【Review】永遠のソール・ライター|僕の写真の原点であり、至高の一冊
初めて買った写真集は、
『永遠のソール・ライター』だった。
ミニマリストとして、
所有物を増やすにはそれなりの覚悟が必要だ。
312ページ。
分厚い。
サイズはそれほどでもないけど、やっぱり重い。
でも、手放すことはなかった。
不思議と何度も手に取ってしまう本だからだ。
そして、この一冊をきっかけに
僕は一気にソール・ライターのファンになった。
そのあと
『まだ見ぬソール・ライター』
『ソール・ライターのすべて』
も揃えた。
でも結局、戻るのは最初の一冊だ。
迷子になったときは
いつもこの写真集。
今回はその理由を
少しだけ深堀してみよう。
写真が迷子だった頃
2025年。
僕は、とにかく写真迷子だった。
自分の写真が
どこへ向かっているのか
わからなくなったのだ。
撮ってはいる。
でも、何というか、芯がない。
色も構図も、
まぁ、それなりに整っている。
なのに、どこか借り物のような気がしてしまう。
その頃の僕は、答えを探すように、
写真関連の本を読み漁っていた。
写真集もたくさん眺めた。
自分で購入したものもあれば、
図書館で借りたものもある。
同時役に立った本はこちらにまとめてるので、興味のある方はどうぞ。
色々と読み漁ったけど、
特に開くのはソール・ライターの写真集。
しかも熟読するわけじゃない。
パラパラとページをめくるだけ。

もちろん、
それで答えが見つかるわけじゃない。
それでも、
気づけば何度も開いていた。
そして最近になって
ようやくわかった。
なぜ僕は
この写真集ばかり眺めていたのか。
「こんな写真が撮りたい」のど真ん中
最初、
僕はライターの色に惹かれているのだと思っていた。
フィルムで描かれた、湿度を含んだ赤や青。
雨越しの光や、雪に滲む街。
でも、違った。
僕が惹かれていたのは、実は色ではなかった。
三次元の世界を
二次元のグラフィックへ変換する力。
そっちの方だった。
写真には2つの方向がある
表現を担う写真には、
大きく分けて2つの方向があると思う。
ひとつは空間写真。
三次元の奥行きを
そのまま切り出す写真。
もうひとつは平面写真。
世界をグラフィックのように
整理して切り出す写真。
ライターの写真は、
そのどちらでもある。
大胆に遮られ
大胆に切り取られ
大胆に整理されている。
二次元の中に、
三次元の空気が残っている。

奥行きを削ぎ落としながら
湿度だけは消さない。
この矛盾。
これが、
僕のど真ん中だった。
三次元と二次元のあいだ
写真は本来
三次元の世界を写すものだ。
奥行き
距離
空気
その場に立っているような臨場感。
でも僕は、
どこかで「平面」に憧れている。
壁のライン。
傘のシルエット。
窓越しの色面。
世界を記号のように整理すること。
それでいて、
感情だけは消さないこと。
ソール・ライターは
それをやっている。
だから僕は
何度もこの写真集を開いてしまう。
そこに
憧れた表現の世界があるから。
真似したいわけじゃない
誤解を恐れずに言うなら、
僕はライターの写真の見た目を真似したいわけじゃない。
色味を寄せたいわけでもないし、あの、しっとり濡れる感じを再現したいわけでもない。
僕が憧れているのは世界の切り取り方の方だ。
三次元を濃縮して、
高密度の二次元へ変換する。
その翻訳の仕方だ。
それができる人になりたい。


なぜ、この写真集なのか
『永遠のソール・ライター』は、
僕にとって教科書ではない。
ましてや、写真の苦悩を解決する処方箋でもない。
迷いの中で、ただ静かに隣に置いておく本って感じ。
パラパラとめくるだけで、
自分が何に惹かれているのかを思い出させてくれる。
それだけで十分なんだ。
あの頃は、
この写真集ばかり眺めていた理由を
うまく説明できなかった。
でも今なら言葉にできる。
僕は三次元を二次元に変換する、
その態度に惹かれている。
だからソール・ライターが好きなのだ。
色でもない。
フィルムでもない。
その翻訳力を
僕は追いかけ続けるのだと思う。

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