泰夢(たいむ)のお話 その二:7
泰夢と華恋、二人で協力して後片付けです!
それでは、どうぞ!!
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自習室の大きなつくえから、華恋(かれん)がかたづけて積み上げてくれた本を両手でエイヤっとかかえる。
自由研究をするには絵や写真があった方がわかりやすいと思ったので、そういう図かんや本を選んだら大きな物が多くて、十さつをこえるその本の山というか柱というか、それを持ち上げた泰夢(たいむ)の体がグラッとゆれる。
「うごおぉ……お、重いぃ……
でも━━これは『パワーアップの修行』……
落としたりくずれたりしたらさ、失敗になっちゃうじゃん」
フラフラしながらゆっくり進む泰夢の横で、同じように数さつの本を━━それは、最初は全部の本を持っていくんだ! と聞かなかった泰夢が、さすがに自分の顔がかくれてしまう高さになった本の山を見て冷やあせをかき、自分に合った無理をするのが修行だから! とワケの分からない事を言いながら、そっと横においた本たちだった━━むねにかかえた華恋が歩く。
「……ねぇ、ホントにだいじょうぶ?
ちゃんと最後まで歩けるの?
もしとちゅうで落っことしちゃったって、わたし知らないからね?」
「平気だってさ、このぐらい……おぉっと!
オレさ、前の時にさ、体育館にある折りたたみイスをさ、
十個いっぺんに運んだことあるから」
「へえぇー、ウソばーっかり!
だって、子どもが一度に十個も運べるわけないもん!」
どうして男子は……いや、泰夢だからなのかも知れないけれども、こんなにわかりやすいウソを言うのだろうと思う。
「じゃあ、どうやって運んだの?
言ってみてよ?」
華恋のその言い方は、完全に信じていない時の感じのやつで、それを聞いた泰夢は、ユラユラとしながらもプクっと鼻のあなをふくらめた。
「華恋ちゃん……これって、ホントだってば!
せもたれのあなのトコにさ、うでを入れてさ、
で、右と左で五個ずつ持ったんだって!」
「えーっ、ぜったいウソだよ!
あのイスって重いし、とちゅうでガシャンって開くし、
ぜったいに持てるわけないもの!」
華恋の頭の中に、左に五個、右に五個のイスをうでに通して、キラッキラの笑顔で軽々と持ち上げる大人みたいな体格の泰夢がうかんだ。
けれどもその大人の体の泰夢はすぐにヘニャヘニャと空気のぬけた風船みたいにしぼんでいき、すっかりといつものすがたにもどってしまった泰夢が、今度はイスの下じきになって最後にはメソメソとやりだした。
「あー、華恋ちゃんってば、ぜんぜん信じてないじゃん!
これってチョー本当なんだってさ。
クラスの男子でくらべて、オレ、マジで一番だったんだって!」
華恋のその声を聞いて、泰夢が口をとがらせる。
今までいっしょに過ごしてきて、あんな風にして華恋が言っている時は、だいたいこっちをバカにしているか、からかっている時なのだ。
今はかかえている本の山が目の前にあるし、よろけないようにするのに精いっぱいで顔が見えないけれども、華恋はきっとちょっとだけ上を向いてあごをあげて、くちびるをすぼめて目を細くしているはずで、それを見るとムカっとする事もあるけれど、なんとなくその顔が泰夢は好きだった。
ヨロヨロとあぶなっかしく歩きながら、それでもなんとか本の山を返きゃく台の上に置く。
もちろんドサッとらんぼうにするのではなくて、そーっとやさしく置いたので、最後の方はうでがプルプルとふるえて本の山がくずれそうになった。
それでも、あのたくさんの本を泰夢は見事に運び終えたのだった。
無事に修行を最後までこなして小さくにぎりこぶしを作る泰夢に、華恋もかかえていた本を同じようにして返きゃく台へと返す。
「……それで、本当は何個だったの?」
「あー、折りたたみのイスのこと?
そんなの、ホントに十個に決まってるじゃん!
こうやってさ、うでのとこに通してさ……」
自習室の方へもどりながら、泰夢が両方のうでを横に広げ、身ぶり手ぶりで華恋に説明をする。
「━━えーっ、そんなのインチキだよ!
だって、ふつう『持つ』って言うのは、
さっきの本みたいに、ちゃんと持ち上げることでしょ?」
「…………」
「いま言ってた泰夢くんのイスのヤツって、
それ、両方のうでに引っかけて、
ズルズルーって引きずって行っただけじゃない!」
「えー、それはそうだけど……
でもさー、一回で十個も運んだんだよ?」
華恋に言われ、しどろもどろになる。
「ブブーっ! ダメでーす!
そんな運び方はみとめられませーん!
泰夢くん……それ、きっと先生におこられたでしょ?」
「えぇーっ! なんで? 華恋ちゃんどうして分かったの?
運んでる時にさ、『ゆかをキズつけるな!』ってさ、
スッゲーおこられたんだよ……オレ、めっちゃがんばったのに」
その時のことを思い出してガックリとかたを落とす泰夢に、一個ずつでもいいからちゃんと持たなくっちゃダメなんだからね、と華恋が笑いながらやさしく声をかける。
そうしてそれぞれの荷物を持って自習室を後にすると、本が置いてある場所をはさんで反対側の、自習室と同じように大きなガラスまどがあるスペースへと、二人ならんで歩いていく。
せの高い観葉植物の植木で仕切られている所に案内板があって、そこには『談話室』と太くて大きな文字で書かれていた。
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二人がやって来たのは談話室……オバジイの気配がします。
では、次回もお楽しみに!
小林るい
