メンヘラ彼女と別れるために、女装した話第2話:南行徳のアパートで、僕は服を脱いだ
※ 実話です。登場人物の一部は脚色しています。
別れてから少し経ったころ、彼女から連絡が来た。
「貸してたマンガ、返したい」
ジャイアントキリングだった。何巻か貸したままになっていた。駅で受け取るだけだろうと思い、待ち合わせ場所を聞いた。南行徳、と返ってきた。
南千住に実家がある彼女が、なぜ南行徳なのか。疑問に思いながら駅に着くと、「重いから部屋まで来て」と言う。仕方なく、指定されたアパートへ向かった。
ドアを開けて、すぐわかった。ここは彼女の部屋ではない。男の一人暮らしの部屋だった。狭くて、生活感があって、彼女の私物はほとんどない。僕と別れた直後に付き合い始めた男の部屋らしかった。
マンガを受け取って帰ろうとすると、彼女が言った。
「彼の部屋で、浮気のHでめちゃくちゃにされたい。泣きながら何度もしたい」
泣きながら、何度も頼んできた。
僕は少し考えた。この展開は、来るかもしれないと思っていた。だから準備していた。

「わかった」と言って、服を脱いだ。
シャツの下から現れたのは、黒い女性もののブラジャーだった。その下はショーツ。足にはパンストを履いていた。上から下まで、女性ものの下着で固めていた。
彼女はゆっくりと目をそらした。
しばらく沈黙があった。それから「お腹が痛い」と小さく言った。事には至らなかった。僕はゆっくり服を着直して、ジャイアントキリングを持って部屋を出た。
南行徳の駅まで歩きながら、僕は何も考えていなかった。夕方の住宅街はただ静かで、どこかの家から夕飯の匂いがした。

それ以来、彼女からの連絡は一切ない。
後日、共通の知人から聞いた話では、彼女は占い師になったらしい。南行徳の部屋の男とは別の、幼なじみの男と結婚したとも聞いた。その男に借金もしていたらしいが、そのあたりの詳細は僕には関係のない話だった。
ただ一つだけ、ずっと引っかかっていることがある。
あの日、南行徳に向かう電車の中で、女性ものの下着をスーツの下に身につけながら、僕はそれほど嫌ではなかった。むしろ、少しだけ落ち着いていた。
彼女から逃げるための道具として始めたはずが、いつの間にか、そうでもなくなっていた。それがこの話の、本当のオチかもしれない。
