泰夢(たいむ)のお話:11
バスにゆられる泰夢の目に飛び込んできたものは……
それでは、どうぞ!!
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泰夢(たいむ)はそのままバスの動きに合わせて、深いむらさき色をしたビロードのシートに体をしずめると、外していたイヤホンをもう一度耳にはめる。
バスはせきこむようにうなりながら谷の坂道を登っていき、やがて深く落ちこんだがけのそばを通って、大きな橋へと差しかかって行った。
道路はもっと山のおくの方にもまだ続いていたが、バスはそこで右方向に曲がって橋をわたり、今度はまた同じように川にそって坂を下り始める。
どうやら川をはさんで右と左に道路があり、いままでは川の左側を走って山の坂道をのぼっていたけれど、この橋がちょうどバスのルートの折り返し地点のようで、今度は川の右側にある道路へ入っていって、そのまま町の方へと下っていくらしい。
バスの前の大きなまどから道路の進む先を見ていると、その橋からしばらく行ったところに、泰夢が乗ったところと同じようなトタン板で囲った古い感じのバス停があるのが見えた。
その前に、泰夢と同じぐらいの年の女の子が立っている。
(なんで、こんなところでバスに乗るんだろう?)
自分のことをたなにおいて、ふとそんな事を考える。
夏休みなのだから、ふつうなら朝はゆっくりするだろうに、なにか用事でもあるのだろうかなどと考えながらぼんやりながめていると、ふいにその女の子と目が合った。
泰夢は見るともなしに女の子を見ていたのだけれども、その女の子は明らかに自分のことを見ているような気がした。
そんな目の合いかただった。
(━━やっべ!)
別に何もないのだろうけれども、その子を勝手に見ていたことが何か相手に悪いような気がして泰夢はあわてて顔をそらした。
もう一度かくにんのために目だけでそちらを見ると、女の子はやはり明らかにこっちを見ていて、しかもこともあろうか笑ったのだ。
これを見た泰夢は、急に落ち着かない気持ちになり、あわてて横にあったデイパックを開いて、中を引っかきまわしてモノをさがすフリをする。
泰夢は女子が苦手だった。
学校でもクラスで同じグループになった女子や、他の男子といるときだったら少しは話をするにはするけれども、それ以外はあまりしゃべらないし、近くに来ればそれとなくにげるようにしている。
小学校に入る前や小学校も低学年の、一年生やニ年生の時はいっしょに遊ぶ女の子の友だちももいたし、そんなでもなかったのだが、学年が上がるにつれそれは変わっていった。
最近、女子と遊ぶのはダメなヤツだ、言う連中がでてきていて、男らしい、カッコいいと、男子の中ではそれにしめしを合わせるような動きが出てきているという事が、あるにはある。
だがしかし、泰夢が女子を苦手と思う理由は、それとは全く別物だった。
女子はとにかくうるさい━━泰夢はいつもそう思っていた。
小さなころはそれでも、相手も自分もよく物が分からなかったのであまり気にしなかったから良かったけれども、他人のことや自分のこと、まわり全体のことなどを考えるようになったとたんに、泰夢にとって女子は、実に話づらいやっかいな相手となった。
すぐにこっちの文句を言ってきたり、あれやこれやと指図してきたりするし、それがいやになって言い返せばその五倍、いや十倍にもなって返ってくるので、本当にくたびれてしまうし、いっしょに何かをしようとすればそこに泰夢の自由はなかった。
またその言い方やふんいきが、どうにも小言をいう時の母親の感じがあって、どうしてオレは学校でも家でも怒られなくちゃならないんだと思い、どうにも気がめいってしまうのだ。
(……だいじょうぶか?)
もしかしたらあの少女がまっすぐこっちに来て、泰夢に対して文句のひとつでも言うのではないかと━━もちろんちょっと目があったぐらいの話で何も悪い事なぞしていないのだが、こと女子に関してはどこから文句を言ってくるかわからないと思っている泰夢にとっては━━じっと息をひそめてシートのせもたれに身をかくし、時間が過ぎるのを待った。
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おやおや、ここで謎の少女が登場しました。
では、次回もお楽しみに!
小林るい
