小島秀夫監督も絶賛!MSX版ポートピア連続殺人事件
ドラクエで大ブレイクする以前、パソコン少年にとって堀井雄二氏はAVGの名手という認識でした。「ポートピア連続殺人事件」「オホーツクに消ゆ」「軽井沢誘拐案内」の3作品は「堀井ミステリー三部作」と呼ばれ、伝説的な名作として語り継がれています。
今回は「オホーツクに消ゆ」の原型とも言えるポートピア、発展形とも言える軽井沢の魅力を語ります。
❶主役はヤス?ポートピア連続殺人事件

1983-4年頃のパソコンゲームの花形はAVGでした。家庭用ゲーム機やゲームセンターではプレイすることが出来ない大人向けの思考型ゲームとして『こんにちはマイコン』で紹介されたAVGは多くのゲーム少年の憧れでした。
この時期はかなりの数のAVGが制作されましたが「堀井ミステリー三部作」が他の作品と決定的に違っていたのは文章のレベルが桁違いだったことです。
この頃のパソコンゲームの制作はプログラマーが中心で単独で行うことが多く、シナリオやテキストもその分野では素人のプログラマーがすべて担当していました。それに対してライターとして多くの実績を上げていた「文章のプロ」である堀井氏が描いた重厚な物語は、ドラクエへ続く次世代ゲームへの扉だったように感じます。
参考までに僕が遊んだ同時期のAVGを紹介しますね。


「こんな難しいゲームがゲームセンターあるかい?」という煽りが懐かしいです。

CGが追加されカラフルに。




当時のアドベンチャーゲームがテキストよりも視覚的にインパクトのあるグラフィックを重視したのは仕方なかったのかもしれません。また場面数の多さや描写速度を競うような風潮もあったので、テキストは二の次になる傾向が強かったのです。しかしこれは僕個人の考えですが、AVGはゲームである以前に「読み物」だったような気がします。



日本ファルコム初期はこのマニアックな路線でした。
「堀井ミステリー三部作」の第一弾「ポートピア連続殺人事件」はオリジナルのPC-6001版が1983年6月発売と、パソコンゲームの歴史でも黎明期初期の作品になります。
このゲームをプレイして一番感じたことは、とにかくキャラクターが立っているなということでした。ポートピアの真犯人はファミコンに移植されて以降有名になり「ゲームをプレイしていなくても犯人は知っている」とまで言われるほどでしたが、パソコン少年の中でも割と有名なネタでした。



ですから僕も犯人を知っている状態で始めた訳ですが、それでも十分にゲームを楽しむことが出来ました。丁度『刑事コロンボ』の冒頭で犯人の周到な犯行が写された後に、コロンボが犯人を徐々に追い詰めていくという感覚に似ていました。『刑事コロンボ』は捜査が進むにつれての犯人の焦りの描写が見せ場の一つですが、「悲しい事件でしたが、これで事件解決ですね」と捜査の打ち切りを勧められるシーンではニヤリとさせられましたね。


「ポートピア連続殺人事件」という物語の主人公は「相棒」であり、かつ「信頼できない語り手」であるヤスであると思うのですが、プレイヤーを騙し続ける彼に悪感情を抱く人は殆どいないのではないでしょうか。ひょうきんに振る舞う裏に潜む悲劇的な生い立ちや、捜査が進むにつれのしかかる罪悪感や葛藤の描写は、むしろヤスというキャラクターを魅力的に照らしています。ファミコン版で追加された
「復讐のために耕造を殺したのなら、このことを後から知って後悔したに違いない」
というセリフは今作を象徴しているような気がします。ポートピアの説明描写は全てヤスのセリフで統一されているのですが、それはまるで彼の語る懺悔録という趣で、極めて文学的でした。僕は最終結末を見届けた時、重厚な推理小説を読み終えたような感動がありました。それは何より「ヤス」という魅力的なキャラクターが織りなす人間ドラマにあったと思うのです。


以下ネタバレですので注意!この場面は涙なくしては見れません🥹

ファミコン版はエンディングが箱絵になっている演出がにくいですよね。ヤスはこんなにカッコよかったのか!



以前人気番組のゲームセンターCXを見ていたら、ゲスト出演した小島監督がゲーム業界に入ったきっかけのゲームとして『ポートピア連続殺人事件』を挙げていたことを思い出しました。

小島秀夫監督
『もう決定的になったのは『ポートピア殺人事件』ですね。殺人を起こすに到った動機というのが背景にあってですね、これが泣かせるんですよね。人間ドラマもゲームの中で表現されていたんで、もしかしたらこの業界というか、このメディア、可能性があるのかなと思って…。』

小島監督は映画的演出をゲームに導入した先駆者ですが、その源流にポートピアがあったことは頷けるお話だと感じました。そういえば小島監督も『刑事コロンボ』のファンだとか。


MSXの初代メタルギアにも「ヤス」を彷彿とさせる「信頼できない語り手」が登場します。もしかしたらこの展開はポートピアからインスパイアされたのかも知れません。

追加記事 ゲームブック版ポートピア

ファミコンのゲームブックでお馴染みの「双葉文庫ファミコン冒険ゲームブック」シリーズでも「ポートピア連続殺人事件 密室殺人の謎」として登場しました。基本の物語は同じですが、より刑事ものとしての雰囲気が出ている作風です。肝心の真相は袋綴じになっているのですが、僕が古本屋で購入した時は既に封切られていました😁


原作にはなかった銃撃戦で殉職したり、捜査方法を咎められて捜査から外されたりといったオリジナルな展開も楽しめました。

登場人物が多いため、ゲームブックで物語をすべて消化するのは難しかった印象です。

イラストレーターは中村亮さん。アメコミ調のイラストがハマっていました。主人公のボスは貫禄十分でカッコいいですね!
❷お色気とRPGの融合 軽井沢誘拐案内


「堀井ミステリー三部作」の最終作。ポートピアと同様にオリジナル版のプログラム・シナリオ・グラフィック等の全ての作業を堀井氏が1人でこなしている最後の作品になりました。前二作の悲劇的な作風とは一転して、こちらはカラッとした軽いノリで物語が進行していきます。オホーツクやポートピアが『火曜サスペンス劇場』なら、軽井沢は80年代トレンディドラマという感じでしょうか。舞台が軽井沢と言うのもバブリーぽいですし。
文体は堀井氏が当時連載していたアニメ雑誌『月刊OUT』に近く、もしかしたらこのテイストが堀井氏の地の文章なのかもしれません。



僕が「軽井沢誘拐案内」をプレイしたのは日本が空前のドラクエフィーバーに沸いていた1986年末。悪友のFM7くんが
😸「ドラクエの作者が作ったエロゲーがあるぞ」
と教えて貰ったのがプレイした切っ掛けでした。MSX版がちょうどそのころ発売されたんですね。幼馴染のファミっ子だったナムコくんとかはまるで信じていませんでしたが、画像を見て驚愕していました。僕は調子に乗って
😁「ククク、こいつはファミコンには真似できねえだろ。堀井ミステリー三部作を遊べるのはMSXだけ(嘘™)」
とクラスの連中に自慢していました。


Hシーンばかりが伝説化していますが、女の子が相棒となって捜査する展開はデジタル世界でのデートを疑似体験することが出来、これは『ときメモ』などの美少女ゲームの源流と言えるかもしれません。このテイストは以前紹介した「AVGウイングマン」にも見られました。
また堀井作品らしい二転三転するトリックは一級品で、作品としてのボリュームはオホーツクを凌駕していると思います。また随所に黎明期のアドベンチャーゲームを彷彿とさせるオマージュ的展開が挿入されており、まさに堀井氏のAVGの集大成と言えるのではないでしょうか。堀井氏はこの時期AVGとRPGの融合を模索していたそうですから、ドラクエに繋がった最も近い作品とも言える気がします。


追加記事。1985年4月、早稲田漫研出身のパソコンゲームデザイナーとして堀井氏と関野ひかる氏との対談。TOKYOナンパストリートの発売直前ですね。「小学生の作文のようなのアドベンチャーゲームは嫌い」というコメントが印象的です。


❸堀井氏はPCゲームをどう捉えていたか
堀井氏は数多くのインタビュー記事があるのですが、これは1984年6月の最初期のものになります。まだ雑誌のライターとゲーム制作のどちらに進むか決めかねているようですね。また既にゲームの分業制について語られています。また『ポートピア殺人事件』ではキャラクターを重視したという内容があります。




これは1984年11月の堀井氏が担当していたアニメ雑誌でのパソコンゲーム特集。この時期はまだパソコンゲームがマイナーな時期でした。この時期堀井氏がどのようなパソコンゲームに着目していたのか知ることの出来る貴重な資料だと思います。




❹ドラクエの源流を求めて…

今回は堀井雄二さんのインタビューを特集しようと思ったのですが、いつの間にか「堀井ミステリー三部作」の記事になってしまいました。やはり稀代のストーリーテラー、堀井氏の原点はポートピアにあったように思うのです。

僕はドラクエフィーバーの直撃世代なのですが、一方で「堀井さんのアドベンチャーやパソコンゲームが遊べないのは残念だなあ」と一抹の寂しさを感じていました。今回当時を振り返りながら、改めてその気持ちを思い出しましたよ。

次回は「オホーツクに消ゆ」幻の続編?があったのかも知れないという謎に迫りたいと思います。お楽しみに!

先生素晴らしい作品達をありがとうございました🙇
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サイボーグMSX
