【恋愛小説】RØM3Ø & JUL13T (5)
巡礼旅行者風に仮装したロミオを筆頭に、マキューシオ、ベンヴォーリオ、他に5、6人が続く。
いずれも奇妙な仮面を付けていて、電気ランタンを持ち、中には電子太鼓を持っている者もいた。
マキューシオはエスカラス卿の親戚であり、ロミオの友人の一人である。
「いつもの冗談をやって入場しようか、それともやめといた方がいいかな?」
ロミオは真面目な顔でベンヴォーリオに聞いた。
「またあれをやるつもりか?ウケたことないだろ。」
「あれって何?」
マキューシオは少し考えてみたが、思いつかなかった。
「おもちゃの羽をつけて、変なメイクのキューピッドになりきって、カラフルなおもちゃの弓で、ふざけて娘たちを追いかけるやつだ。」
「ぷっ、何それ。」
「あと、入場時に変な歌を歌うのも、やめておけ。」
呆れて、ロミオをみるベンヴォーリオ。
腹を抱えて笑っているマキューシオ。
「私に電気ランタンをくれ。今の私は夜よりも暗い闇の中にいる。せめて明るいものを持ちたい。」
従者にランタンを要求するロミオ。
「本当に、わけのわからないやつだな。」
ベンヴォーリオは、うんざりしつつ、つぶやいた。
「いや、暗いよりはいいよ。パーティなんだし、楽しく踊ればいいんじゃないかな。」
「踊る?無理を言うなよ。靴は空の関数のように軽いが、私の心は多重巡回商人の処理より重い。踊ることはおろか、歩くのも辛いくらいだ。」
「なんだ、意中の女性に会いに来たんじゃないの? ならキューピッドに翼を借りれば空を飛べるかもよ?」
「翼を借りても飛べないさ、私はキューピッドの矢に射抜かれてしまった。悲しい思いに縛られてしまっては、空を飛ぶことはできない。恋の重荷で地面を這うのみだ。」
「恋の重荷? 恋ってのはもっと、こう、優しくて楽しいものじゃないの?」
「恋が優しくて楽しいだって? 恋は粗暴で残酷なやつだよ。金属の棘のように私の感情回路を傷つけるんだ。」
「恋が残酷なことをするなら、こっちも残酷になってやればいいよ。刺してきたら、やり返してやるんだ!この仮面……。」
手に持った仮面を見つめるマキューシオ。
「僕は、こんな仮面なんて必要ないよ。なにせ、僕の顔のデザインの方がよっぽど面白いからね!」
マキューシオは満面の笑みを浮かべながら言った。
「ふっ、違いない。」
ベンヴォーリオは、仮面と見比べて言った。
「ちょっと!そんなことないって否定してよ。本気で傷つくだろ!」
「さあ、中に入るとするか。」
ベンヴォーリオは聞こえないふりをした。
「明かりをくれ、私は暗がりで十分だ。明るいやつらはみんなで楽しく踊ればいい。私は、「いい乱数は続かないが、悪い乱数は連続する」という祖父の言葉に従うさ。」
ロミオはマキューシオの発言をあまり気にしていない様子だった。
「せっかく元気づけてやろうと思ったのに……。無駄に強情だね。」
「無駄なんかじゃないさ。」
「そういうのを昼間に最高出力でランタンを付けるっていうんだ。まぁ、今は夜だけどね。」
「夜会に行くというのは悪くはないんだけど、何か嫌な予感がするんだ。」
ロミオはため息を付きながらつぶやいた。
「何か気になることでも、あったの?」
「昨晩、夢をみたんだ。」
「僕も見たよ。」
「どんな?」
「スリープモードでもないのに夢を見ている男なら、目の前にいるじゃないか。」
「夢や空想にも重要な何かが隠されているものさ。」
マキューシオの皮肉は気にしていないロミオ。
「ひょっとして、昨晩、電子妖精マブが枕元を飛んでいたのかな。マブは妄想めいた夢をみさせるらしいよ。手のひらより小さい姿で、飛び回って鱗粉をまき散らす。その鱗粉が体につくと、バグが生じるんだって。膝の辺りを飛び回ると膝をついて謝る夢。指の辺りなら電子マネーを得て、鼻の辺りなら出世する。首の辺りなら敵の首をとる。そんな夢をみるらしいよ。他には……」
ロミオが話を聞かないので、マキューシオは長い話をつづける。
「もういい、もうやめてくれ。君は意味のないことばかり言っている。」
「そうだろう、意味のないのは君の話だよ。夢は空想の子で、役に立たない頭から生まれるんだ。そもそも空想は、空気よりも曖昧なものだと思わない?今は内部温度が低温に寄っているかと思えば、すぐに焼けつくほど高温になって熱い排熱が吹く、その風みたいに曖昧なものだよ。」
「意味のない話に時間をかけすぎだ。夜会が終わってしまうぞ。」
ベンヴォーリオは二人のやり取りに呆れていた。
「私はとても不安なんだ。運命の星にかかっている恐ろしい宿命が、この夜会で明らかになって、疲れ果てた私の人生が不名誉な最期を迎えるのではないかと。とはいえ、行かないという選択肢はない。さあ、みんな行こうか。」
一同は夜会に向かう。
続く
いいなと思ったら応援しよう!
おやつくださいにゃ。