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小島秀夫監督も絶賛!MSX版ポートピア連続殺人事件

ドラクエで大ブレイクする以前、パソコン少年にとって堀井雄二氏はAVGの名手という認識でした。「ポートピア連続殺人事件」「オホーツクに消ゆ」「軽井沢誘拐案内」の3作品は「堀井ミステリー三部作」と呼ばれ、伝説的な名作として語り継がれています。
今回は「オホーツクに消ゆ」の原型とも言えるポートピア、発展形とも言える軽井沢の魅力を語ります。


❶主役はヤス?ポートピア連続殺人事件


ポートピア発売直後の1983年11月のランキング。まだアルフォスなどのアクションがメインですが、惑星メフィウスなどの名作AVGも登場していました。

1983-4年頃のパソコンゲームの花形はAVGでした。家庭用ゲーム機やゲームセンターではプレイすることが出来ない大人向けの思考型ゲームとして『こんにちはマイコン』で紹介されたAVGは多くのゲーム少年の憧れでした。
この時期はかなりの数のAVGが制作されましたが「堀井ミステリー三部作」が他の作品と決定的に違っていたのは文章のレベルが桁違いだったことです。

この頃のパソコンゲームの制作はプログラマーが中心で単独で行うことが多く、シナリオやテキストもその分野では素人のプログラマーがすべて担当していました。それに対してライターとして多くの実績を上げていた「文章のプロ」である堀井氏が描いた重厚な物語は、ドラクエへ続く次世代ゲームへの扉だったように感じます。
参考までに僕が遊んだ同時期のAVGを紹介しますね。

ポートピアと同時期である1983年5月発売されたクリスタルソフトの「聖なる剣」夢幻の心臓の作者である富一成氏の作品。FM7君の家で夢中になってプレイしました。


「Zork」に影響を受けたテキストAVGでCGは一切なし。さらわれたお姫様を救い出すという定番の展開で、テキストの文章の質をポートピアと比べてみて下さい。ゲーム内容は火吹山の魔法使いなどのゲームブックを彷彿とさせます。
「こんな難しいゲームがゲームセンターあるかい?」という煽りが懐かしいです。


やはり1983年にクリスタルソフトから発売された「名探偵登場!」
CGが追加されカラフルに。


一見推理物ですが、「この家がGUNの密輸組織と関係がある事を確かめて欲しいという依頼があった。君の任務は家の中から証拠としてGUNを取ってくるのだ。」という強引な展開。実際はミステリーハウスタイプの屋内探索型AVGです。当時はこういったAVGが一般的でした。


本格的推理アドベンチャーの傑作『鍵穴殺人事件』。ミステリーハウスタイプの屋内探索型AVGを進化させ、いつでも関係者を呼んで尋問する事が出来た点が秀逸でした。発売日は1983年10月でポートピアの2か月後。もしかしたらポートピアのシステムを参考にしたのかもしれません。推理物としては一級品ですが、人物描写などは簡素でその点はポートピアと差があったような気がします。


1983年4月発売の伝説のテキストアドベンチャー「南青山アドベンチャー」 ア・スキー社最高顧問、西崎郡一郎(恐らく西和彦先生がモデル、いいのかよ!🤣)の屋敷を破壊することが目的。雑誌に何度も投稿するも、毎度毎度没にされることを逆恨みしての犯行というハチャメチャな設定😁


メッセージ・コマンド共に英語というスパルタンな仕様。小学生の僕には手も足も出ませんでしたよ。難易度も極悪で屋敷内には何故か伊賀忍者や死の罠が満載。西先生はどんな家に住んでるんだよ!しかし手裏剣や村正ブレードがあるのにニヤリとさせられます。なんだかノリがログインぽいなあ😁

当時のアドベンチャーゲームがテキストよりも視覚的にインパクトのあるグラフィックを重視したのは仕方なかったのかもしれません。また場面数の多さや描写速度を競うような風潮もあったので、テキストは二の次になる傾向が強かったのです。しかしこれは僕個人の考えですが、AVGはゲームである以前に「読み物」だったような気がします。


1984年3月日本ファルコム発売の「デーモンズリング」画面が約2秒で表示されるという瞬間画面表示が売りでした。雰囲気は抜群なのですが、オカルトというマニアックな世界観にも関わらずテキスト描写が少ないので世界観が解り辛らかったです。


日本ファルコム初期のホラー路線の元祖、1983年8月発売の「ホラーハウス」。ミステリーハウス方式にホラーを追加した良作。


CGやオープニングのセンスが良くてマジで恐ろしかったです。
日本ファルコム初期はこのマニアックな路線でした。

「堀井ミステリー三部作」の第一弾「ポートピア連続殺人事件」はオリジナルのPC-6001版が1983年6月発売と、パソコンゲームの歴史でも黎明期初期の作品になります。
このゲームをプレイして一番感じたことは、とにかくキャラクターが立っているなということでした。ポートピアの真犯人はファミコンに移植されて以降有名になり「ゲームをプレイしていなくても犯人は知っている」とまで言われるほどでしたが、パソコン少年の中でも割と有名なネタでした。

パソコン版のパッケージ。まだ黎明期のゲームの雰囲気ですね。
MSX版の発売は1985年6月とオリジナルから2年の歳月が過ぎていましたが、シナリオは全く古びていませんでした。僕は倒叙ミステリーとして楽しみましたよ😁


この頃のゲームは基本テープでした。

ですから僕も犯人を知っている状態で始めた訳ですが、それでも十分にゲームを楽しむことが出来ました。丁度『刑事コロンボ』の冒頭で犯人の周到な犯行が写された後に、コロンボが犯人を徐々に追い詰めていくという感覚に似ていました。『刑事コロンボ』は捜査が進むにつれての犯人の焦りの描写が見せ場の一つですが、「悲しい事件でしたが、これで事件解決ですね」と捜査の打ち切りを勧められるシーンではニヤリとさせられましたね。


1983年9月の広告。堀井さんはPC-6001ユーザーだったのでPC-6001版がオリジナルです。パピコン君はそれを自慢していたっけ。


MSX版は「オホーツクに消ゆ」と同時期に発売されました。

「ポートピア連続殺人事件」という物語の主人公は「相棒」であり、かつ「信頼できない語り手」であるヤスであると思うのですが、プレイヤーを騙し続ける彼に悪感情を抱く人は殆どいないのではないでしょうか。ひょうきんに振る舞う裏に潜む悲劇的な生い立ちや、捜査が進むにつれのしかかる罪悪感や葛藤の描写は、むしろヤスというキャラクターを魅力的に照らしています。ファミコン版で追加された

「復讐のために耕造を殺したのなら、このことを後から知って後悔したに違いない」

というセリフは今作を象徴しているような気がします。ポートピアの説明描写は全てヤスのセリフで統一されているのですが、それはまるで彼の語る懺悔録という趣で、極めて文学的でした。僕は最終結末を見届けた時、重厚な推理小説を読み終えたような感動がありました。それは何より「ヤス」という魅力的なキャラクターが織りなす人間ドラマにあったと思うのです。


事情聴取で普通に暴力がふるえるのが昭和テイスト。しかし沢木文江には「僕には女は殴れません」という伏線もニヤリとさせられました。


堀井氏は当初1957年松本清張の古典的長編推理小説『点と線』をイメージしていたと語っています。ポートピアは史上初めて「小説のビデオゲーム化」を試みた作品化なのかもしれません。

以下ネタバレですので注意!この場面は涙なくしては見れません🥹


オニイチャンッ!というセリフが忘れられません

ファミコン版はエンディングが箱絵になっている演出がにくいですよね。ヤスはこんなにカッコよかったのか!

パッケージイラストはドラゴンクエストシリーズのグラフィックデザインを担当されている眞島真太郎先生


地球戦士ライーザのグラフィックデザインやパッケージも眞島真太郎先生です。


なぜかネット上でファミコン版の箱絵は北条司先生というデマがありますが、ここに証拠を載せておきます。

以前人気番組のゲームセンターCXを見ていたら、ゲスト出演した小島監督がゲーム業界に入ったきっかけのゲームとして『ポートピア連続殺人事件』を挙げていたことを思い出しました。


ゲームセンターCX第2シーズン第4回「コナミワイワイワールド」より

小島秀夫監督 

『もう決定的になったのは『ポートピア殺人事件』ですね。殺人を起こすに到った動機というのが背景にあってですね、これが泣かせるんですよね。人間ドラマもゲームの中で表現されていたんで、もしかしたらこの業界というか、このメディア、可能性があるのかなと思って…。』


ちゃんとMSXについても語ってくれていて嬉しかったです。

小島監督は映画的演出をゲームに導入した先駆者ですが、その源流にポートピアがあったことは頷けるお話だと感じました。そういえば小島監督も『刑事コロンボ』のファンだとか。


何が「MSXノ デンゲンヲ キレ!」だよ。初見では見事に引っかかりました😁


このネタはユニクロのTシャツになるぐらい有名。当然MSX信者として持ってます😁

MSXの初代メタルギアにも「ヤス」を彷彿とさせる「信頼できない語り手」が登場します。もしかしたらこの展開はポートピアからインスパイアされたのかも知れません。


メタルギアについてはいずれ語る時が来ると思います😉

追加記事 ゲームブック版ポートピア


ファミコンのゲームブックでお馴染みの「双葉文庫ファミコン冒険ゲームブック」シリーズでも「ポートピア連続殺人事件 密室殺人の謎」として登場しました。基本の物語は同じですが、より刑事ものとしての雰囲気が出ている作風です。肝心の真相は袋綴じになっているのですが、僕が古本屋で購入した時は既に封切られていました😁

マイケルたかおさんのXから拝借。たかおさん感謝です🙇


原作にはなかった銃撃戦で殉職したり、捜査方法を咎められて捜査から外されたりといったオリジナルな展開も楽しめました。

登場人物が多いため、ゲームブックで物語をすべて消化するのは難しかった印象です。

イラストレーターは中村亮さん。アメコミ調のイラストがハマっていました。主人公のボスは貫禄十分でカッコいいですね!

❷お色気とRPGの融合 軽井沢誘拐案内


君は軽井沢に“愛”を見たか!?がキャッチコピーでした。


MSX版はROMだったので読み込みが早くて助かりました。良移植でしたね。

「堀井ミステリー三部作」の最終作。ポートピアと同様にオリジナル版のプログラム・シナリオ・グラフィック等の全ての作業を堀井氏が1人でこなしている最後の作品になりました。前二作の悲劇的な作風とは一転して、こちらはカラッとした軽いノリで物語が進行していきます。オホーツクやポートピアが『火曜サスペンス劇場』なら、軽井沢は80年代トレンディドラマという感じでしょうか。舞台が軽井沢と言うのもバブリーぽいですし。
文体は堀井氏が当時連載していたアニメ雑誌『月刊OUT』に近く、もしかしたらこのテイストが堀井氏の地の文章なのかもしれません。


この「いやらしくない明るいH」が堀井氏の真骨頂。しかし内容が昭和ですね。


「オホーツクに消ゆ」ほどではないですが、旅行気分を味わえるのも楽しかったです。


MSXのAVGとしては最も規模が大きかったかも。BGMがないのが唯一の欠点でした。

僕が「軽井沢誘拐案内」をプレイしたのは日本が空前のドラクエフィーバーに沸いていた1986年末。悪友のFM7くんが

😸「ドラクエの作者が作ったエロゲーがあるぞ」

と教えて貰ったのがプレイした切っ掛けでした。MSX版がちょうどそのころ発売されたんですね。幼馴染のファミっ子だったナムコくんとかはまるで信じていませんでしたが、画像を見て驚愕していました。僕は調子に乗って

😁「ククク、こいつはファミコンには真似できねえだろ。堀井ミステリー三部作を遊べるのはMSXだけ(嘘™)」

とクラスの連中に自慢していました。


このパンモロは軽井沢を象徴するシーン


最終版はドラクエの原型的なRPGになるのですが、最強の武器である『透け透けセクシーパンティー』がカギになります。MSX1版ドラゴンクエストⅡに登場した『あぶないみずぎ』のように専用グラフィックがあるともっとよかったのに🤣こりゃファミコンには移植できませんよ。

Hシーンばかりが伝説化していますが、女の子が相棒となって捜査する展開はデジタル世界でのデートを疑似体験することが出来、これは『ときメモ』などの美少女ゲームの源流と言えるかもしれません。このテイストは以前紹介した「AVGウイングマン」にも見られました。

また堀井作品らしい二転三転するトリックは一級品で、作品としてのボリュームはオホーツクを凌駕していると思います。また随所に黎明期のアドベンチャーゲームを彷彿とさせるオマージュ的展開が挿入されており、まさに堀井氏のAVGの集大成と言えるのではないでしょうか。堀井氏はこの時期AVGとRPGの融合を模索していたそうですから、ドラクエに繋がった最も近い作品とも言える気がします。


ドラクエ発売直前の記事。堀江氏もやはりファミコンでRPGを発売することに一抹の不安があったことが伺える内容です


ディスク版も発売されましたが、テープ時代の最後の大作という感じでした。

追加記事。1985年4月、早稲田漫研出身のパソコンゲームデザイナーとして堀井氏と関野ひかる氏との対談。TOKYOナンパストリートの発売直前ですね。「小学生の作文のようなのアドベンチャーゲームは嫌い」というコメントが印象的です。



❸堀井氏はPCゲームをどう捉えていたか

堀井氏は数多くのインタビュー記事があるのですが、これは1984年6月の最初期のものになります。まだ雑誌のライターとゲーム制作のどちらに進むか決めかねているようですね。また既にゲームの分業制について語られています。また『ポートピア殺人事件』ではキャラクターを重視したという内容があります。





これは1984年11月の堀井氏が担当していたアニメ雑誌でのパソコンゲーム特集。この時期はまだパソコンゲームがマイナーな時期でした。この時期堀井氏がどのようなパソコンゲームに着目していたのか知ることの出来る貴重な資料だと思います。


AppleIIの名作『ピンボール・コンストラクション・セット』「ゲーム作成ツール」といったジャンルの先駆けとなり米国では爆発的にヒットしました。プログラムのレベルも高く、スティーブ・ジョブズの相棒ウォズニアックが「8ビットマシン向けに書かれた最高のプログラム」と評したほど。堀井氏はAppleIIファンでもありました。


やっぱりHゲームは外せませんよね。『ウルトラ四人麻雀』はその後の『プロフェッショナル麻雀悟空』に繋がる革命的なタイトルで、桁違いの完成度を誇ります。また堀井氏はゴジラのエキストラに出演したとのこと。


当時のパソゲーの花形AVGも登場。やはり色々研究されていたのだと思います


ドラクエに大きな影響を与えたウィザードリィと夢幻の心臓。夢幻の心臓はファミコンに移植されなかったので一般的一般的にはマイナーな作品ですが、木屋善夫氏や内藤時浩氏も高く評価するなど日本のゲーム史に大きな影響を与えた名作なんです。

❹ドラクエの源流を求めて…


ポートピアのヒロイン沢木文江も軽井沢にゲスト出演。軽井沢のキャラで一番美人😍

今回は堀井雄二さんのインタビューを特集しようと思ったのですが、いつの間にか「堀井ミステリー三部作」の記事になってしまいました。やはり稀代のストーリーテラー、堀井氏の原点はポートピアにあったように思うのです。


軽井沢のヒロイン高木久美子は美少女キャラとは言い難いですが、天真爛漫で心優しい性格が魅力的なキャラクターでした。視覚ではなく物語でプレイヤーを惹きつける作風はドラクエにも引き継がれています。

僕はドラクエフィーバーの直撃世代なのですが、一方で「堀井さんのアドベンチャーやパソコンゲームが遊べないのは残念だなあ」と一抹の寂しさを感じていました。今回当時を振り返りながら、改めてその気持ちを思い出しましたよ。


ここら辺の漫画的演出は漫画家志望だった堀井氏ならでは。

次回は「オホーツクに消ゆ」幻の続編?があったのかも知れないという謎に迫りたいと思います。お楽しみに!


軽井沢終盤ではゆう帝こと堀井雄二先生自らが登場。
先生素晴らしい作品達をありがとうございました🙇

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                       サイボーグMSX


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