【バリ島旅行記 第1話】波乱の幕開け?妻の先発隊と、深夜の空港サバイバー
旅の始まりは、いつだって俺のワガママからスタートする。
俺と妻(よもぎ)は、お互い休みが取りやすい環境だったこともあり、年に一度、約2週間の長期海外旅行に繰り出すのを恒例行事にしていた。
「バリ島のウブドに行ってさ、あの本場の伝統舞踊ってやつをゆっくり見てみたいんだよね」 俺がリビングでコーヒーを飲みながらそう呟くと、妻のよもぎはスマホを片手に「ふむふむ」と頷いた。
彼女は会社の同僚から仕入れたばかりの強力な情報を持っていたのだ。 「バリ島に行くなら、『ギリ島』ってところが絶対にいいらしいよ。私もそこに行ってみたい!」
ウブドの伝統舞踊と、未知の島ギリ島。二人の希望をすり合わせた結果、今回の旅は「10泊11日」という、なかなか贅沢なロングバケーションに決定した。 目的地が決まれば、そこからのよもぎの行動力は凄まじい。いつものように航空券からホテルまで、ありとあらゆるサイトを比較し、最安値ルートを的確に叩き出していく。俺はただ、その見事な手腕を隣で褒め称えるだけだ。
航空券は1人片道約22,000円
羽田空港→クアラルンプール空港→デンパサール空港というルート
羽田からこの値段は安い!
ホテルは飛行機に乗った後に予約するスタイル。なぜなら飛行機が遅延するかもしれない。あとでキャンセルして予約サイトとやり取りするのも大変なため、我が家はいつもそのスタイルです。
しかし今回、俺の仕事の休みの都合上、ちょっとしたイレギュラーが発生した。よもぎは、俺よりも「2日早く」バリ島へ向かうことになったのだ。 先発隊となるよもぎには、重要なミッションが託されていた。それは、現地に到着してから「ギリ島へ行くための情報収集と、船のチケットをゲットする」というものだ。
出発の日が近づくにつれ、よもぎの顔に明らかな疲労と焦りが見え始めた。
英語がまったく話せないからなのだろうか?
ギリ島への手配が不安なのだろうか?
いや、違った。 「……本当に大丈夫? 出る時、ちゃんと窓の鍵閉められる? ガスは? ゴミは捨て大丈夫?」 心配性の彼女が何より恐れていたのは、ギリ島のチケット手配でも言葉の壁でもなく、「大雑把な性格の俺が、最後に家を出て鍵を閉める」という事実そのものだった。 「小学生の留守番じゃないんだから大丈夫だって!」と笑って送り出したが、よもぎは最後まで後ろ髪を引かれるような、いや、時限爆弾を家に置いていくような悲壮な顔で空港へと向かっていった。
よもぎを見送った2日後、よもぎの作ったチェックリストを見ながら、最後のゴミを出し、最後に家の鍵を閉め(ガスも完璧に確認した)、俺もいよいよバリ島へと飛び立った。
俺のフライトは、マレーシアを経由するLCC(格安航空会社)エアアジアだ。
乗ってみたら大型機でなんとモニターや電源もあった。ラッキーなことに隣の人も来なくてストレスなく旅行がスタートした。

乗り継ぎの都合上、マレーシアの空港の制限エリア内で一晩を明かすことになっていた。 普通なら「トランジットで空港泊なんて最悪だ、疲れる」と文句の一つも出るところだろう。だが、実は俺こういうのが嫌いじゃないのだ。むしろ楽しい。


深夜の空港というのは、昼間の喧騒が嘘のように静まり返り、どこか非日常的な空気が漂っている。バックパックを枕にしてベンチで丸くなるバックパッカーたち。清掃用具のモーター音。煌々と光り続ける免税店の看板。 免税店エリアをあてもなく探索し、行き交う多国籍な人々をただぼんやりと眺めているだけで、不思議とテンションが上がってくる。
「ああ、俺は今、旅をしているんだ」という実感が、深夜の冷たいエアコンの風と共に身体中に染み渡っていく。 硬いベンチで身体はバキバキになったが、それすらも旅のスパイスだ。空港の夜を満喫した俺は、いざ、よもぎの待つ、インドネシアのバリ島へと向かった。

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