剣は身体の一部になるのか?ー 憧れの剣と女性
中学生の頃、不思議な光景を見ていた。
夜、犬の散歩をしていると、
近所の路上で、
毎晩のように太極剣を舞っている女性がいたのである。
子供心に、
「かっこいい」
と思った。
当時は京劇の様に非常に速い動きに思えた。
いや、
剣が空気を切っているように感じたので
そう思った
おそらくは軽やかに太極剣を
舞っていたのではないかと思う。
それだけではない、
その女性は母親に近い歳だったにもかかわらず、
非常にかっこよく見えた。
なんというか、
憧れていたのである。
そして、
「いつかやってみたい」
とも思った。
その記憶は、
心の彼方に僅かな記憶として残った。
それから何十年も経った。
私は太極拳を始めた。
最初は形を覚えるだけだった。
続けているうちに、
身体を動かす気持ちよさや、
流れるように動けた時の不思議な感覚が、
分かるようになってきた。
そして、ある頃から思うようになった。
「次は太極剣をやってみたい」
子供の頃から、
チャンバラや武器が好きだったことも影響してるだろう。
そして、あの女性のことも。
息子にチャンバラを強要されて
無理やり思い出さされた、とうこともある。
まさか、
息子が、何かの力で
私の記憶を呼び起こしたのか?
まぁ、その話は置いておこう。
本当は、
最初から剣をやりたかった。
だが、
おそらく太極拳が土台なのだと思っていた。
だから、
まずは太極拳。
太極剣は、その先。
そんな感覚だった。
まずは剣を買った。
Amazonで見つけた、
1000円くらいの伸縮式の剣である。

本当は、
もっと高価でかっこいい剣が欲しかった。
見比べても、
そこまで大きな違いが分からない。
結局、
一番安いものを選んだ。
そして私は、
その伸縮剣を持ってドイツ出張へ向かった。
いつもの田舎のホテル。
設備は普通だが、
なぜか部屋だけは広い。
ベッド以外に、
かなり大きな空きスペースがあった。
私はそこで、
剣を持って立ってみた。
以前から、
ひとつ気になっていたことがある。
「剣は、身体の一部になるのだろうか」
だから最初にやったのは、
型の練習ではなかった。
ただ静かに、
剣を持って立つことだった。
太極拳の起勢の姿勢を取り、
剣を身体の正面に構える。
そして、
じっと静止した。
剣を感じようとした。
5分ほど経った頃だった。
眉間が反応した。
「そこに何かがある」
そんな感覚がした。
身体と剣が、
一瞬だけ繋がったような感覚。
「おおー、感じるぞ」
なんだか感動してしまった。
そして、
剣をゆっくり動かしてみた。
だが、
剣が身体の中心から離れた瞬間、
その感覚は消えてしまった。
理由は分からない。
気のせいだったのかもしれない。
それでも、
確かに何かを感じた。
最初だから、
それでいいと思った。
そして私は、
32式太極剣の練習を始めることにした。
(つづく)
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