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【畏怖】第一部/五話:「転送?転移?アマテラスは天才の子!」


前回までのあらすじ(三話からの続き)

太陽神・天照が突如として姿を消し、天界政府では早朝から緊急閣議が開かれる。新人職員である若年神・ワカトシは、初の閣議で緊張と困惑を抱えながらも報告役を務める。
彼の目には、ベテランの神々があまりに落ち着いているように映るが、それは大臣たちが天界の深い歴史と秩序を知っているからだった。やがてフトダマ大臣が遅れて合流し、古代文献の調査結果をもとに、新たな天界の重大な秘密が示唆され、会議の空気は一変。
フトダマの示唆を受け、重い口を開いたアマノイワーから、天岩戸が「古代の転移ゲート」であることを告げられる。ワカトシは次々と明かされる真実に呆然とする中、地上からの一報が届く。地上からもたらされる情報で物語はさらに大きく動く気配を見せる──。


「転送?転移?アマテラスは天才の子!」


< 転移の真実・天照の才能 >

──早朝6時30分頃/地上・シェアハウスの居間──

 外はまだ薄暗く、居間の照明ライトの明るさが際立つ。
 スマートモニターからは、天気の不安定さを知らせる報道が流れている。

 人類を滅ぼす訳にはいかない……
 はぁ〜、と大きくため息を吐いたアヤカは、自分の運命を呪うように立ち上がった。

「もうこんな時間……これはまずい!」
 何がまずいのか、地上に太陽が見えない──つまり、やばい。

 ……何か「別のフラグ」が立ったかも。
 この状況を、天界に黙っているわけにはいかない。

 アヤカは心を鬼にして声を張った。
「アマテル! みんなに知らせるからね!」

 だが、当の本人──アマテルはというと、呑気にお茶をすすっていた。

「みんなが知ったところで、どうにもならないよ~」

 なぜ?
 アヤカは目を細めた。

「転移してきたんだから〜」

 思わず耳を疑った。聞き間違えたと思ったアヤカは、必死に確認する。

 ──転送じゃなくて、転移?

「そう♡」その返事はあまりにも軽く、そしてあっけらかんとしていて、頭が痛くなった。

 はあぁ?
 この子、何をしでかしたの。アヤカは慌てて問い詰める。

「ど、どうやって? 転移装置なんて作ったの?」

 するとアマテルは、ポケットから小さな宝石のような丸い石を取り出した。「これよ、きれいでしょ〜」照明の光があたるたびにキラキラと輝いている。

 この石は、何?……アヤカは眉をひそめた。

天之瓊矛あめのぬぼこの玉よ」
 あっさりと言い切るアマテル。そう簡単に言うけど、それが、どうして転移に関係するの?

 アマテルによれば、昔、岩戸で転移ゲートを発見して、転移の再現を試みたけど"何か"が足りなかったのだという。

「それで、神殿にあった矛をたまたま調べたのよ〜」──イザナギが別天津神ことあまつかみから授かったという神器。それは、何もない空間に"国産み"をする力。

 アマテルは、この矛の装飾玉に先代たちの力が、まだ少し残っていることを調べあげ「空間制御に使えるかもしれない」と自分のベッドに組み込んだらしい。(軽く言うけど伝説級の神器よ。それを扱えるのもすごいけど)

「500年かかったけど、できたのよね〜(笑)」

 笑ってるけど、500年!?
 アヤカは突っ込む気力さえなくなってきた。(この子は、本当に神の力に選ばれた存在なのね……)

「だから、神格が高いって言ったでしょ♪」と、アマテルが笑った。

 アヤカはしみじみと思った。
 やはり、この子……天才だわ。私と違って神の力に愛された特別な神。アマテルが産まれた時から抱いていた想い。そして、アマテル出生の秘密を知る天界でも限られた存在でもある──私。

「でも、太陽がないと、みんなパニックを起こすでしょ?」
 アヤカはアマテルに問いただす。思い出したくもない、あの"天岩戸"事件。あのときも大騒ぎだった。あれに比べれば……いや、どっちも最悪かも。

「大丈夫じゃない〜、外見てよ、明るいよ☆」
 気楽すぎるアマテルの一言に、アヤカは即座に窓の外へ目をやった。

 ──確かに。
 ついさっきまで薄暗かった空が、今はちゃんと明るくなっている。
 うん、あれ、奇跡かな?

「カネさんがどうにかしたんじゃない?」
 アマテルは気軽に呟いた。

 カネ……か。
 やはり大臣のオモイカネには連絡をした方がいい。アヤカは、もはや手に負えないこの状況を丸投げしようと決意した。「カネに連絡するからね」静かにそう呟いた。

 アヤカはモニターのチャンネルを天界通信へと切り替えた。

 パッと画面が天界チャンネルに切り替わると、その右端には「太陽神・失踪中」のアラートがズラリ──まるで株価の速報だ。

「やっぱり。結局、騒ぎになってる」

 アヤカは呆れ顔でアマテルを見た。その視線にも気づかず、ぶつぶつ何かを言いながら、サンドイッチをもぐもぐ。……この子、本当に何も気にしてない。少しイラッとした感情を抑え、急いで天界政府へ連絡をとる。

 まずは外務省チャンネルに繋いだ。
 オペレーターに言伝をすると、パチパチと入力する音が響く。そして、しばらく待たされた。──10分。いや、実際には数分くらいかもしれない。

《ただいま、各大臣は臨時閣議中です》
《緊急連絡とのことで、直接お繋ぎしますか?》

「……ええ」
 また面倒な場へ足を踏み入れてしまった。アヤカは若干後悔していた。朝からなんでこんな事態に。本当に厄介なことに巻き込まれたものだ。

《では、お繋ぎします》

 画面が切り替わると、長い会議卓を囲んで神々が一斉に座していた。会議室のぴんと張り詰めた緊張がこちらにも伝わる。

 地上のシェアハウスの気の抜けた空気とは違う、まるで別世界だった。


── つづく ──



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