【旅#5@東京】“荻窪散歩” 神保町/荻窪駅/野方餃子/荻窪白山神社
歯医者のついでに荻窪へ
以前、東京に住んでいた頃に始めた歯列矯正。
矯正完了後の保定装置(リテーナー)を
まさかの1週間で壊し、
せっかく整った歯並びを維持できず、
そのまま通院もフェードアウトしてしまった。
ただ、
まだ矯正をやり直せる期間が残っているらしい。
というわけで、神保町の歯医者へ。

とはいえ、診察時間は30分もかからない。
さすがにそれだけのために
東京へ行って帰るのはもったいない。
しかし僕は、
「あの観光地に行きたい!」というタイプではない。
遠出の理由はだいたい人である。
そこで大学時代の先輩に連絡し、
荻窪へ向かうことにした。
こういう時、
独身の先輩という存在は妙に頼もしい。
「今から行っていいですか?」
が成立する人材は貴重だ。

東京には住んでいたものの、
西側エリアには意外と縁がなかった。
行っても高円寺くらいだろうか。
しかも高円寺で何をしたのかと聞かれると、
特に何も思い出せない。
そんな僕にとって荻窪は初上陸だった。
そして結論から言うと、
かなり良かった。
何が良かったのかと聞かれると少し困るのだけれど、
街のサイズ感がちょうどいい。
思った以上に栄えているのに、
どこか落ち着いている。
駅前はちゃんと賑やかで、お店も多い。
でも少し歩くと住宅街になり、
空気が静かになる。
雨の日だったこともあるのか、
街全体にほどよい余白があった。
「ここ、住みやすそうだな」
西新宿勤務だった時代なら
普通に住む選択肢に入っていたかもしれない。

昼食は、ほぼノーリサーチで入った
「野方餃子 荻窪別館」。

こういう適当な店選びはたいてい失敗するのだが、
この日は当たりだった。
店内は落ち着いていて居心地がよく、
餃子もおいしい。
それ以上に印象に残ったのが
店員さんの接客だった。
定食を食べ終えると、
締めにハーブティーを出してくれた。
餃子のあとに温かいお茶。
たったそれだけなのに、妙に嬉しい。
しかも餃子6個定食なら1,000円以下。
今どき東京で、
この雰囲気と満足感はかなり優秀だと思う。

その後、在宅勤務中の先輩の家へ向かう。
駅から10分ちょっと。
歩いているだけで気になる店が次々と現れる。
こういう街は強い。
住んでいて飽きない。
そしてなんとなく治安も良さそう。
そんなことを考えながら先輩宅のマンションへ到着した。
……はずだった。
表札を見る。
四人家族の名前。
「え?」
先輩は独身のはずである。
いや、もしかして結婚していた?
しかも子ども二人?
僕だけ知らなかった?
動揺しながら階段を上ると、
廊下にはファミリー感あふれる洗濯物が並んでいる。
完全に四人暮らしである。
人生何があるか分からない。
そう思いながらインターホンを押した。
反応なし。
先輩にLINEする。
「着きました」
すると返信。
「え?来てないよね?」
インターホンも鳴っていないらしい。
そんなことある?
と思いながら住所を見直した結果――
同じ荻窪にある、同じ名前のマンションだった。
僕は全く別の建物のインターホンを
堂々と押していたのである。

気を取り直して正しい住所へ向かう。
すると道中、
静かな住宅街の中に突然、
大きな木々が現れた。
そこにあったのが、荻窪白山神社。
神社そのものも良かったのだけれど、
何より印象的だったのは境内の大木だった。
街の中に突然現れる緑の塊。
静かなのに存在感がある。
思わず足を止めて見上げてしまう。
こういう偶然の出会いに、僕はいつも弱い。
何かを目指して来たわけではないのに、気づけばその日のハイライトになっている。
観光名所というほどではないかもしれない。
でも僕の中では、
しっかり「荻窪の好きな場所」に登録された。


寄り道を終え、ようやく本物の先輩宅へ到着。
部屋はなんというか、
実に東京一人暮らしらしかった。
少しサブカル感があって、
でも居心地がいい。
物も多すぎず少なすぎず、
人柄がそのまま部屋になったような空間だった。
歯医者のついでに来ただけだったのに、
餃子を食べて、
知らないマンションを訪問し、
神社で足を止めて、
最後は先輩の家でくつろぐ。
予定通りだったことはほとんどない。
でも、そういう日のほうが案外よく覚えている。
今日はここで、ゆっくりさせてもらおうと思う。

