【畏怖】第一部/四話:「謎の女神"吾屋"の秘密に迫る?」
前回までのあらすじ(三話からの続き)
神政庁に勤めて間もない若年神・ワカトシは、主神の太陽神・アマテルの不在という重大事に直面し、不安と緊張の中で初の閣議に臨む。
ベテラン神々の落ち着いた様子に驚きを隠せない中、大臣たちから天界の真実が次々と語られる。しかも新たな疑問、アマテルの出生に関わるの「秘密」を指摘。その発言は場に緊張を走らせる。神々の中でもごく限られた者しか知らない、主神にまつわる謎が浮かび上がる中、突如地上から外務省経由で緊急通信が入る。
モニターに現れたのは、謎の女神「吾屋」。その登場に大臣たちが一同に緊迫、彼女から若手職員たちの人払いを命じられる。美しくも謎めいた女神に、ワカトシは興味を抱いていた──。
「謎の女神"吾屋"の秘密を追う?」
< 彼の心に魔が差した >
会議を叩き出されたあとも、ワカトシはその姿を忘れられずにいた。神々が一斉に緊張したあの空気……誰よりも存在感があった。
──その女神の名は、「吾屋」というらしい。
「……気になる」
「……調べよう。いや、調べねばならぬ!」
そう口にした瞬間、ワカトシの心に魔が差した。
目的はただひとつ──天界政府の極秘ファイルへのアクセス。それは、自身の仕事の"役目"から考えるとかなり逸脱した行為だ。
しかしあれだけ、会議で極秘情報を聞いてしまったワカトシは止まらない──いや、ぶっちゃけあの美女が何者か、ただ知りたいだけである。
ワカトシは、意気揚々と政府人事データベースに「吾屋」と打ち込み、検索ボタンを叩いた。
「……」
──このファイルは最高機密レベルです。アクセス権限がありません。
(くそっ、やはり人事情報は無理か!)
次に過去の神事記録や降臨ログなどを検索した。
「……」
──アクセス権限がありません。
(また、空振りか)
ワカトシは仕方なく、自分の所属する末端部局のログイン画面に切り替える。人事記録は諦めて、部署に保管されている彼女にまつわる身辺情報を調査した。
だが出てくるのは……
「天界ビューティー特集!」「女神の美白ケア10選!」「おしどり神夫婦の密着スクープ!」など、ゴシップレベルのどうでもいい記事ばかり。
ちがう、そうじゃない。
俺はもっとこう、正体とか過去とか……
そうやって片っ端から開いていた時だった。
一つだけ、ロックがかかったファイルに気づいた。
《 主任権限/秘文書-第6ファイル_吾屋惶根 》
……これは、あやしい。
これは期待できる!!
しかし、パスワードが掛けられている。
「※※※」
──パスワードが違います。
まさか、誕生日じゃないよな?
ワカトシは"まさか"と思いつつも、主任の誕生日を入力した。
パスワード入力……『1124』
「!?」
……空いてしまった。
(パスワードの使い回し! ザルすぎる!!)
ついにワカトシは、情報へたどり着いた。
恐る恐る中身を見る──
「資料:吾屋惶根ランキングファイル」
「ら、ランキング?」
目を通したワカトシは、5秒で頭を抱えた。
【吾屋惶根・殿堂入りランキング】
──天界オリオン調べ
「高天原で最も美しい女神」──初代1位(殿堂入り)
「高天原で最もナンパされた女神」──初代1位(殿堂入り)
→ 大昔はそんなに有名だったのか?
「隣に立たせてはいけない女神」──初代1位(殿堂入り)
「割烹着が似合わない女神」──初代1位(殿堂入り)
→ どうやって統計取ったんだコレ……
「声を聞くと背筋が伸びる女神」──初代1位(殿堂入り)
「最も顔に性格が出ない女神」──初代1位(殿堂入り)
→ ちょっと、恐れられてたのか? オーラかな?
「口噛み酒をしてほしい女神」──初代1位(殿堂入り)
「素足で強く踏まれたい美魔女神」──初代1位(殿堂入り)
→ ちょっと毛色が変わったな……誰の性癖だ?
「"それで?"と言われたい女神」──初代1位(殿堂入り)
「やたらと"元〇〇"が多い女神」──初代1位(殿堂入り)
→ もう、意味がわからない……
「天界で最も歴史を██████████████████
えっ!?
最後のこれ……墨消しされてる?
よりによって、ここだけ"のり弁"状態。
ワカトシは背筋をぞわりとさせた。
バカみたいなランキングだったはずなのに、最後の一つだけ様子が違った。
「やっぱり謎が多い女神だ……」
ワカトシはそっと端末を閉じた。
この瞬間、また一つ秘密を知ってしまった──若き神が増えたのだった。
── つづく ──
