【恋愛小説】RØM3Ø & JUL13T (25)
「悪党というと?」
「下手人のロミオのことです。ティボルトがロストしたのだから、あの悪党も同じくするのが筋というものです」
キャピュレット夫人は興奮して言う。
「はい。しかし、遠い所に行ってしまったのでしょう? 私の手でティボルトの仇を討ちたかった」
ジュリエットは、真実を母に話すと更なる混乱を生むと判断し、母と話を合わせることにした。
「仇を討つ機会は必ず訪れます。心配には及びませんよ。
あの追放人がマンチュアに向かったという情報があります。
マンチュアに使いを送り、尋常でない飲み物をあの者に飲ませましょう。
そうすればすぐにティボルトの後を追うことになります。そうなればあなたの心も休まるでしょう」
「母上、その毒を持って行く使者が決まったら、薬は私に調合させてください。そうでなければ、どうしても気が晴れません」
「使者は私が探します。それ以外はあなたに任せましょう。それはそうと、おめでたい話があります」
手を叩くと、キャピュレット夫人の表情ががらりと変わり、微笑む。
「あなたの情け深い父上が、あなたに愁いを忘れさせようと、なんともおめでたい日を決めました。私もあなたも想像もしていなかった、おめでたい日を」
「母上、どのようなお話しでしょう?」
「次の木曜日の朝早く、あの雅なパリス殿が、ふさわしい教会で、あなたを花嫁に迎えることになりました」
「ちょっと待ってください! そんな話、私は同意した覚えがありません! 父上に言ってください、私はまだ結婚しません。
ティボルトの仇も討っていないのに、話が急すぎます」
「その父上が来ましたよ。自分で直接言ってみたらどうです?」
キャピュレット卿と乳母が入る。
「ジュリエット、まだ悲しみに打ちひしがれているのか。悲しい気持ちは嬉しい気持ちで上書きするのが一番だ」
キャピュレット卿はジュリエットに静かに話しかける。
「それで、例の話はしたのか?」
「ええ、しましたよ。結婚はしないそうです。パリス殿の顔より、ロミオの死に顔を見たいそうです」
キャピュレット夫人は呆れながら言う。
「何を言っているのだ? 一体何が不満だと? あのような身分不相応の貴人に嫁ぐことができると言っているのに」
「結婚するのは嫌ですが、私のためだと思ってくださるのは嬉しいです」
「お前は自分が何を言っているのか分かっているのか?この縁談を纏めるために私が皆がどれだけ苦労したのか本当に分かっているのか?いや分かるわけがない分かっていたら嫌だなんて言うわけがないのだ大体お前は自分の立場が分かっていない自分がどれだけ期待されているのかキャピュレットの将来は全てお前にかかっているというのに」
キャピュレット卿が取り乱して、うろうろしながら言う。
「少し落ち着きなさい」
キャピュレット夫人がキャピュレット卿に足をかけて転ばせる。
ジュリエットは父の手を取って起こす。
「父上、お願いします、たった一言聞いてください」
「嫌だ、嫌だ、聞きたくない! どうせ、ろくでもないことを言うに決まっている!」
耳を塞いで駄々をこねるキャピュレット卿。
「そんな子供みたいなことをしてないで、一応お聞きになったらいかがですか? いい事かもしれないじゃないですか」
乳母が説得を試みる。
「乳母までそんなことを言う、もう嫌だ!」
「私が言ってはいけませんか?」
「何か言いたいなら、私がいないところで言ったらいい。私はもう部屋に戻る」
「まったく……」
乳母は呆れている。
「やっとのことで、良い領地持ちの、年の若い、教育も立派な美男で、ないものがない、と望まれる通りに出来上がっている婿を探してきたのに、やれ結婚したくないだの、一言聞いてだの文句ばかり。
どうしても結婚したくないというなら、それもいいだろう。木曜日まで考えるがいい。それでも結婚しないと言うなら私にも相応の考えがある。良いか、2度と言わんぞ。結婚するのだ、ジュリエット」
キャピュレット卿が、鼻から洗浄液をたらしながら去っていく。
ジュリエットはあまりのことに泣き崩れる。
「ああ、母上、私を見捨てないでください! この結婚式を延期してください、せめて一月、一週間だけでも」
「あの人がああなってしまったら、もうどうすることもできません。あなたの好きにしなさい。私はもう知りません」
キャピュレット夫人が立ち去る。
「ばあや、どうしよう? 何かできることはないの?」
「ロミオ様は追放の身ですから、どうにもなりません。たとえ戻ってこられたとしても、人目を忍んで隠れて会いにくる程度でしょう。
パリス様と結婚なさってはいかがですか? ロミオ様が持っていてパリス様が持っていないものはないし、ロミオ様が持っていないものをパリス様は持っておられます。
完全上位互換じゃないですか。ジュリエット様とロミオ様だけだと思いますよ、今回の縁談に反対するのは」
「それ、本気で言っているの?」
「はい、もちろん。嘘だったら罰が当たります」
「それもそうね、ばあやの言う通り」
「はい、え?」
「母上に言ってください。父上と母上の期待を裏切ってしまったので罰が当たらないように、ロレンス様にお祈りをいただきに参りますと」
「はいはい、承知いたしました」
乳母が立ち去る。
「ロレンス様に相談していただこう。誓約は守る、たとえ命をかけてでも」
ジュリエットが立ち去る。
続く
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