泰夢(たいむ)のお話:12
「河岸段丘」っていいですよね!
それでは、どうぞ!!
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バスが停留所にとまり、自動ドアの開く音が聞こえた。
人が乗ってくる気配をせなかに感じながら、泰夢(たいむ)はなるべく目立たないようにしながら、二人がけシートのとなりに置いたデイパックを開くと、それをのぞきこんで中を引っかきまわす。
こうしていれば、さっきバス停にいた女子が自分の方に来たとしても、顔を合わせずにすむと思ったのだ。
そのうちにバスが動き出すとやれやれとほっと息をつき、念のためにそのまま後ろを見ずそっと顔を上げた。
デイバックに頭をつっこみながら、耳だけはそばだててまわりの気配を気にしていたけれど、だれもこっちに来たような感じはしなかったので、どうやらあの女子は後ろの方のシートにすわったらしい。
周りにいるのが大人だったらまだいいが、同じぐらいの年の━━しかも女子がそばにいると思ったら、どうにも気が気ではない。
相手が前の方ではなくバスの後ろの方に行ってくれたのは、泰夢にとっては実にありがたかった。
バスのおり口は泰夢の前にある自動ドアになっていて、泰夢がおりるのは終点だった。
なので、あの女子がどこでおりるのかによっては、また同じような問題が持ち上がるが、その時はイヤホンをして聞こえないふりでもしながら、また同じようにデイパックをゴソゴソとやっておけばだいじょうぶだろう。
そうしてようやく自分を取りもどし、今度はしっかりと前を向いてすわり直した泰夢の目に、ぱっとかがやくような風景がひろがった。
(すっげー、よく見える!)
さっきの折り返しの橋のところまではバスの通り道はずっと上り坂で、景色が山ばかりだったのだけれども、山から下る道路に入ったことで開ける景色が増えていき、泰夢は食い入るようにしてバスの前の大きなまどの外の様子に見入った。
何個かの停留所を過ぎて行きバスが山を下るほどに、いままではせまかった川全体のはばが広くなっていた。
川の水はそのはばが広がった河原を左右にうねるように流れており、その河原の両はしは高いガケになっていて、そのガケの上はまた広く平らな地面になっていた。
そして、その上の平らな部分も同じような高いガケにつき当たっている。
こうしてバスが通る道路から下へ、景色全体を高いところから見下ろしていると、それがまるでとてつもなく大きな階だんのようになっていることがわかった。
こうしたものは河岸段丘(かがんだんきゅう)とよばれているもので、階だんのようになっているところの、そのだんになっているガケの部分を段丘崖(だんきゅうがけ)、平らな地面の部分を段丘面(だんきゅうめん)といい、その段丘面には畑や田んぼが広がっていて、家が建てられて人が多く住んでいる。
この大きな階だんは、実はその底に流れている川がつくり出したもので、人間が生まれた時間よりももっともっと長い時間をかけてできるらしい。
山が川にけずられてへこんでいき、へこんだ部分が地しんなどで持ち上がったり、川がけずった土でうまってもり上がっていったりし、その部分をまた川がけずっていく……という事が、長い年月をかけてくりかえされるうちにできあがるという、本当に大きくてまるできせきのようなおどろきの自然の景色だった。
泰夢が河岸段丘について勉強するのはまだまだ先の話だけれども、これも学校の授業のときに話好きなたん任のオバジイが、鼻をふくらめながら教えてくれたのだ。
(父さんは、毎日こんなトコで遊んでたんだ……)
バスが坂を下るにつれて、ゆっくり大きく広がっていくその風景を見ながら、泰夢はふとそう思った。
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大きな景色には人の心を揺さぶる力があります。
では、次回もお楽しみに!
小林るい
