手のことを「わからないからこそ、わかろうとする姿勢が大事だ」というメッセージだ。
フェルンはかつて、自分の誕生日に蝶々の髪飾りをプレゼントしてくれたフリーレンに、こう伝えた。
あなたが私を知ろうとしてくれたことが、
たまらなくうれしいのです。
シュタルクは、フリーレンが必死でフェルンについて理解しようとしていることに言及して、こう言った。
だからさ、わかろうとするのが大事だと思うんだよ。
フリーレンは、頑張っていると思うぜ。
ハイターは亡くなる前、フェルンに対して、フリーレンについてこのように話した。
「フリーレンは、感情や感性に乏しい。」
「その分だけ、きっとフリーレンはあなたのために、思い悩んでくれる。」
「彼女以上の師は、なかなかいませんよ。」
* * *
この「知ろうとする」「わかろうとする」連鎖は、時を超えて、物語のいろんな場面に登場する。
S2E32『誰かの故郷』では、シュタルクとフェルンが初めてデートをする。
シュタルクは、フェルンが好きそうな場所を事前にフリーレンに聞き、下見をしていた。
デート当日、シュタルクとフェルンのふたりは、市場、屋台、アクセサリーショップなどをめぐり、最後に街を見渡すことができる展望広場へ行く。
フェルンが「好きそうな」場所は網羅したものの、フェルンはあまり楽しそうではなかった。
「シュタルク様らしくなかった」と、フェルンは言った。
そんなフェルンに、シュタルクがこう打ち明ける。
ごめん、フェルン。
実は、フリーレンに選んでもらったんだ。
どうしても、フェルンに喜んでほしかったんだ。
せっかくの、デートだから。
この言葉を聞いて初めて、フェルンの表情がゆるむ。
とても、うれしいです。
私のために、必死に考えてくれたんですね。
これはS1E3『人を殺す魔法』で、フェルンが髪飾りをもらったときにフリーレンに言った「私を知ろうとしてくれたことが、たまらなくうれしい」と、ほぼ同じ意味の言葉だ。
「わかろうとするのが大事だ」と言っていたシュタルク自身が、フリーレンに聞くことで、フェルンを知ろうとした。
かつてフリーレンが、ハイターに聞いたのと同じように。
人は、自分以外の人のことを完全に「わかる」ことはできない。
だからこそこうして、相手のことを「知りたい」「わかりたい」という思いを繋いでいくことが重要なのではないだろうか。
やはり私は、『葬送のフリーレン』に描かれる相互理解のありかたが、とても好きだ。
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