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“ニーズばかり追うと支援は崩れる”―― ケースワークのボトムライン思考

ケースワークのリスク管理


ヘルパー調整をしていた高齢者が、
自宅で倒れていた──。

支援はしていた。
でも、防げなかった。

ケースワークでは、こういう“想定外”が起こります。

 ケースワークは単純ではありません。
 途中で進路変更や、ゴールそのものを見直すこともあります。

 冒頭のように、ゴールを目指す中で想定外の出来事が起こったら、あなたはどうしますか?
 
 ニーズやゴールばかりに目がいって、ケースワークのリスク管理ができていないことは、実はよくあることなんです。



ボトムラインって?


 児童福祉で使われる言葉なんですが、どの分野でも活用できる考え方なんです。

 例えば、「週に一度、本人の生存を確認できていること」「公共料金の滞納が2ヶ月を超えないこと」など、生命や健康、お金に関することが多いです。

 要するに、「これ以上看過できないレッドライン」ということです。

 悪く言えば、
「どこまでのリスク(危険)を許容するか」、

 良く言えば、
「最低限守りたいことはなにか」

 ということです。

 なお、これはクライエントの状況や取り巻く環境によっても変化します。


ボトムラインのない支援のリスク


 ボトムラインを設定しないことで、次のようなリスクがあります。

(1)「後手に回る」支援が時間を奪う

 ボトムラインがない支援は、常に火事の現場に駆けつけるだけの「消防士」状態。計画的な支援に時間を割くためには、あらかじめ「ここまでは燃えてもいい、ここからは消火する」という境界線が必要です。

 その場しのぎが増えてしまうと、本来の目標にたどり着けなくなってしまいます。

 “問題が起きてから動く支援”には、
 限界があります。

 

(2)ケースワーカーとしての危機管理


 仮にクライエントに何かあった場合に、「支援が入っていたのになぜこうなったのか」とケースワーカーが責められ、時に責任問題になる可能性すらあります。

 自分自身を守るための防衛線でもあるんです。


ボトムラインを引く手順


 ボトムラインを考える上で、ケースワーカーだけの判断ではできません。関係者の意見をすり合わせながら、決定していきましょう。

 ケースによってボトムラインの引き方は異なるので、ここではボトムラインを設定するためのヒントをご紹介します。


​(1)「最悪」の定義をする

 このケースで、「ニュース(事件・事故)になるとしたら何か?」を書き出してみましょう。(例:孤独死、近隣火災、横領など)

 その際、クライエントの"リスク要因"を踏まえると精度が上がります。リスク要因とは、望ましくない出来事がおきたり、程度が大きくなる可能性のある要因のことです。例えば認知症などの病気、障害、環境などです。

(2)「アラート」の設定

 「最悪」の一歩手前の状態を具体化してみましょう。(例:ポストに郵便物が溜まる、家賃滞納が始まる、本人が電話に出ない日が3日続くなど)


​(3)「撤退ルール」の共有


「アラートが出たら、支援者は◯◯をする」という関係者間の合意を取りましょう。(例:即、緊急連絡先に連絡し、安否確認訪問を行うなど)


これからできること


 次のカンファレンスで、
『このケースのボトムラインはどこですか?』
 と質問してみましょう。

 関係者とボトムラインの検討、共有をすることで、"支援のズレを"を防ぐことができます。

 ケースワークは、
 “良くすること”だけではありません。

 「これ以上悪化させない」
 という視点が抜けた瞬間、支援は崩れ始めます。

 だからこそ、
 ボトムラインを共有することは、
 支援を守る技術なんです。



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