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Zoe Osamaが語る「Mr. Nobody」の覚悟

20曲に詰め込んだ証明と家族への愛

LAエルエーEast Sideイーストサイドを拠点に活動するラッパーZoe Osamaが、ニューアルバム"Mr. Nobody"をリリースした。「俺はsomebodyなのに、nobody扱いされる」という皮肉を込めたこのタイトルは、数字と実績で自らの存在を証明してきた男の静かな怒りと自負を凝縮している。インタビューで語られたのは、サウンドの進化、The Pop Outでの転機、そして父親としての日常だった。全20曲を貫くのは、「信頼」と「成長」という二つのテーマである。


信頼が変えたサウンド:マネージャーSalisとの共犯関係

"Mr. Nobody"の完成形は、当初の構想とはまったく異なるものだった。前作"East Side with Love"のリリース後、Zoe Osamaはすぐに次のプロジェクトに取りかかったが、初期段階では前作や"Underrated"の延長線上にあるサウンドだったという。その方向性を大きく転換させたのが、マネージャーであるSalisの存在だった。

Zoe OsamaはもともとGarageBandやLogic、Pro Toolsを使い、自宅で音楽制作を行ってきた。いわば独学の叩き上げたたきあげである。そこにSalisがプロダクションとA&Rの役割を担い、より高いクオリティの制作環境へと導いた。「彼はすでにこの世界にいた人間だ。自分のコーナーにいる人間の言うことを聞いて、サウンドを引き上げなければならなかった」とZoe Osamaは語る。

だが、この信頼関係は一朝一夕で築かれたものではない。当初、Zoe OsamaはSalisの提案するサウンドをことごとく拒んでいた。「あいつの言うことは全部間違ってると思っていた。あんな音は聴きたくないってな」と率直に振り返る。転機は、SalisからThe Pop Outへの出演を告げられた日だった。最初は冗談だと思い「ふざけるな」と返したが、それが現実だと知った瞬間、Zoe Osamaの態度は変わった。「あの時だ。"分かった、引き下がって彼に任せよう"と思ったのは」と語る。キャリアのなかで常に「利用しようとする人間」と「加えようとする人間」を見極めなければならなかった彼にとって、Salisの実績は言葉以上の説得力を持っていた。

サウンドの進化について、Zoe Osamaは明確な哲学を持っている。「"Underrated"みたいな作品をもう一度作ろうとするアーティストがいるが、あれは無理だ。あの瞬間に起きたことは二度と再現できない」と断言する。同じ路線で2シーズンは持つかもしれないが、やがてファンは「同じ音ばかりだ」と離れていく。だからこそ、前作のビートが劣っていたのではなく、聴き手が慣れた音を更新する必要があったのだと認識し、より質の高いプロデューサーとの協業を選んだ。インディペンデントなアーティストが自らの音楽的成長をどうデザインするかという点では、自分の物語を所有せよ:LaRussellの独立哲学で語られた戦略にも通じるものがある。

その結果、全20曲という大ボリュームでありながら、アルバムは驚くほど一貫性いっかんせいを保っている。Watts Homie Quanによるナレーションが全体を繋ぎ、散漫さを感じさせない構成に仕上がった。Chuck Dizzleも「20曲もあるのにトラック18まで集中して聴けた」と証言しており、Zoe Osama自身も「正直、俺は他のアーティストのアルバムは4曲で切る」と笑う。

お気に入りの楽曲としては、"Gangsta Boogie Pt. 2"、"Crash Out"、"How U Like Me Now?"、"Princess Treatment"(K2icyyとKalan.FrFrの客演曲)、"Freak Hoe"(Cash Kiddとの共作)、"Weekend In Miami"(Seddy Hendrixとの共作)、そして"Party On The East Cide PT. 2"(Ab-Soul、Jayson Cash、P1との共演)を挙げた。特に"I'm Him"は、ウェストコーストのレジェンドSuga Freeへのオマージュだ。

Zoe Osamaが先人たちから受け取った影響についてはZoe Osamaが受け継ぐウェストコーストの知恵でも詳しく語られている。子どもたちが家でやんちゃをする日常から生まれた「誰がコンロつけっぱなしにしたんだ」というアドリブが、Suga Freeの語り口と融合した。「あいつが言いそうなセリフだった。聴いた瞬間、これは残さなきゃいけないと思った」とZoe Osamaは語る。

The Pop Outの衝撃と「ゴールド」の意味

Zoe Osamaのキャリアにおいて、The Pop Outのステージは特別な意味を持つ。Salisから出演を告げられた経緯は前述の通りだが、実際にステージに立つまでの心理的プロセスは、彼の人間性をよく表している。

リハーサルで会場の規模を目の当たりにした瞬間、Zoe Osamaは生まれて初めてパフォーマンスに対する緊張を覚えた。「普段は絶対にパフォーマンスで緊張しない。だけどリハーサルでステージに立って、あのでかさを見た時、"これが満杯になるのか"と思った」と振り返る。他のアーティストのパフォーマンス中に客席が埋まっていく様子を見ながら、彼は自分自身にこう言い聞かせていた。

"You got this."
「お前ならできる。」

人生で初めて、自分を落ち着かせると同時に奮い立たせなければならなかった瞬間だった。「もしミスったら、それで終わりだ。来た時と同じ速さで消える」という覚悟のなかで迎えた本番。観客が自分の曲を歌い返してきた瞬間、すべてが変わった。「あの時、ゾーンに入った。誰にも何も言わせない気分だった」と、当時の高揚を語る。

この体験は単なる一夜の成功ではなかった。The Pop Outでの反応が、Salisへの全面的な信頼を決定づけたのだ。マネージャーとアーティストの関係において、「マネージャーにマネジメントさせる。アーティストがマネージャーをマネジメントしようとしてはいけない」という原則を、身をもって学んだ瞬間だった。

もうひとつの大きな節目は、"Underrated"のゴールド認定だ。この楽曲が持つ意味については"Underrated"リミックスに刻まれた想いでも掘り下げている。レーベルとのパートナーシップが始まる前、完全にインディペンデントな状態で達成したこの記録は、Zoe Osamaにとって「可能性の証明」だった。「あれでプラチナが見えた。もう一枚ゴールドも取りたい。レーベルなしであそこまでいったなら、もう一度できるはずだ」と語る目には、次のマイルストーンへの確信が宿っている。LAのローカルシーンで独自の道を切り拓くアーティストの姿は、Kalan.FrFrが歩むLAの「第三の道」にも重なる。インディペンデントであることの困難と自由を、それぞれのやり方で体現しているのだ。

コンロの火と息子の声:父親Zoe Osamaの日常

アルバムのプロモーション、ミュージックビデオの撮影、インタビュー。多忙を極めるスケジュールのなかで、Zoe Osamaは父親としての責任を決して手放さない。インタビュー当日も、彼は5歳の息子Dashを学校に送り届けてからスタジオに向かい、撮影後にまた迎えに行き、そこからインタビュー会場に駆けつけるという綱渡りのスケジュールをこなしていた。

「自宅から学校まで車で7分なのに、歩くと57分かかる。地図を10回見直したが間違いなかった」と笑うが、その距離のせいで5歳の息子を一人で歩かせるわけにはいかない。前日はビデオ撮影を優先して息子を休ませたが、二日連続は許容できなかった。「ビデオ撮影に遅刻するしかなかった。Downtown LAダウンタウンエルエーまで行って撮影して、また戻って息子を迎えに行って、それからここに来た」というエピソードは、華やかなラッパーのイメージとはかけ離れた、ひとりの父親のリアルな日常を物語っている。

Zoe Osamaの父親としての哲学は明確だ。「とにかくそこにいろ。行けない時は、なぜ行けなかったかを子どもに説明しろ。俺が来られないのは、お前たちの頭上に屋根を保つためだ」と語る。そして、母親との関係が困難だからという理由で子どもから離れる父親に対しては、「裁判所に行け。30日で何かしらの権利は得られる」と厳しい。「自分の子どもを見捨てる人間は、自分自身のことも大事にしていない」という一言は、彼の価値観の核心を射抜いている。

5歳のDashは、父の音楽をYouTubeで自ら検索して聴くほどの理解を見せている。「あいつ、俺のことをDaddy Osamaって呼ぶんだ」と苦笑するZoe Osama。一方、14歳の息子Jadaとの関係はより複雑で、より深い。思春期の少年らしく、父親の言葉を聞いていないように見えた時期もあった。だが、ある日車に乗り込んだJadaがイヤホンで聴いていたのは、父の曲"Crash Out"だった。「おい、ストリーム数を稼いでくれよ、息子」と冗談を返したが、内心では「あいつはちゃんと見ていたんだ」と気づかされた瞬間だった。

普段はドリルミュージックを聴く14歳が、父のアルバムについて「お気に入りの曲は何?」と聞いてくる。「おい、インタビューでもしてるのか」と返しながらも、息子が自分の音楽に本気で関わろうとしている事実に、Zoe Osamaは深い喜びを感じている。現在では二人の関係は「親子というより親友」になったという。息子の友人Derekを週末に泊まらせ、「ティーンエイジャーの父親」としての新しいフェーズに入ったと笑う。「友達も含めて全員、掃除はさせるし、必要ならしかる」という姿勢が、彼の家庭観をよく表している。

家族への思いは、アルバムのラストを飾る"Celebrate"にも反映されている。「統計を乗り越えた。17歳まで生きられなかった仲間もいる。一緒に始めたのにゴールまで辿り着けなかった人間もいる。だからこそ、勝った俺たちはテーブルを囲んで祝うべきだ」という言葉には、East Sideイーストサイドで育った男の切実な実感がこもっている。祖母の家に親戚一同が集まった幼少期の記憶が、彼の家族観の原点だ。「家族の中心人物が亡くなると、集まりも消えてしまう。だから俺がその役割を引き受けたい」と語り、Airbnbを借りてバーベキューを開くなど、自ら家族を繋ぐ結節点けっせつてんであろうとしている。

さらに、父の死後まもなく、生き別れの弟の存在が判明したというエピソードも明かされた。DNA検査アプリを通じて連絡があり、会ってみると自分の兄と瓜二つうりふたつだったという。「俺が末っ子だと思っていたのに、もう末っ子じゃなくなった」と笑いながらも、LAという街で家族が離散りさんし再会する物語は、決して珍しくないと付け加えた。

「ノー」を覚えた男の次なる一手

この数年でZoe Osamaが身につけた最大のスキルは、「ノー」と言う力だ。「以前は何でもイエスと言っていた。断りたくなかったし、酒が入ると話を終わらせるために同意してしまうこともあった。だが翌日、相手は本気で覚えている」と振り返る。

ノーを言えなかった代償は、直接的にキャリアに跳ね返った。ショーや機会が増えるにつれ、周囲の人間が自分のイメージに悪影響を与えるケースが目立つようになった。「俺の見た目や周囲のイメージのせいで、仕事先がビビる。でも怖がられているのは俺じゃなく、取り巻きだ。そしてそれは俺の責任だ」という認識にんしきが、転換点となった。ビジネスを企業レベルで運営しながら自分自身であり続ける方法を、模索し始めたのだ。「全員は連れて行けない」という結論は、多くのアーティストが通過する痛みでもある。

ノーを学んだことで、ストレスは明らかに減ったという。「誰かの感情を傷つけるかもしれない。でも、お前らは俺を助けてくれていない。だからノーだ。気に入らないなら、それもノーだ」という割り切りは、残酷に聞こえるかもしれないが、自分と家族を守るための防衛線でもある。

世間からの誤解ごかいにも彼は向き合っている。見た目だけで判断される経験は今に始まったことではなく、Zoe Osamaの「職質」体験談でも生々しく語られている。「ドレッドヘアで見た目が怖い。近づくな」という先入観は、音楽を聴く前からリスナーを遠ざける。「誰がそんなこと言ったんだ? 俺はInstagramで遊んでるだけだぞ。自分では愛嬌があって面白い人間だと思っていたのに」と笑うが、イメージの管理が収益に直結するという現実は痛いほど理解している。外出時に必ず酒を手にしている印象についても、「カメラがある時しか外に出ない。リラックスするために飲む。でもそれが"いつも飲んでいる"ように映る」と分析し、意識的にその習慣を見直し始めたと明かした。

一方、ソーシャルメディアの活用においては、Zoe Osamaは独自の戦略を確立している。コメディ色の強いコンテンツに音楽をBGMとして乗せるスタイルは、「笑わせている間に曲を聴かせる。面白くて音楽も作るやつだと思わせれば、ストリームに繋がる」という計算に基づいている。この手法を多くのラッパーが模倣するようになったが、Zoe Osamaは「ソースを持っていけばいい。自分に合うやり方を見つけろ」と鷹揚おうように構える。重要なのは、このマーケティングが「演じている」のではなく、素の人格の延長であるという点だ。「ファサード(仮面)をかぶって別人になったことはない」と断言だんげんする。

SNS上のネガティブなコメントに対しては、Zoe Osamaは徹底したブロック戦略を取る。「"この曲ゴミ"。ブロック。"その服ダサい"。ブロック。"髪型変"。ブロック」と容赦ない。フォローしているのに悪口を言う人間の心理が理解できないという彼は、5000人以上をブロックしていると笑う。「俺にはネガティブを置く場所がない。2、3年前なら相手にしていたが、今はもう要らない。消す力が俺にあるなら、消す」という姿勢は、精神衛生の管理としても理にかなっている。時には返信をしてから2分後、相手が読んだタイミングを見計らってブロックするという「小技こわざ」も披露し、Chuck Dizzleを笑わせた。

今後の展望について、Zoe Osamaは2つの未発表プロジェクトと大物アーティストとのフィーチャリングを予告しつつ、当面の目標を明確にした。「1000人から1500人規模の会場をソールドアウトさせたい。それができたら、この仕事がうまくいっている証拠だ」という言葉は、派手な数字を追うのではなく、目の前のマイルストーンを着実に超えていこうとする彼の姿勢を象徴している。"Mr. Nobody"という皮肉なタイトルを掲げながら、Zoe Osamaは一歩ずつ、自分がSomebodyであることを世界に刻み続けている。

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