(13)【終わらない一日】人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。-失踪編-
■この物語は筆者の実体験をもとに執筆しています。
・正直、極限まで恥をさらしてます。
・僕が生きてきた記録(ノンフィクション)です。
・ほぼ毎日更新を目指しています。
【終わらない一日】
たたまれた布団。
枕元に置かれた、5,000円。
松下さんは、布団をたたむような人
ではない。
缶コーヒーを開ける。
やけに静かな朝だった。
財布を確かめる。
中身は、ちゃんとあった。
疑った。。。
一瞬でも、松下さんを疑った自分が、
ひどく情けなかった。
つい一昨日、
同じことをしたのは自分じゃないか。
理由も言わず、
勝手にいなくなる。
あの人にも、何か事情があるのかもしれない。
今日一日、今日一日だけ、待ってみよう。
そう決めた。
とりあえず外に出る。
やることもなく、足は漫画喫茶に向いていた。
静かだった。
こうして一人で、
何もせずに時間を使うのは、
ずいぶん久しぶりな気がする。
パソコンを開く。
「失踪者 仕事」
「身分証なし 働ける場所」
画面の中には、
現実的な答えはほとんどなかった。
求人をいくつかメモする。
気休めみたいなものだ。
コーヒーを飲みながら、考える。
松下さんが戻ってきた場合。
戻ってこなかった場合。
その先は、枝分かれして、
どこまでも続いていく。
どれが正しい道なのか、もう分からない。
ふと、松下さんの言葉を思い出した。
「道は踏み外しても、またそこに道ができる」
本当にそうだろうか。
そう思いながら、
ぬるくなったコーヒーを飲んだ。

携帯が震えた。
松下さんからだった。
「色々と目処がついた。
許してくれるなら、合流したい」
少しだけ、息を吐いた。
「もちろんです。昨日の宿にいます」
短く返した。
本当は、少し迷った。
宿に戻ると、
松下さんはもういた。
何事もなかったみたいに、
布団に座っていた。
「おかえり」
その一言に、
いろんな感情が詰まっていた。
正直、少し安心した。
でも、それ以上に。。。
どこか、引っかかっていた。
「金が底をついてな」
松下さんは、
少し照れくさそうに笑った。
「裏ワザ使うたんや」
「年下に世話になるわけにもいかんやろ」
親に連絡して、
金を送ってもらう段取りをつけたらしい。
「鹿児島に帰るって言うてな」
「。。。帰るんですか?」
思わず聞き返した。
「まさかや」
そう言って笑った。
方法は、郵便為替だった。
郵便局留めで速達。
届いたら、現金化する。
「保険証は期限切れやけどな」
「小さい郵便局は、そこまで見ん」
どこか誇らしげだった。
"裏ワザ"という言葉が、やけに現実味を帯びていた。
「明日の昼から夕方には届く」
「郵便局に届いたら
電話もらえる段取りもついてる。」
「だから戻ってきたっちゅうわけや」
そう言って、軽く頭を下げた。
人には、それぞれ理由がある。
一昨日の自分だって、
そうだったじゃあないか」
「今日、求人を少し見つけました」
メモを見せる。
「全部知っとるなぁ」
松下さんは笑った。
「でも、ここはええで。明日電話しようや」
その夜、
また二人で酒を飲んだ。
周りに遠慮しながら小さな声で、
くだらない話をした。
でも。
僕はまだ、
どこかで松下さんを疑っていた。
いや、僕だって、
いつ突発的行動に出るか変わらない。
情をかけすぎるのはやめておこう
と密かに思った。
(第14話【それでも、朝は来てしまう】に続く)
■創作大賞2026応募作品
(ホラー小説部門・サイコホラー)
・創作大賞2026応募作品なので、こちらも読んでいただけると巨大なエネルギーになります。
![夕日[第1章]へ](https://assets.st-note.com/img/1779816764-3kGZ9DUQp6gT0rYlOyJXhSnq.png?width=1200)
■ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
もし何か1つでも残ったら、
【スキ】で教えてください。
【フォロー】していただけると、
続きを書くエネルギーになります。
■はじめての方へ
・僕のメチャクチャな人生の紹介です。
→プロフィール
■以下連載(ノンフィクション)
・僕のメチャクチャな人生の恥を晒して書いています。
「人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。」
【第一章・失踪編】
→目次から読む
→第1話から読む
【第二章・新聞配達編】
→目次から読む
→第1話から読む
