【恋愛小説】RØM3Ø & JUL13T (29)
――マンチュア。
一面は咲き乱れる花に覆われていた。
ロミオはリクライニングチェアに仰向けに寝ている。
風が吹くと、色とりどりの花びらが舞い、爽やかな甘い香りで満たされる。
「ああ、なんと素晴らしい景色だ。今までの不幸で忌まわしい出来事が全て嘘のようだ」
ロミオは静かに眼を閉じる。
「……オ」
「……ミオ」
「ロミオ! また寝たふりして」
「この王子様は、魔女の呪いで永遠の眠りについています。王子様を起こすには……」
口を開けないで喋るロミオ。
「――お姫様のキスね! あれ、お姫様に王子様がキスをするんじゃなかったかしら? まぁ、いいわ」
ロミオにキスをする。
「おはよう、ロミオ」
「おはよう、ジュリエット」
ロミオが眼をゆっくり開けると、ボロボロの天井があった。
「……夢……か」
ロミオの頬に涙がつたう。
戸を叩く音が聞こえる。
「バルサザーです、開けてください」
「ヴェローナからの知らせか! バルサザー! ジュリエットは? ロレンスさんからの連絡は? 父上はご無事か? ジュリエットに変わりはないか?」
「……申し上げます。ジュリエット様は安らかに眠っています。私は、ジュリエット様がご親族のお墓に横たわるのを見て、急いでお知らせに参りました」
「…………そうか、ジュリエットは永遠の眠りについているのか」
「はい」
「ロレンスさんから手紙を預かっていないか?」
「いいえ、預かっていません」
「……筆と紙を用意して、移動手段を手配してくれ。今夜のうちに出発する」
「ロミオ様、落ち着いてください。とても顔色が悪く、尋常でないご様子。何をする気なんですか!」
「黙って言うことを聞いてくれ、バルサザー。私の最後の願いだ」
「……わかりました」
バルサザーが部屋を出る。
「ジュリエット、永遠の眠りを覚ましてやりたいが、私は王子ではない。せめて一緒に永遠に眠ろう。問題は眠る方法だ。
剣を使うのもいいが、墓所を血で汚したくない。そうすると毒か。以前、毒を扱う薬屋の噂を聞いたことがある。そして、ここに来る途中で薬屋を見かけた。
彼が噂の薬屋かはわからないが、何か情報を知っているかもしれない」
薬屋の店に到着する。
「薬屋、薬屋はいないか!」
「誰だ? 店が閉まっているのが見えないのか?」
ボロボロの服を着た貧しい薬屋が嫌そうに出てくる。
「毒が欲しい。飲んだら苦しむ間もなく即死する強力な毒が」
「あんたよそ者か? 帰んな。ここで、そんな強力な毒物扱ったら、バックアップ権ごと削除されちまうぜ」
「法律が何だ。法律より金欠に殺されそうに見えるが?」
ロミオは金目のものを全てテーブルに置く。
「……旦那のおっしゃる通りだ。法律は貧乏人の助けにならないが、金は助けになる。これをお持ちください」
薬屋は何かが入った瓶をテーブルに置く。
「これは?」
「物理毒と電子ウィルスの特別な暗殺用カクテル。少量でも体内に取り込んだ者を即時、完全に破壊する優れモノですぜ。以前、謎の組織に頼まれたものですが、奴ら、取りに来る前に捕まっちまって。くれぐれも足のつかないようにお願いしますよ」
「ああ、そうしよう。これは毒ではない。眠り薬だ、安らかに眠るための」
ロミオは瓶を受け取ると店を去る。
――ロレンス修道士の庵。
ジョン修道士がロレンス修道士の庵を訪ねる。
「おーい、ロレンス、兄弟よ、いないのか?」
「誰だ、こんな夜更けに?」
「私だ、ジョンだ」
「おお、そなたか。あの手紙をロミオに渡してくれたか?」
「そのことなんだが、渡すことはできなかった。謎のウィルスが蔓延していて、誰もマンチュアに行きたがらないのだ。この手紙は返しておくよ」
「そんな!何てことだ!これは実に不運で危険なことだ! とてつもなく不吉な予感がする。ジョン、早く丈夫なバールを持ってくるのだ! 急げ!」
「あ、ああ、わかった!」
ジョンは慌てて飛び出していった。
「急いで墓所に行かねばならない。あと3時間もすればジュリエットが眼を覚ます。状況を知ったら、どれだけ責められることか。
再び手紙を書き、ロミオが来るまでジュリエットを匿わなくては」
続く
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