【恋愛小説】RØM3Ø & JUL13T (8)
「お嬢様ー。」
――遠くでジュリエットの乳母の声がする。
「こちらにおいででしたか、お嬢様、お母上がお呼びです。」
ジュリエットは、ぎこちなく微笑むと広間に戻っていった。
「あの方のお母上とは、どなたですか?」
「キャピュレット夫人です。あなた様も、キャピュレット家のお嬢様目当てなのですよね。ええ、わかっていますよ。お嬢様目当てで来られる方は多いですから。それでは失礼いたします。」
乳母は、にやにやしながら去っていった。
「また、キャピュレットの女姓だと? なぜ敵の女性ばかりに惹かれるのだ! 私は既に壊れているというのか……。」
「いたいた。もう夜会も終わるようだし、帰ろうぜ。」
こっそり見ていたベンヴォーリオがロミオの肩を叩く。
「なるほど、夜会が終わるか、そうらしい。ますます心が不安になる。」
独り言のようにつぶやくロミオ。
夜会の客が次々と帰りの支度をする。
「皆様、本日の夜会にご出席いただき、ありがとうございました。お楽しみいただけたなら幸いです。ささやかながらお土産をご用意いたしました。
ぜひお持ち帰りください。もう、夜も遅いので、お気をつけてお帰りください。誠にありがとうございました。
……ふぅ。さすがに疲労レベルが高いな、もうスリープモードに移行するとしよう。」
キャピュレット卿がため息をつく。
少し離れた所で、ジュリエットと乳母が帰る客を見送る。
「ばあや、あの方は誰?」
「存じません。」
「じゃあ、あの方は誰?」
「存じません、いいとこのお坊ちゃまでは?」
「あの方は?」
「ジュリエット様、お顔とお名前を覚えた方が、よろしいのではないですか?」
「みな同じ顔に見えるのです。それに、ばあやが知らないのに、私がわかるわけないじゃない。」
「乳母めは、あの方たちと踊ることもございませんので。」
してやったりという顔で答える。
「それは、そうだけど。どうせ特徴がないお顔なのだから、お顔に名前を書いた電子ペーパーでも張っておいてくださらないかしら。」
「しっ!聞こえますよ……ジュリエット様。」
育て方を間違えたかなと思う乳母。
「あ、あの方!」
とっさに乳母の後ろに隠れるジュリエット。
「ああ、さっき奥様のことを聞いてきた方ですね。」
「さあ、行って、お名前を聞いて来て!」
乳母の背中を両手で押すジュリエット。
「そんなに押さないでくださいまし。ちゃんと聞いてきますから。」
乳母はしぶしぶ歩き出す。
「まだ、ご結婚されてないといいのだけど。年齢は何サイクルぐらいかしら。甘いものはお好きかしら。」
ぶつぶつ言いながら、両手の指先をもじもじさせて待っていると、乳母が戻ってくる。
「名はロミオと言って、当家とは、ずっと敵同士のモンタギュー家の人だそうです。」
乳母の言葉に強い衝撃を受けるジュリエット。
「類い稀な愛が、類い稀な憎しみから生まれる。そうとも知らず、知ったときには遅すぎる。愛と憎しみどちらを捨てられる?」
ジュリエットは眼を閉じながら詩を朗読するように言う。
「一体どうしたのです?悪いものでもお召しになりました?」
普段と違う雰囲気に故障を疑う乳母。
「詩です。先ほど、あの方に教わりました。」
奥からジュリエットを呼ぶ声がする。
「はい、只今!……さあ、参りましょう。」
乳母はジュリエットを促して部屋に入る。
続く
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