【恋愛小説】RØM3Ø & JUL13T (6)
キャピュレット邸の広間では楽師たちが演奏しており、客人たちは、踊り、会話を楽しみ、食事に舌鼓を打つなどしていた。
賑やかな音楽の一方、給仕たちは散らかった食器を片付ける。
「給仕はもう一人いたはずだ。ヤツはどこへ行ったんだ? なんでいないんだ。片付けが終わらないじゃないか……。」
給仕がぼやきながら食器を片付ける。
「一人や二人では片付けが間に合わない。」
もう一人の給仕がぼやきながらテーブルを拭く。
「折り畳み椅子を向こうへ、膳棚も片付けて。よし、その皿も頼んだ。おいおい、そこのお菓子の皿も片づけてくれ。……誰か手の空いているものはいないのか。」
給仕が慌ただしく動き回る。
キャピュレット卿を先頭に、ジュリエットとその一族の者多数が奥から広間に入る。
ロミオ一行も広間に入る。
「ようこそ皆さん!ご婦人方がダンスのお誘いを待っておられますよ。」
キャピュレット卿がロミオ一行に近づいて話しかける。
「ご婦人方、ダンスを楽しんでおられますか?なるほど、きっと脚部関節がすり減って踊れないんですね。えっ、違う?それならば、どうぞダンスを楽しんでください。」
会話を楽しんでいる女性モデルたちにダンスをするように促す。
「私も仮面を被って、ご婦人方と踊りながら様々なことを、ささやいたものです。」
キャピュレット夫人が背後で眼からビームを出さんばかりに睨んでいた。
「……いや、遠い遠い昔のことですよ、ハハハ。さあ、楽師たち、皆さんをもっと盛り上げて!」
楽師が曲を変え、男女が手を取り合って踊る。
「久しぶりの舞踏会、なかなか楽しいものだ。昔が懐かしいですな。仮面を着けて、いろんな場所で踊りました。あれからどのくらい経ったのでしょう。」
「30サイクルぐらいかのう。」
白い髭を触りながら、親戚の老人が答える。
「30サイクル!まだ、そんなに経っていませんよ。あの婚礼の時だから25サイクル前だったはず。」
「いやいや、その息子の年齢が30サイクル以上じゃ。」
「そうでしたか?その子は最近まで、よちよち歩きだったじゃありませんか。」
キャピュレット卿がアンドロイドジョークで会話を盛り上げている間、ロミオはただ一人、踊る人たちを見ている。
広間の中心で、ジュリエットが男性と踊り始める。
その時、ロミオの視覚センサーの端で、一つの光が観測された。
静かに脈動する、蛍光、
銀の雲霧を纏った、月光。
凍てつく闇夜に撒かれた、星屑。
小さく、たやすく闇にとけてしまうような光。
もっとよく見ようと視線を動かす。
光を視覚センサーの中心にとらえた瞬間、ロミオの視界が黒く塗りつぶされた。逆に中央に捉えた光は、可視光の領域外の光を激しく放出し始めた。
視覚センサーの異常かと思い、視線を自らの手に移動しようとした。しかし、ロミオは視線を動かすことができなかった。
視線を動かすどころか、瞬き一つできない。
ロミオは、機体診断プログラムを試みる。
機体診断プログラム起動。
視覚センサー:異常なし。
聴覚センサー:異常なし。
触覚センサー:異常なし。
姿勢制御:異常なし。
……
……
論理回路:異常検出。異常な高負荷を検出。
感情回路:異常検出。異常な高負荷を検出。
診断結果:電子イメージから許容できない情報量が論理回路と感情回路に流入したため、異常な高負荷が発生。その結果、機体の動作に異常な干渉が発生。
警告:回路に重大な損傷の可能性あり。
推奨:電子イメージからの情報の制限。
見たこともないエラーが発生して、いよいよ、完全に壊れて死んでしまうのではないかと思ったロミオ。
電子イメージからの情報の制限を選択。
電子イメージからの情報の制限を開始。
……
……
論理回路:異常なし。
感情回路:異常なし。
エラーが解消されていく中、ロミオの電子イメージに文字らしきものが浮かぶ。
「め、が、み……女神?」
見慣れない単語の意味を、電子辞書で検索する。
しかしその単語は、電子辞書には載っていなかった。
「なんだ、あいつ、小刻みに震えてるぞ。」
ティボルトが挙動不審なロミオを見て近づく。
「辞書にないだと。女神とは何だ?造物主たる人間とは違うのか……?ただのバグなのか……?」
ロミオは大きな声で、考えを表に出していた。
「怪しいやつ、その声には聞き覚えがあるぞ。モンタギュー家のやつに違いない。この夜会に忍び込んで騒ぎを起こすつもりだな!やられる前にやってやろうではないか。そこの者、俺の剣を持ってこい!」
ティボルトは給仕に怒鳴りつける。
「ティボルト、何事だ?」
キャピュレット卿も驚いてはいたが、客がいる手前、冷静を装った。
「伯父上、モンタギューのやつらが紛れ込んでいます。良からぬことを考えているに決まっている!」
続く
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