寄生虫|【狸の短編小説】
街の音が、頭の中にこびりついていて気持ち悪い。車の走行音、人々の足音、工事の音、人々の話し声。その全部が、私の頭の中でうごめく「精神寄生虫」の羽音みたいだ。
奴らは頭の中に「思考の巣」を作って、考えを奪い合う。人々はそれを「会話」と呼び、唾や息を通じてお互いの虫を交換している。人によっては、それを自分一人で完結させる強者もいるらしい。
自分自身の考えが、ただの借り物の知性だなんて、誰も気づいていないのだろう。
友達が喰われたのは、雨の日の喫茶店だった。向かいに座った男が、うまい言葉で友達の心の壁をこじ開けた。そいつは「コンセプト・イーター」だった。
男がニヤリと笑った瞬間、友達の瞳から光がすっと消えた。魂が抜けたように、ただ頷くだけの空っぽの人形になった。世間では、これを「論破」と呼ぶらしい。
私は、そのすべてが許せない。他人の頭を乗っ取る捕食者も、餌になる私たちの中の、内なる侵略者も。
自我の幻想に付き合うのは、もうやめにしよう。この頭の中の「脳内植民地」を、きれいさっぱり掃除すると私は誓った。
古びた機械。二つの音叉みたいな金属をこめかみに当てる。スイッチを入れると、耳には聞こえないキーンという振動が頭に響く。
最初に消えたのは、どうでもいい知識だった。無駄に覚えた円周率の数字に、雑に済ませた昨日の夜ご飯。
次に、大切な思い出が剥がれ始める。忘れていた子供の頃の記憶が、シャボン玉みたいに浮かんでは消える。
初めて自転車に乗れた時の胸のときめき。あれが最初のひらめきの寄生だった。好きだった彼女の言葉の温もり。今ある巣のどれくらいが、彼女から移ってきた虫のものだろう。
巣が壊れるたび、胸にポッカリ穴が開くような寂しさと、鳥かごから出られたような不思議な安心感が混ざり合う。思考汚染はどんどん洗い流されていった。
やがて、振動が止まった。目を開けると世界は、ただそこにあるだけだった。
テーブルの上には、茶色い液体が入った白い入れ物がある。前はこれを「コーヒー」と呼んで、香ばしい匂いや苦い味を好んでいたはず。
でも今、それは何の意味も持たない、ただの液体だ。窓の外では、人々が何かを話している。前はうるさくてたまらなかった、あのうごめきが今や、何の感情も起こさせない。
音のない古い映画を見ているようだ。彼らは歴史の奴隷として、目に見えない何かを運び続けている。人間と虫が混ざり合った、一つの巨大な複合生命体なんだろう。
俺は、その輪の中から完全に外れた。ずっと求めていた無思考の静寂。考えることをやめる、精神のオフライン化は終わった。俺はついに、何かが欠落した人間になれた。
ただ、静かだ。

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