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泰夢(たいむ)のお話:10

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いろいろなことに気付く泰夢です。
それでは、どうぞ!!

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(山って……、思ってるほど緑色じゃないんだな)
 どちらかと言えば緑よりも暗い黒に近い深い色をした山の向こうに、明るくて白くてうっすら青い空があり、そこに小さな入道雲の子どもみたいなものがうかんでいる。
(……それに、三角じゃなくて、なんかボコボコって曲がってる)
 ふと、目の前に広がる大きな景色に目を取られて、泰夢(たいむ)はその場にぽかんとなった。
 学校の図工で絵をかく時に、なにも考えずに緑と青の絵の具チューブをぎゅーっとしぼり出して、筆でグリグリとやってしまうのだが、こんどからはしっかり見てかかなくちゃダメだなぁと、泰夢は思った。
 真っ直ぐなところが一つもなくて、山も雲も森も畑も、全部が、例えて言えば手で引いた線みたいに全部が曲がって見える。
 泰夢の住む街では、ほとんどお目にかかれない景色だった。
 なにしろ、学校の一番上の教室から外をのぞいて見ても、せいぜいゴムくさくてやたらに青い校庭が小さく広がっているだけで、周りはマンションやビルに取り囲まれているから、まっすぐで真四角、ときどきは、いかにもカッコウをつけたっぽく感じる丸や三角も見る事はみるけれども、こんなに自由でやわらかい感じがするものは何もなくて、そして、これほどに見晴らせる場所など、一つもないのだ。
 こうしてみると山が多くて平らな場所が少ないなぁと泰夢は思う。
 学校の授業でも日本という国は山地が多くて平野が少ないのが特ちょうなのだということを教わった。
 日本には木の生えた山がたくさんあるので、そこにふった雨が集まって土をけずって谷になり、河川となってやがて海に流れ出ることでいろいろな地形をつくっているらしい。
 本当に口をぽっかりとあけて、しばらくその山々の様子を見ていた泰夢だったが、そのうちに、自分が自然と笑っていることに気が付いた。
 コンビニがあることを見つけたのが良かったのか、目の前の大きな景色がそうさせたのか、それはよく分からなかったけれども、昨日までの重い気持ちはもう完全にどこかに行ってしまっていた。
 すっかりと気を良くして、そうした風景を楽しむようにしていると、ふと、うなるような音が聞こえた。
 あわててイヤホンを外してそちらを向くと、重そうな車体をゆらす古めかしいバスが、まるでせきこんでいるみたいなエンジンの音をさせて、ノソノソと坂道を登ってくるのが見えた。
 細い道路にせま苦しそうにしているそのあずき色の線の入ったバスが、ゆっくりと泰夢の目の前に止まる。
 バスの真ん中にある乗り口にある機械に、夏休みの間は必要だからと持たされたスマートフォンをかざすと、ピロンという電子音がした。
 ふだんは持たせてもらえないが、泰夢のスマホは家にあり、大きなショッピングモールに買い物に行くときなどは、迷子防止のために持たされることがあった。
 今回も祖母の家でしばらくひとりでいることと、なれない場所でバスにのってふもとの町の学習スクールまで通うということで、バス代をチャージしたスマホを持たされている。
 バスに乗って乗客のほとんどいない車内を右に左に見回し、一番うしろの席でゆったりとしようとも思ったが、運転手席の左にある一番前の席あいていたのでそこに決め、二人がけのイスのまど側にすわり、横のシートにデイパックを置いた。
 よく母からは、荷物は自分のひざの上に置かなくてはダメだと言われるけれども、こんなにお客がいないのだからだいじょうぶだろう。
 がくんと体がゆれてバスが走り出すと、風がまどのスキ間から入りこんで、ほほをなでていくのがわかった。
 それに合わせて、体がちょっと引かれるようになって、バスの外の景色が後ろのほうへゆっくりと、そしてすこしずつ速く流れていった。
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バスが到着、ついに出発進行です!
では、次回もお楽しみに!

小林るい


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