【恋愛小説】RØM3Ø & JUL13T (28)
――キャピュレット邸の広間。
キャピュレット家の大勢が慌ただしく準備をしている。
「さあ、急げ!急げ!時間がないぞ!
菓子の準備はいいか? 費用は惜しまず使え!」
キャピュレット卿が次々と支持を出す。
「まあ、張り切っておられますこと。旦那様はお休みください。結婚式まで体が持ちませんよ?」
乳母が進言する。
「何を言うか、私が若いころは、家を抜け出して毎日のように徹夜で遊んでいたものだ。これぐらい大したことはない」
「ほう、それは初耳ですね」
キャピュレット夫人の眼が光る。
「しまった、ネズミも鳴かずば取られまい……」
「旦那様、この品は料理人に渡せばよろしいでしょうか?」
使用人が尋ねる。
「うん? ああ、それで構わん。ヒーターをもっと持って来なさい、場所はピーターに聞け」
「そのピーターはどこに?」
「そんなの私が知るわけないだろう。ピーターを探せるものを探して来なさい。ああ、もう夜が明けた。パリス殿が来てしまう! おい、乳母はどこだ?」
「はい、お呼びですか?」
「ジュリエットを起こして、ドレスを着せなさい。化粧を忘れるな。私はパリス殿に挨拶せねば」
乳母はジュリエットの部屋に向かう。
「お嬢様、お嬢様、ジュリエット様!」
部屋に入る乳母。
「朝ですよ、起きてください。まだ寝てるのね、お寝坊さん。可愛いお嫁さん。寝られるだけ寝ておくつもりですか?
明日の晩になったら眠らせてもらえませんものね、うふふ。
まるで充電の切れた人形のように眠って。どうしても起こさないと。ドレスを着て、お化粧もして世界一のお嫁さんにして差し上げましょうね」
ジュリエットを揺すって起こそうとする乳母。
「お嬢様、お嬢様、ジュリエット様!」
ジュリエットの異変に気づく乳母。
「ああ、ああ、ジュリエット様が!ジュリエット様が! 旦那様! 奥様!」
キャピュレット夫人が部屋に入る。
「乳母さん、何を騒いでいるのですか?」
「ジュリエット様が! ああ、ああ、何てこと!」
「ジュリエット、もう朝ですよ。こんな日まで寝坊するなんて、あなたらしいわね。眼を、眼を開けるのです。起きて、起きて、おはようございます、母上と言うのです!……ああ、ああ、私の、私のジュリエットが……ああ、あああああ!」
半狂乱になるキャピュレット夫人。
キャピュレット卿が駆けつける。
「いつまで時間をかける気だ! ジュリエットの支度は済んだのか? パリス殿が来られたぞ」
「ジュリエット様が、充電の切れた、人形みたいに眠って、動かなくなって、死んでいます……」
乳母が声を絞り出すように吐く。
キャピュレット夫人は座り込んで視点が定まらず、口をパクパクして呻いている。
「なんだと!
……ああ、なんてことだ、冷たくなっている。
人工血液の循環が止まっている。唇も青白くなっている。あらゆる動作が停止している……。
死んでしまった……」
キャピュレット卿はジュリエットを抱えたまま震えている。
ロレンス修道士とパリスが楽隊を引きつれて現れる。
「さあ、支度は整いましたか?」
ロレンスが尋ねる。
「ああ、二度と帰らぬ支度が。パリス殿、あなたと結婚する前に、娘は死んでしまった」
キャピュレット卿は消えそうな声で言う。
「そ、そんな、今朝、顔を見る嬉しさを、待ち焦がれていたというのに……」
パリスは動揺を隠し切れない。
「憎い悲しい情けない恨めしい!今までこのような日が一日たりともあったか!私の可愛い大事な一人娘。最高の時を楽しみにしていたのに、最悪の時になるなんて!」
キャピュレット夫人は眼を見開いて虚空を見る。
「ジュリエット様、なぜ、なぜ、こんなこと、こんなことがあっていいはずがない……」
乳母は下を向いてわめいている。
キャピュレット家の全ての者が悲しみ、行き場のない怨嗟を口にする。
「みなの者、落ち着くのです! 今、彼女に必要なことをしなさい。嘆き悲しむのはその後でもできる。さあ、習わし通り、最もよい服を着せて然るべき所に送るのです」
ロレンスが喝破する。
「婚礼のために準備したものが、葬儀に使われる。祝いの音楽は葬送の音楽に。めでたいものが忌まわしきものに。全てが逆さま」
キャピュレット卿がつぶやく。
「さあ、みなの者、速やかに彼女を墓地に送る準備をするのです。全ては造物主のご意思です。背いて、天罰を受けぬように」
みな、ジュリエットにローズマリーを置き、退室する。
続く
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