意味の墓場|【狸の短編小説】
天井からは、かすれた句読点と意味を失った助詞ばかりが静かに降ってくる。
湿った紙の匂いが、澱んだ空気に溶けていた。
ここは、物語になれなかった言葉たちの墓場。
白い手袋の男が、機械的な手つきで紙の山を仕分けている。
編纂官の彼は、価値ある断片を拾い上げては分類をし、再利用の道を用意する。
ついに私もここまで来てしまった。
私の紡いだ一枚が彼の指に挟まれる。
紙の上に並ぶのは、他者の理解を拒む、私だけの景色。
彼はしばらくその文字列に目を落としていたが、やがて小さく首を振る。
彼には私の価値が見えなかった。
彼には彼の基準があったから。
彼の指から離れて、私はヒラヒラと舞う。
音を出すこともなく、壁に開いた暗い口へと吸い込まれていった。
全てが溶かされ、無名の繊維へと還る場所へ。
誰にも理解されず、部品にすらなれなかった私は、ただ静かに消えていく。
彼はその光景を、ただ見ていた。
叫ぶことも、嘆くこともしない。
彼がインクで汚れた指先を広げていると、また新しいコンマがひとつ、ポトリと落ちてきた。
今日も、彼は仕分け作業で忙しい。

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