泰夢(たいむ)のお話:22
好きこそものの上手なれ…ゲームだってそうです!
それでは、どうぞ!!
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イヤホンを耳につけてゲーム機のスイッチをオンにする。
目をつぶっている泰夢(たいむ)の耳の中で、ゲーム機の起動音がひびくと、そうさスティックをくるりと一回転まわし、ボタンをタタタンっとリズムよくたたいた。
べつに決まり事というわけではないのだけれども、それがゲームを始める時によくやる泰夢のルーチーン、おまじないのようなものだった。
ゲームは泰夢にとっては特別なもので、とにかく面白いし一日中やっていてもぜんぜんあきない。
実はこの「一日中」というのは決して例え話ではない。
去年の大みそかの日、父と母から夜おそくまで起きていても良いと言われた泰夢は、一度やってみたかった事があるとたのみこんである実験をした。
それは「何時間ずっとゲームをし続けるられるのか実験」というもので、せっかく夜通し起きていていいのだから、食事の時もトイレの時も、ずっとゲーム機から手をはなさずに遊び続けて、どこまでやれるのかをためしたいと両親に相談し、二人からも大みそかの十二月三十一日の朝から、泰夢がゲームをやめるか、それともねてしまうかするまでの間は「絶対に文句を言わないし、おこらない」という約束を取り付けた。
父はともかく、母は泰夢の言うことをあまり信じておらず、どうせ二、三時間であきてやめてしまうだろうと思っていたのだが、ところが昼を過ぎても夕食になっても泰夢がゲーム機を手放す気配はなく、結局そのまま年が明けて一月一日の元日になり、朝におせち料理とおぞうにを食べるまえに、両親から「お年玉をわたすから、実験は終わりにしてゲーム機を置きなさい」と言われるまで、一度もねむらずにずっとゲームをし続けていたのだった。
結局その時は、おせち料理とおぞうにを食べ、初もうでに行く前に朝のおふろに入った所で急にねむ気がおそってきて、実験は本当に終わりになってしまった。
「あれがなければ、もっとゲームをやってたハズだ」
泰夢はいつもそう思っていて、つまり一日ずっとゲームをしていても本当にあきたりねむくなったりしないぐらい、大好きなのだった。
「この時間だったら、だれか反応するはずだよな」
ネット回線の設定をすませた泰夢は、友だちとやっているロールプレイングゲームを立ち上げる。
画面が切りかわり、森の中の木でできた小屋がうつし出され、泰夢のキャラクターである戦士がその小屋に入っていく。
戦士が小屋の中のテーブルに付くと、頭の上にふき出しが表示され、そこからいつもの仲間によびかけをする。
程なくして、次から次へと小屋にいろいろキャラクターが入ってきて、あっという間に十人をこえる友だちが集まった。
おたがいにふき出しに文字やスタンプで近きょうをやり取りする。
ゲームの中で、実際にクエストやモンスターをたおして遊ぶのも楽しいけれども、こうして友だちと話をしたりキャラクター同士でふざけ合ったりするのも泰夢にとっては楽しい時間だった。
しばらくの間、そうして時間を過ごした後に、森の方へ資材を集めに行く集団と、モンスターを相手にうで試しをするという連中、そしてゲームを止めてログアウトするという人間にわかれ、それぞれに小屋から出ていく。
泰夢はどうしようかと考えたが、せっかくこうしてコンビニのイートインスペースも確保したのだから、すぐにゲームを終わりにするのはもったいないと思った。
しかし、かといって鉱石をほったり木を切ったりして、武器や道具を作る素材になる物を集めていく資材集めに合流するには、帰りのバスの時間もあることだし、そこまではちょっと付き合えない。
であれば、モンスターがわき出る場所に行き、ヤツらをたおしてうで試しをしようと思って━━そして、昨日の車の中と祖母の家についてからの時間で、ひたすらレベルアップした自分の戦士の新しい技も試したくて━━モンスターをたおしに行く連中といっしょに出かけることに決めた。
「やっべー! タイム君の戦士、強くなってんじゃん!」
「えー、それってさ、新しい技でしょ? もう一度見せてよ!」
「べつにいいよー、コレって消費も少なくてマジでオススメ。
……オレ、いまバアちゃんちに来てるんだけど、テレビもネット回線もなくてさ。
だから、ソロでレベル上げして、スキルをゲットしちゃったんだ」
友だちのキャラが見物している前で、きょだいなモンスターといっき打ちをいどんでいる泰夢の戦士が、いっしゅんで相手のふところに飛びこむと、両手に構えたオノを大きくふり回し、そのままたつまきのような暴風とともに空中にふき飛ばしていく。
その様子にまわりの友だちたちが大さわぎし、泰夢もほこらしげに次々と大技を決める。
勉強も運動もあまりパッとしない泰夢だったが、ゲームのうで前だけはちょっと友だちに自まんできる取りえのひとつだった。
「ふぅ、楽しかった! それじゃ、そろそろ帰るかな……」
コンビニで買ったチョコバーとポテトチップを食べきり、ジュースの残りを一気に飲みほした泰夢が、そう言ってイヤホンを取り外す。
いつの間にかすっかりと日が落ちていて、コンビニのガラスに店内の様子がうつし出されていた。
「━━━━?」
そこに、どこかで見たような白いすがたを見て、泰夢が横を向く。
自分の席のとなりにはさっき置いたデイパックが置いてあったが、そのさらにとなりの席に、白いたっぷりとした半そでのシャツとベージュのキュロットスカートの━━
「えっ! なっ、なんで!」
思わずそう声が出た。
そこで本を読んでいる女子━━それは、例の女子のすがただった。
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我に返った瞬間にビックリすることってあります。
では、次回もお楽しみに!
小林るい
