【恋愛小説】RØM3Ø & JUL13T (3)
キャピュレット卿と、領主エスカラスの親戚であるパリスが街路を歩いている。
「モンタギューも我々と同じように罰せられました。しかし、我々老人にとって、平和を守ることは、それほど難くはありません。」
「いずれも名誉ある家柄なのに、長く確執を続けてきたのは残念なことです。ところで、例の件はどうなりましたか?」
「以前申し上げた通りです。娘は世間知らずで、まだ14サイクルと製造の若い娘です。せめてあと二夏を見てから、結婚適齢期と考えるべきでしょうな。」
「彼女よりも若く、見事な母親になっている人もいると思うのですが……。」
期待が外れて残念そうにキャピュレット卿を見る。
「いえ、早く最適化したものほど早く成長が止まるものです。
頼みのリソースは皆枯れ果て、たった一つだけ残った試作モデル、このラボで頼もしいのは彼女だけです。
しかし、パリス殿、まずは娘に、直接通信して感情レベルを動かしてみるのはいかがかな。彼女の承認が肝心で、我々の意志は参考資料に過ぎない。そもそも我々の承認など、あまり意味はないのです。
今宵、ラボの伝統に従って宴を催し、日頃から親しい方々を招待しました。
貴方がその中に加わることは、我がラボにとって名誉となることでしょう。
今宵、我がラボのモデルが星々のごとく輝き、夜空を照らす様をご覧あれ。
例えば、緩慢な冬の後に華やかな春が訪れるのを見て、多感な若者たちが感じるような喜び、高揚感を、ラボの花たちと交わって、今宵味わえることを約束しましょう。
すべてを聞き、すべてを見て、その後で最も価値のあるものを選ぶのです。よく観察すれば、女性モデルは数はいても、選択肢には入らないかもしれませんな。さあ、一緒に行きましょう。
そこの者、その手紙を全員に渡してきなさい。
ヴェローナ中をハイパフォーマンスモードで頼むぞ。
そして今宵我ラボでお待ち申し上げると伝えるのだ。」
後からついてきた従者の鞄を指さし、手紙を届けるように指示すると二人はキャピュレット邸に向かって歩いて行った。
従者たちは残り、手紙を渡す方法を相談する。
「ここに名前の書いてある人々を見つけるんだ! えーと、靴屋は衣服用のプリンターで稼げか、裁縫師は靴用のプリンターで稼げ、漁師はスマートペンで稼げ、絵師は自泳網で稼げ、とよくいうだろう。」
「ああ、聞いたこと……ないな。」
「まぁ、いい。宛先の人々を見つけなければならないが、書記がどんな名前を書いたのか、さっぱり分からん。」
「オラ、筆跡解析プログラムはインストールしてねぇぞ……。」
どうしようか、頭を抱えて悩む従者たち。
「……お、ちょうどいい。身なりがいい、あの人に頼むべぇ」
ベンヴォーリオとロミオが会話をしながら歩いている。
「 熱は冷たい空気で抑えられ、成果物は別の成果物で上書きされるものだ。
逆に体を回転させると視覚センサーの歪みが調整され、熱暴走するほどの処理を中断して、軽い処理をすれば温度も下がる。
新しい洗浄液を目に染み込ませて古い洗浄液を抜くのが良い。」
なおも、他の女性にすればいいと考える、ベンヴォーリオ。
「それには修理が一番だ。」
ロミオは視線をすこし上に向けつぶやいた。
「修理?」
ベンヴォーリオは首をかしげた。
「脛の傷には修理が一番だ」
「ロミオ、言語機能が狂ったのか?、いや論理回路か」
「どちらも狂ってはいないが、狂人よりも辛い境遇にあるとも言える……箱から出されることもなく、電源を断たれ、埃をかぶり、放置され……。
――あ、こんにちは」
ロミオはキャピュレットの従者とふいに目があうと、反射的に挨拶をした。
「はい、こんにちは。あ、旦那は手紙を読むのは得意だったりしねぇかい?」
「ああ……不幸の手紙を読むのはね。」
「旦那、不幸そうだもんな。」
従者はロミオの顔を見て何かを察したように頷いた。
「いんや、不幸の手紙じゃなくて普通の手紙なんだけんども。」
「読めるとは思うけど、今は不幸専門なんで難しいな。」
「はぁ……さようで。では、急いでるので失礼するだ」
従者たちはうろうろして、ああでもないこうでもないと、わめいている。
「……ちゃんと読めるかわからないけど、読んでみます。」
見かねたロミオは手紙を受け取った。
「……マキューシオ、バレンタイン……、ティボルト、……ロザライン。」
手紙の名前を全て読み上げ、従者に返す。
「ロザライン……。どこに集まるんですか?」
従者に詰め寄り、小さくかすれた声で問いかける。
「……はい?」
従者はいきなり距離を詰められて驚いたせいなのか、よく聞き取れなかった。
「これ、招待状ですよね?パーティーの場所は?時間は?」
今度は、はっきり聞こえるように大きな声で問い詰める。
その迫力に恐れをなした従者は、パーティーの時間と場所を告げると、小さく悲鳴をあげて逃げ出した。
「なるほど、狙いはロザラインか。よりにもよってキャピュレットとは。しかし、パーティーには他にも女性モデルが集まるようだな、それは好都合だ。
美人が集まれば、白鳥だと思っていたものが、カラスに見えるかもしれないぞ、なぁ、ロミオ。」
「指向性の強いこの視覚センサーに、仮にもそんなノイズが映るなら、眼の洗浄液は炎に変わってしまえ! 嘘を言った罪でこの身は溶鉱炉に捨てられてしまえ!何もかも見通す人工太陽でさえ、彼女ほど美しい女性を見たことがないのだ。」
「誰にも邪魔されずに、ロザラインだけを見ていた時には、美しくも見えただろう。しかし、その分析アプリに、今宵、見るだろう美人のデータをインプットして、その後で、ロザラインをデータ解析したら、今最も美しく見えるものが、もはや美しく見えなくなるんじゃないか?」
「それは見てみたい気もするけど、とにかく彼女に会いに行こう。」
二人はキャピュレット邸に向かった。
続く
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