【恋愛小説】RØM3Ø & JUL13T (10)
「人の心の傷をあざわらうヤツは、本物の傷を負ったことがないヤツだ。」
ロミオは誰かが放った言葉が聞こえていた。
キャピュレット家の者に見つからないように、慎重に物陰を進む。
「あの光は……間違いない、あの時の光だ。まるで太陽の光、いや、月光か。」
ジュリエットはバルコニーで月を静かに眺めていた。
「月光に照らされて輝く、あの瞳の光に勝るものが、この世界のどこかにはあるのだろうか? いや、天空にある星、その全てを集めても、あれほど輝くことはない。」
「ああ!」
ジュリエットは内なる声を抑えられず、こぼれていた。
「彼女の声が聞こえる。その声を、どうかもう一度、私の心に響かせてください。輝く翼を帯びる女神よ。そのように高い所から、その姿にふさわしい声を。」
ロミオは、気づかれないようにジュリエットの声の方に向かう。
ジュリエットは月に向かって、誰にも話せない思いを語り始める。
「――ああ、ロミオ……ロミオ!……どうして、あなたはロミオなの?」
「すぐに返答した方がいいだろうか、それとも、もう少し聞いているか。」
ロミオはジュリエットに気づかれないようにつぶやいた。
「あなたの父を否定し、あなたの名を捨ててください。
――それができないなら、せめて、私への愛を誓ってください。
私からキャピュレットの名を消してください。」
「……」
「敵なのは、あなたの名前だけ、あなたがモンタギューでなければ、こんなことには……。モンタギューとは一体何? 手でも足でも、腕でも顔でも、人間の一部ですらない、ただの記号。決してあなたの本質ではない。その名に何の意味があるというの?バラから名を奪っても、その美しさも香りも変わることはない。」
「……」
「モンタギューでなくなっても、例え、ロミオと呼ばれなくても、あなたは、変わることのない、すばらしい、あなたのままです。」
「……」
「ロミオ、その名を捨ててください。あなたの一部ですらない、その名と引き換えに、私の全てを受け取ってください。」
「――あなたの言葉を受け入れよう。これからはモンタギュー家のロミオと呼ばれることはない。」
「だ、誰かいるの?隠れているのは誰?」
「さて、何と名乗ったらいいか。私の名は、私自身にとって憎むべきものであり、あなたの敵の名だ。」
「その声には聞き覚えがある……。ロミオ……モンタギュー家の……」
「あなたが、その名を嫌うなら、私は誰でもない。」
「なぜここに?何のために?あの高い石垣を越えてきたのですか?そ、そんなことより、家のものに見つかったら、無事では済みませんよ!」
「あの石垣は、思いの翼で軽く越えました。どんな壁も私の思いを遮ることはできない。思いは、どんな事も可能にするものです。あなたの家の人達も今の私を止めることはできません。」
「何を言っているんですか、見つかれば殺されてしまいます!」
「あなたの瞳に命を奪われることはあっても、彼らに殺されることはありませんよ。その瞳をよく見せてください。私は彼らに憎まれても構わない。」
「私は、あなたが死ぬのを見たくありません!」
「夜の闇に紛れているから大丈夫、見つかりません。しかし、あなたに愛されないのであれば、見つかって殺された方がいい。」
「誰かここまで案内した人がいるのですか?」
「あなたへの思いが私をここまで連れてきました。私は探検家ではありませんが、このような宝物があるなら、どんなに遠く困難でも探しに向かいます。」
続く
いいなと思ったら応援しよう!
おやつくださいにゃ。