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[10]【転倒。泥だらけの新聞】人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。-新聞配達編-


■この物語は筆者の実体験をもとに執筆しています。
・正直、極限まで恥をさらしています。
・僕が生きてきた記録(ノンフィクション)です。
・ほぼ毎日更新を目指しています。


【転倒。泥だらけの新聞】


滑った___。

次の瞬間、身体ごと地面に叩きつけられた。

鈍い音。
遅れて痛み。

そして___

新聞が、宙に舞った。

泥だらけの新聞。
破れた新聞。

チラシを楽しみにしている人もいるはずだ。

終わった___。

とにかく、新しい新聞を届けなければならない。
でも、足りない。

圧倒的に足りない。

社長は電話をかけ続けている。
系列販売店に頭を下げて、新聞をかき集めている。

僕は___

僕は、何も出来ない。



「どのあたりでコケたんだ?
そこから部数を逆算して、クレーム来る前に届けるぞ!」

【どこで?なにが?コケた?】

頭の中が追いつかない。

「確か___小山さんの所です。」

「ヨシ、それなら150部要るな。
社長に、あと70部って伝えてこい。」

「お前はこれ持って、小山さんの所から
一件一件謝って交換してこい。
暗くて泥に気づかなかったって言え。
いいな?」



僕は、ひたすら謝った。

一件一件。
頭を下げて。

今できることは、それしかない。



気づけば、7時。

1時間以上の遅れ。

時間に厳しい家には、
すでに他の人が回ってくれていた。



ヘトヘトだった。

眠りたい。
逃げたい。



宮本さんが、
缶コーヒーを差し出してきた。

「この仕事してて、
転倒したことない人なんかおらんよ。」

「気にせんでいい。
問題は"その後"や。」

「まぁ___あんな量は初めて見たけどな。
歴代1位やろ。」

そう言って笑った。

その笑いに、少しだけ救われた。



社長に呼ばれた。

「身体、大丈夫か?」

「今回は対応できたから良かった。
次からは現場からすぐ報告してくれ。」

それだけだった。



それだけなのが___

逆に刺さる。



怒鳴って欲しかった。

その方が、楽だった気がする。



周りはもう、
何もなかったように笑っている。

その中に、自分だけが取り残されている。


「先に失礼します。」

誰にも目を合わせず、店を出た。


午後からの勤務___。

憂鬱だ。

でも___

それ以上に。

"何も言われなかった自分"が、怖かった。

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「人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。」

【第一章・失踪編】
目次から読む
1話から読む

【第二章・新聞配達編】
目次から読む
1話から読む


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