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音楽とわたくし(軽音部編)

※続き物です。音楽とわたくし(小学生編)、(放送部編)に続くお話になります。

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私の初バンドはキーボードだった。


頼まれたのは本番1週間前。
バンドは元々キーボード抜きでやろうとしてたけど、1曲キーボードを使ったブルースっぽいソロ(ギターとユニゾン)があって出来る人を探しているらしい。
その他の曲もキーボードが入れば音が厚くなるのでウェルカムらしい。
どないしましょ。


「良いよ!」と二つ返事で返したい、、、のは山々だけど、問題がある。
軽音楽部のライブ会場は全校生徒の9割が教室に向かう時に通る、中庭のような所で行われる。
ステージがあって、ベンチもある。しかも1階から5階の全ての教室の廊下側から丸見え。
えっ公開処刑じゃないっすか。
めちゃくちゃ目立つ場所。
軽音部なんて入る人は目立ちたがりが多い。
私目立ちたくないんですけど。
晒し者は嫌なんですけど。

あの頃の私は緊張しい。
目立つのは好きじゃない。
そもそもブランクがあるのに1週間で形になるのか?
こんな所でしくじったら滅茶苦茶目立つ。
末代までこれをネタにからかわれる。
恐ろしい。
けど、映画のエンディングの曲は提供して欲しい。
友達は今日も不眠不休で編集してる。
どうせなら映画も最高の出来で上映したい。
仕方ない。考えて見ると既に映画に出てる。
目立ちたくないなんて今さらだ。
編集してる友達宜しく、私も1週間缶詰めすればいけるだろう。


「いいよ」
私は覚悟を決めて返事をした。


さて、元々キーボード無しでやろうとしてた曲達なので、そこまでまで難しそうな曲は無かった。
ソロの部分も正確にはピアノとギターリフのユニゾンに口笛をのっけたもの。
しかもブルース。少し位しくじっても味って事で誤魔化せるだろう。


そんな事を思っていた時期が有りました。


いやー難しいね。
人と合わせて弾くのは難しい。
今まではピアノなので、一人で弾いていた。
(しかも小学校で辞めてるのでブランク有り)
連弾をする人だったら問題ないのかもしれないけど、私はしたことがない。
だから皆んなで合わせるって事が初体験。
合わせてるのに絶妙に合っていない。
間違えても容赦なく曲は進んでいく。
なんじゃこりゃあ。


音楽の授業でリコーダーで皆んなで合わせるとかはしたことがある。あれはでもスイミーみたいなもんで、私はその他大勢の一人。
見えない力で誘導されてる感がある。(いや、魚はしくじると捕食されるので、そんな生易しいものじゃ無いけど。)

今回は明確に私一人で音楽の推進力の一端を担う。
その重い責任に少しゾッとしてしまった。


コツとかは無かった。
家では音源にひたすら合わせて、弾きまくる。家に帰ってから4時間は練習する。
練習はピアノでしてたので深夜は出来ない。
キーボードがあれば、ヘッドホンで静かに練習出来るけど、そんな物はない。
兎に角練習できる時間は練習した。
小学生の私がみたら「気でも触れたか?」と思われると思う。
実際気が触れていたのかもしれない。
兎に角、からかわれたくない一心で一週間練習しまくった。


話は変わるが、我が放送部は学校内で絶大な権力を持っていた。学校内で行われるイベントの音響を全て取り仕切っているから。
放送部が居ないと入学式、卒業式は勿論、文化祭、体育祭、校内放送、入試、何故かうちの体育館で行われる近隣幼稚園の運動会、全ての催し者が行えなくなる。
音響設備がガチの学校だったので、先生達は音響について全く分からない。放送部に頼るしかない。



生活指導の鬼瓦みたいな顔の先生ですら、授業に遅れても「放送部の仕事で遅れました」の一言でフリーパス。
無敵の印籠。
それが放送部。


なので、文化祭当日のクラスの出し物の調整は比較的楽だった。
そもそも、文化祭の校舎の音響や、メインステージで行われる各種出し物の音響、各教室のテレビに映し出されるそれぞれのクラスの出し物の動画生中継もやっていて、大体の放送部員は死んだ顔して仕事をしているのをクラスの皆んなが知っているっていうのもあったし。
よく考えたら高校3年間で文化祭で遊んだ記憶はない。3年間、朝の6時位から夜の9時位まで働いていた。


そして放送部も映画のためにライブに出る私を応援してくれて、生放送やステージの音響のシフトを軽くしてくれていた。
その分私は練習に打ち込む。
もう本番ギリギリまで、キーボードを友人に借りて部室でずっと練習していた。
シフトの時間以外は音楽漬け。
多分小学生の頃の練習の総量より、この1週間の方が練習してたんじゃないかって思う。


本番。
客席には物凄い人がいる。
客席どころじゃない。
2階から5階までベランダや窓からこちらを見る、顔、顔、顔。
視線の逃げ場無し。
昔「緊張したら、見てる顔は馬鈴薯だと思え」と言われたけど、「ここは何処の北海道?北見市かしら?」なんて冗談を考える余裕もなかった。

とは言え、緊張するかと思いきや、そこまではしていなかった。私は他の人が緊張してるのを見ると冷静になるタイプ。
ギターの子がガチガチになっていたのを見て我に返った。
我に返ったはいいけど、ギターの子が不穏過ぎる。ヤバそうな匂いをぷんぷん発してる。

出だしは、ギターのオクターブ奏法のリフが4小節。ソロ。ガチガチのギターの匙加減で、この曲のテンポが決まる。
ヤバくない?
ギターの後ろ姿は、見るからに挙動が不審だ。きっと目も泳いでいるだろう。
照明が暗くなる。
スポットライトが当たったる。
ギターがピックを持ち替えストロークを開始した、次の瞬間、、、


ギターは盛大にミスった。

(続く)


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