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泰夢(たいむ)のお話:9

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コンビニは便利、というお話です!
それでは、どうぞ!!

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 じつは今日が、泰夢(たいむ)の通っている学習スクールが開いている「夏休み強化コース」の初めの日だった。
 夏休みということなのだろうけれど、ごていねいにも朝から昼休みを取って夕方まで、六時間目をもうけてみっちりと授業が入っていた。
 これじゃ学校に行っているのとてんで変わらない。
 いや、それどころか、いまの泰夢は祖母の家に来ていて、当然まわりにはいっしょに遊んだりさわいだりする友だちが一人もおらず、よけいに始末におえない。
 昨日の夜に父が帰ったあと、台所であらい物をしている祖母を手伝いながら、ぐちをこぼしたことを思い出した。
「あらら、それは残念だねぇ。でも泰夢はやさしい子だからだいじょうぶ。
 こっちでもすぐに友だちができるよ」
 ふきんを手に食器をふいている泰夢に、祖母はそう言って笑いかける。
 その笑顔にあいまいな返事を返し、手伝いを終えた泰夢は、キッチンのテーブルに明日の学習スクールに持っていくものを広げて、ひとつずつわすれ物かくにんをはじめた。
 いちばんにはじめに大事なゲーム機と充電たっぷりの予備バッテリーを真っ先にデイパックに入れ、筆記用具やらノートやらをその後からドカドカとつっこんでいく。
 そして最後に、学習スクールのプリントを手にとってじっと見つめ、そこにくるりと赤えんぴつで丸く印をつけた。
 祖母が言ったことはわかるけれども、自分がこぼした不満はそんな意味ではない。
 気の合ったいつもの友だちと遊びたいのであって、友だちを作りたいのではないし、こんなところまで来てわざわざ友だちなんか作る気もない。
(ばあちゃんの言うことって、いっつもなんかズレてんだよなぁ……)
 そんなことを思いながら、泰夢はプリントに付けた印をじっとみつめてむずかしい顔をする。
 学習スクールまでの案内地図に書かれたその丸い印の中には、見慣れたコンビニエンスストアのマークがあった。
 家の近くにもあるそのコンビニには、買ったものを食べたり飲んだりできる「イートインスペース」というものがあり、泰夢も友だちとよくそこにいりびたっていた。
 夏はすずしくて冬は温かいし、あまりさわがしくすると店の人ににらまれることはあるけれども、泰夢たちにとってはちょうどいいたまり場だった。
 そしてなにより、そこではインターネットの無料回線が使いほうだいだったのだ。
 同じマークがあるということは、きっとそのコンビニに行けばネット回線がつながるはずで、つまりゲーム機でいつものみんなとやり取りができるということになり、いっしょにゲームで遊ぶことだってできるのだ。
(コンビニって、ホントに便利だよなぁ)
 このコンビニが泰夢の心を少し軽くしてくれた。
 うまくいけば、このたいくつでつまらない夏休みも少しは面白くなるだろうし、いずれ母が弟を出産するときには自分の家に帰ることになるだろうけれども、その間のつまらないスクール通いもあるていどは楽しめるような気がしたのだ。
 コンビニで好きなポテトチップスのひとつでも買って食べながらしていれば、半日やそこらは、そのイートインスペースでゲームをしていてもおこられたり追い出されたりはしないだろう。
(━━父さんから、たんまりこずかいをもらってるしな。
 午後はぜんぶ自主学習って日もあるから、そん時はずっとコンビニにいりゃあいいや!)
 そう考えると、少し気分が楽になった気がした。
 デイパックの中につっこまれてくしゃくしゃになった学習スクールのプリントの、案内地図に書かれた赤い丸印を見て、泰夢の顔におもわず笑顔がうかぶ。
 イヤホンから流れる曲に合わせて、鼻歌のひとつでも出そうだった。
 プリントを再びデイパックにおしこむと、いきおいよく前に顔を上げた。
 そんな泰夢の目の中に、さっきよりもハッキリと周りの見事な風景が飛びこんでくる。
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楽しいことの前の時間も、なんだか楽しいものです!
では、次回もお楽しみに!

小林るい


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