おていの喜びと歌麿の寂しさ|べらぼう26話「三人の女」
大河べらぼう26話、「三人の女」。
一体三人の女とはそれぞれ誰だったのか?
まさかの展開に驚きましたが、再度見直してなるほどと納得。蔦重の実母も現れ、米騒動から田沼家にいよいよ暗雲が立ち込めはじめた回。おていの喜びと歌麿の寂しさをメインに、ドラマに出てきた出版物の紹介と共に感想・考察していきます♪
◎前回25話、「灰の雨降る日本橋」についての感想・考察はこちら。蔦重の人たらしの才能が遺憾なく発揮された回、浅間山の噴火にまつわる話も盛り込みました。あわせてどうぞ。
三人の女、実母とおていと、そして歌麿
一人目、実母おつよ
米の不作にあおりを受け、ふらっと江戸に舞い戻ってたおつよ。このおつよさんは実に「人たらし」でしたね。なるほど蔦重の母親だけあるなと思うほど。高岡早紀さんのビジュも横浜流星の母親としてピッタリでした笑
米騒動もそうですが、おつよは現代のシングルマザー問題と重なります。どんな時代も一人で子育てして生きていくのは大変なこと。蔦重は駿河屋の親父さんたちに育ててもらって今があるわけですが、ふと思ったのは、「母親は何があっても我が子を自らの手で育てなければならない。そうでなければ愛情がないということだ」という呪いに私たちはかかっているのかも、ということ。
やむにやまれぬ事情がある中で、手放したことで救われる命もある。もうすこし、そのあたりをゆるく考えたほうが、親ばかりか子も救われるのでは、などと考えてしまいました。
二人目、妻おてい
さて、二人目は蔦重の妻のおていさん。
吉原のパリピに見える蔦重が、当代きってのクリエイターたちとアイデアをぶつけあって作品を作っていく様子を見、また、お忍びで耕書堂に現れた田沼意知のような高位の武家とも付き合いがあることに驚きます。
おていさんとしては、漢籍に通じているわけでもない蔦重の本屋としての才覚を正直甘く見ていたのかもしれませんね。目の前の蔦重は知識というよりも生きた感情で人の心を動かしていく。そして吉原のネットワークによる、身分を超えた幅広い人脈をものにしている。それこそが蔦重の商売人としての才能なのですが、その才能をまざまざと見せつけられて今までの自分の価値観が壊されてしまったような衝撃があったのでしょう。
真面目すぎるゆえの身の引き方。
しかし、追いかけてきた蔦重はおていさんにこう言いました。
「出会っちまった。同じ考えで同じ辛さを味わってきた人。おていさんは俺が俺のために目利きした、俺のたった一人の女房でさ」
蔦重、二度目の直球プロポーズ。
説教くさい話も面白いなんて、ありのままのおていさんを受け止めてくれたんだから、もはやおていさんが迷う必要はなくないなくないなくない?(何かしらのボタンがあったら連打連打)。
ようやく二人の寝室の衝立も取り払われて、結ばれた二人。
しかし、その近くの部屋では「よかったな、蔦重…」と呟きながら布団をかぶって一人寂しさに耐える人物あり…。
第三の女、歌麿
たぶん、皆さん思いましたよね。歌麿の部屋変えてあげてーー!!と。いやいや、あれだけの大店だから部屋数もあるでしょうに。見てるこっちが居たたまれないわ。
そう、三人目の「女」は歌麿でしたね。
おつよさんが「蔦重は歌麿の念者(男色の兄貴分)かい?」と勘繰るほど2人の仲は親密ですが、これは今までの二人のいきさつや歌麿の過去を知っている視聴者には「そうじゃないけど、それに近い関係、だよね…」というように思えます。
蔦重も歌麿も、共に肉親の情に薄い。ただ蔦重は駿河屋の親父さんに育てられ、吉原という地で自分の居場所を持っていたからまだしも、歌麿は母親に売られ、罵られ、その母を大火事の際に見殺しにしてしまったという過酷なトラウマを抱えています。→詳しくは<べらぼう18話:歌麿の過酷な過去と一炊の夢を考察!>記事へ。
そんな歌麿がようやく安住の地を見つけたのが、蔦重のそば。蔦重の一番でいること、蔦重に必要とされることが、歌麿のアイデンティティになってしまった。
今回も蔦重から狂歌の歳旦集を作るのにお前の絵がいると言われたらいそいそしてましたし、出来上がったら得意そうに「こんなに言うこと聞く奴は俺しかいねぇからな、俺いないと困りそうだからいてやるよ」なんてうれしさを堪えながら言ってましたね。まるで親にほめてもらいたい一心の子供のようで、かわいいけれど胸が締め付けられます。
そんな歌麿が、自分の「歌麿」という名を変えて「千代女」とした理由を、
「生まれ変わるなら女がいい」
と言ったのは、もうエモ過ぎて言葉もなし。エモいわれぬとはこのことか。
もし自分が女だったら、蔦重の側に堂々といられる、ということでしょうか。妻となっていつまでも蔦重の一番でいられるのに、と?
歌麿はご存知のように、女性の内面までも描いたという美人画で有名になります。もしかしたら、その美人画には自分の願望が込められていた、あるいは投影していた…という流れになるのでしょうか。
ドラマを最初から見ている者にとっては、実は本作の蔦重のヒロインは歌麿じゃないのかと、今回でより一層思ってしまいましたが、皆さんはどうでしたか?
蔦重が売り込んでいた作品は?
今回のドラマ内では、おつよさんが髪結いをしている間に蔦重が錦絵を見せたり、本の売り込みをしていましたね。
<今回蔦重が売り込んでいた主な作品>
北尾政演「青楼名君自筆集(せいろうめいくんじひつしゅう)」

御存商売物(ごぞんじのしょうばいもの)

廓𦽳費字盡(さとのばかむらむだじづくし)

小野篁歌字尽(おののたかむらうたじづくし)

辞闘戰新根(ことばたたかいあたらしいのね)

さらに上記に加え、歌麿が夢つながりで「金々先生栄華夢」(恋川春町作)と「見徳一炊夢」(朋誠堂喜三二作)をつなげたりしていましたね。
さすがにエンタメ小説の黄表紙と教科書である往来物をついでに買っていく、というのは考えづらいのですが、ドラマを見ている視聴者にわかりやすく当時の出版物を紹介するという流れだったのでしょう。
品の系図も解説の延長線上の創作のようです。そもそも、当時雨後の竹の子のように勝手に出版されている本を、何かに紐づけながら系統立てて紹介するって大変ですよね。しかし、ドラマのスタッフさんはあの系図を3か月かけて作られたそうで、大変なご苦労があったようです。いや、見てみるとスゴイ!
▶【大河べらぼう】のべ650以上の作品を網羅!「品の系図」製作秘話
おわりに(次回はとうとう意知が…つらい!)
今回、ハッとしたのは松前廣年が、花野雲助=田沼意知ということに気づいてしまったこと。
一体、蝦夷地の話はどうなっていくのでしょうか。
また、佐野政言も気がかり。とうとう次回は…。
ヤングケアラーな佐野政言のことも、なんだか不憫でならないので、意知にも感情移入していますが、政言の気持ちもわかってしまう。見たいけど見たくない。
来週と再来週は辛くなりそうですが、これもドラマの醍醐味と心してテレビの前に座ることにしましょう。
あなたは、どの「女」に共感しましたか?
あるいは次回の予告編が気になりますか?
気軽にコメントくださいね。
それではまた、次の記事でお会いしましょう~♪
『べらぼう』をもっと楽しむなら!
べらぼう感想マガジン:毎話のディープな感想や江戸文化の裏話をたっぷりお届け! ドラマの魅力をさらに深掘りしたい方はこちらをフォローしてチェック♪
黄表紙のぞきシリーズ:べらぼうにも登場した『金々先生栄華夢』や『楠無益委記』、『御存商売物』など江戸の黄表紙を当時のレイアウトのまま現代語訳で楽しめるシリーズ。大河べらぼうのお供に最適です。通販サイトアリスブックスからどうぞ♪

いいなと思ったら応援しよう!
江戸の面白ネタを掘り起こして発信中。サポートしてもらえると、さらに楽しい記事をお届けできます!