【恋愛小説】RØM3Ø & JUL13T (30)
――墓地。
「君、ここで見張っていてくれ。誰にも見られないように明りは消すんだ。誰か来たら口笛で知らせてくれ」
パリスは従者に指示をすると、一人歩き出す。
「私の妻になるはずだったのに……」
ジュリエットの墓の前で止まるパリス。
「愛しいジュリエット、君のために花を撒こう……」
口笛が闇に響く。
「誰か来たのか?こんな時間に、私以外誰が?」
パリスは物陰に隠れる。
「バルサザー、ツルハシとバールをこっちへ。それから、この手紙を父上に届けてくれ。君は何も見ていないし、何も聞いていない、ここにも来なかった、いいな?
もう行くんだ」
「……はい」
「今までありがとう、バルサザー」
頷くと黙って去るバルサザー。
「ロミオ様……。せめて、邪魔が入らぬよう見張っていよう」
バルサザーは離れた所で見張りをすることにした。
ロミオは墓の扉を道具を使ってこじ開ける。
「あと少しだ、もうすこしだけ待っていてくれ、ジュリエット」
離れた物陰から人影を監視するパリス。
「あれは追放された、モンタギュー家の、確か……ロミオ殿。
まさか、墓を暴こうというのですか?
ティボルト殿を破壊しただけでは飽き足らず、死んだジュリエットまで汚す気なのは?
そこまで、キャピュレットが憎いというのですか!」
パリス剣を抜いてロミオに近づく。
「その墓に触れないでいただきたい! ロミオ殿!」
急に大声で呼びかけられ驚くロミオ。
「……どこかで見たことがあるような? 少し落ち着いてくれ」
「愛する者の墓が暴かれるのを、落ち着いて見ているものがいるのですか? 重罪人のロミオ殿」
「墓を血で汚したくない、剣をしまってくれ」
「お断りします。捕縛して、役人に引き渡して差し上げましょう!」
「頼む、放っておいてくれ……」
剣を抜くロミオ。
パリスはロミオに切りかかる。
軽々とかわすロミオ。
「なぜ、当たらない!」
パリスは次々と剣を繰り出すが、ロミオにはかすりもしない。
「君の未来の色が見えるんだ。当たりはしない、もうやめるんだ」
「未来の色が見える?……ふふ、そうか、そういうことですか!」
パリスの眼の色が赤く変化する。
再びロミオに切りかかる。
「無駄だ……うっ!」
パリスの剣がロミオの左肩にかする。
ロミオはパリスの影が途中で突然見えなくなった。
ロミオの能力により敵の赤い影に触れない限り、剣がロミオに触れることはない。
ところが、影の色が紫、青、緑、黄までで止まり、赤が見えなくなっていた。
「一体何が……?」
「やはり、赤い人工血液か、あなたも使っているのだろう? 最新式の未来予測システムを」
パリスが聞きなれない言葉を吐く。
「未来、予測システム?」
「しかし、最新式の未来予測システムは、うちのラボの新開発。まだ未発表なのだが、一体どこで流出したのか?」
「何を言っているのか、さっぱりだ」
「まぁ、いい。役人に引き渡すのをやめて、ラボに持ち帰り、ゆっくりと解析することにしましょう」
剣を繰り出すパリス。
応戦するロミオ。
「剣技は全くの素人ですね、あなたは。せっかくの未来予測システムがあっても、宝の持ち腐れというものですよ!」
一つ二つとロミオの体に傷が増えていく。
「……ジュリエット、私は、君のとなりで死ぬことすら許されないのか」
「あなたも大概しつこいですね、早く壊れなさい!」
パリスの剣が左腕に突き刺さる。
「死にたくなければ、能力を引き出せ!」
墓場に声が響く。しかしパリスは声に反応はしていない。
「誰だ! 能力とは何だ!」
辺りを見回すロミオ。
「何を言っているんです? 遂に壊れ始めたということでしょうか?」
ロミオの出血が止まらない。
機体診断プログラム起動。
異常な出血を検出。
警告:機能維持に支障あり
推奨:未来予知システムの強化→因果律歪曲システムの起動
「もうやめるんだ。君の未来が歪んでいる」
「何をわけのわからないことを? あなたが、私を、破壊する、とでも言うのですか?」
パリスは剣を振るが、ロミオには1つも当たらない。
「君は自分の剣で貫かれて死ぬ」
「あなたが私の剣を奪い取って、私に突き刺すとでも?」
「違う、事故だ」
「何を、バカなことを!」
「剣をしまえ、間に合わなくなるぞ」
「はぁ、あなたとのお話しも少々飽きてきました。後はあなたのメモリーにでも聞きます」
パリスが渾身の一撃を放つ。
ロミオはぎりぎりでかわす。
パリスの剣が墓石に当たり貫通して止まった。
「ぬ、抜けない!」
その隙にロミオがパリスに切り付ける。
パリスは剣を離し、短剣を抜いて防ぐ。
「形勢逆転、とでも言いたいのですか?」
「残念だ、未来は歪曲される。これ以上、君がどう行動しても」
「なるほど、心理戦というわけですか。でも、もう飽きましたよ」
勢いよく短剣を投げつけるパリス。
短剣はロミオを逸れて背後の木に当たり、短剣はパリスの方向に跳ね返る。
「おっと」
パリスは短剣を大きくかわす。
かわした方向の足元にパリスの持ってきた花が大量に撒かれていた。
パリスは強く花を踏みつける。
「うわっ!」
パリスは花で滑りバランスを崩し転倒した。
「おのれ……」
パリスは墓石を掴んで起き上がろうとする。
しかしその墓石は元々、老朽化していた上、パリスが剣を突き刺したため、脆くなっていた。
音を立てて折れた墓石がパリスの方向に倒れる。
パリスは墓石を抱くようにして倒れる。貫通したパリスの剣とともに。
「ぐ、ぐふっ」
パリスの胸部に剣が突き刺さる。
ロミオは墓石をどかす。
「何か言い残すことはあるか?」
「せ、せめて、愛するジュリエットの近くで……」
そう言うと、パリスは機能を停止した。
「どこかで見た顔だと思ったが、マキューシオの親戚のパリス殿ではないか。パリス殿もジュリエットを……。ああ、わかった。ともにジュリエットの元に行こう」
ロミオはパリスを抱きかかえると、ジュリエットが眠る墓に入っていく。
続く
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