(29)【コーヒーだけ、残して】 人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。-失踪編-
■この物語は筆者の実体験をもとに執筆しています。
・正直、極限まで恥をさらしてます。
・僕が生きてきた記録(ノンフィクション)です。
・ほぼ毎日更新を目指しています。
【コーヒーだけ、残して】
朝4時。
目が覚める。
昨日と同じ時間。
同じ部屋。
___少しだけ、違う。
体を起こす。
コーヒーを淹れる。
湯気が上がる。
香り。
いつもと同じはずなのに、
どこか遠い。
一口、飲む。
味はする。
それだけだった。
荷物をまとめる。
多くはいらない。
必要なものだけ。
それだけでいい。
部屋を見渡す。
何もない。
___いや、違う。
何も"残さない"だけだ。

「おはようございます。」
松下さんがいた。
「おう、早いな。」
いつもと同じ声。
いつもと同じ空気。
「___もう行くんか?」
ほんの少しだけ間があった。
「はい。」
それだけ答える。
「そっか。コーヒーあるか?」
「コーヒーメーカーに、
残してあります。」
一瞬だけの沈黙___。
何も言わない。
何も聞かない。
それでいいと思った。
外に出る。
3月上旬。
朝の空気。
少し冷たい。
空は、まだ静かだった。
振り返らない。
振り返る理由も、もうない。
置いてきたコーヒーは、
きっと、もう冷めている。
それでもいいと思った。
(完)
「ここまで読んでくれた人へ___」
あの朝、
僕はコーヒーだけを残して、その場を離れた。
でも、
それで全部が終わったわけじゃなかった。
この先の話は
【新聞配達編】へ続きます。
失踪のあと、
僕は新聞販売店で働くことになりました。
そこで始まったのは、
想像していた“再出発”とは少し違う日々でした。
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「人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。」
【第一章・失踪編】
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→第1話から読む
【第二章・新聞配達編】
→目次から読む
→第1話から読む
